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去る1月20日、『サマリア』主演女優のクァク・チミンとハン・ヨルム(ソ・ミンジョン改め)の二人が初来日した。 セルリアンタワーで行われた記者会見の模様をお伝えする。

 この日の二人のいでたちは、作品の役柄に合わせたものか好対照をなすものだった。19歳のクァク・ チミンは、黒のノースリーブにパール系の落ち着いたスカートを合わせ、全体的にシックな装い。対するハン・ヨルムは、 ファンシーなデザインのノースリーブに水色ラインの入ったオレンジのスカートと21歳にしてはかなりキュートな装いで登場。 二人は揃って登場後、日本語で挨拶してみせるなどご機嫌の様子だった。

 衣装と同様発言内容もしっかりとして、年齢以上に随分と落ち着いてるように見えたクァク・ チミンだったが、会見開始後暫くしてテーブルに置かれていた水を口に含むや、終始グラスに手を伸ばし続けるなど緊張は隠しきれない様子。 一方のハン・ヨルムは、作中からそのまま抜け出してきたかのように、終始微笑みを絶やさず、全身から柔らかな雰囲気を醸し出していた。 どこか一杯一杯な感じを抱かせるクァク・チミンに比して、言葉や態度に余裕を窺わせるものが少なくなかったのは年長者ゆえだろうか。 二人とも質問に対してハキハキと率直に受け答えしている姿が実に印象的だったが、キム・ ギドク監督独特の演出方法についても触れるなど興味の尽きない会見となった。

 ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した本作は、恵比寿ガーデンシネマにて今春公開される予定。

(取材:仙道勇人)

 



―クァク・チミンさんは、来日なさってからしばらく経っていますが、 日本の印象はどうですか?

クァク・チミン: 日本の皆さんに親切にしていただき、こちらが戸惑うほどやさしくして下さって感謝しています。 ここまで歓迎されると思っていなかったのでとても嬉しいです。記者の方々も映画を見て、待っていて下さってありがとうございます。

―ハン・ヨルムさん、かなりたくさんの記者の方が一斉に写真を撮っていましたが、 今のこの会見の状況について感想をお願いします。

ハン・ヨルム:今、とても緊張しています。 『サマリア』にこれほど多くの関心を寄せていただいてとても嬉しく、また感謝しています。

―鬼才と呼ばれるキム・ギドク監督からは、 それぞれ役について撮影中にどのようなアドバイスがありましたか?

クァク・チミン:私は、演技をするのも、映画に出演するのも、 主人公を演じるのも全く初めての体験でとても緊張していました。また、キャラクターの分析をする時間がありませんでした。 出演が決まってからすぐの撮影だったので、いろいろと準備をする時間的余裕が無かったのです。 なので分からないところは監督に何度も質問しました。監督の答えは、全て君に任せるから、現役の高校生だから良く分かるでしょ、 ということでした。また、監督からは私生活のことについて聞かれ、 そのことを話しているうちに段々自分でも疑問点の答えが分かってくるようになりました。 そのように私に答えを分からせてくれた監督にはとても感謝していますし、俳優から見てもとても立派な監督さんだと思います。

ハン・ヨルム:私も『サマリア』 に出演して、初めて演技をしました。とても緊張していたので、監督にはたくさん御迷惑を掛けてしまったと思います。 しかし監督は普段の私が良く笑う姿を見て、私がチェヨン役にあっていると思い起用して下さったようです。 なので監督の方からアドバイスをすることはあまり無かったのですが、居心地の良い現場になるよう努力をして下さり、 演技については自分のスタイルでやりなさいと言ってくれました。

―映画の中では、とても仲良しの二人でしたがお互いの印象を教えて下さい。

ハン・ヨルム:初めてクァク・ チミンさんに会った時の第一印象は、とても冷たい感じで、近寄りがたかったです。でも、キム・ギドク監督の映画は撮影時間がとても短いので、 とにかく早く仲良くならなければならないと思い、できるだけ親しくなれるよう努力しました。また、 チミンさんはどんなときにも緊張せず落ち着いている女の子だと思います。私は、緊張してしまうと突拍子も無いことを口にしてしまいます。 今もとても緊張していますが、緊張すると頭で考えていることと口から出る言葉
がずれてしまい全く違うことを話したりしてしまいますが、チミンさんはどんな状況に置かれても冷静沈着な方です。 そういった点は見習いたいと思います。

クァク・チミン:私はハン・ ヨルムさんより先にキャスティングをしていただき、脚本も読んでいたのですが、 私が読んだシナリオの中のチェヨンという女の子は映画とはちょっと違い、背が高くて、大人っぽく、言葉遣いも大人びている、 一言でいえばセクシーな女の子というイメージを抱いていました。なので実際にハン・ヨルムさんを見た時は、少し意外でした。とても可愛くて、 良く笑う女の子だったからです。でも撮影が始まってからは、最初にシナリオを読んで抱いていたイメージのチェヨンよりも、ハン・ ヨルムさんが演じる方があっているのではないかと思います。映画の中のチェヨンと同じように普段は良く笑って明るい女性です。 今でもとても仲良く、親しくしています。

―撮影期間は短かったということですが、一番思い出に残っていることを教えて下さい。

クァク・チミン:私は『サマリア』 の撮影中に大学受験があり、撮影の合間を縫って勉強をしようと問題集を持ち歩いていたんです。ところが、 現場に行ったら寝る間もご飯を食べる暇もないくらいきついスケジュールで、問題集にさわることさえできませんでした。 なので少し試験に影響したのではないかと思いますが、短期間で撮ったからこそこの演技ができたと思います。 同じシーンを何度も繰り返して練習したり、撮り直しをしたりすると、どうしても感情のラインが崩れてしまうのです。 監督も私達の感情表現をうまくキャッチして映画の中に取り入れてくれたと思います。

―ちなみに受験は無事終了したのでしょうか?

クァク・チミン:本当でしたら、 去年大学生になっていたはずだったんですが、先ほど話したようになかなか受験勉強をする時間が無かったので受験には失敗してしまいました。 映画を撮った後の数ヶ月間は役柄を引きずってしまい少し憂鬱な期間が続いたんです。 役どころが憂鬱だったこともあってしばらく笑うことも外出もできず、人が変わったようになってしまいました。しかし、その後一年間、 演技の勉強もして、一生懸命勉強もして今年は大学に受かったので、3月から大学生になります。

―おめでとうございます。受かってよかったですね。

クァク・チミン:ありがとうございます。

―ハン・ヨルムさんの『サマリア』での一番の思い出は何ですか?

ハン・ヨルム:私は、『サマリア』の思い出というよりエピソードになります。 今回の撮影は11日間でしたが、その中で私の出番があったのは5日間でした。 その5日間の最初の3日間は訳も分からず撮っていたので、あっという間に終わってしまいました。 残りの2日間で演技とはどういうものか知ろうと思ったのですがその2日間もあっという間に過ぎてしまいました。そして、 この映画に出演して何より嬉しかったのは、監督がベルリン映画祭で監督賞を賞をとることです。 あまりに嬉しくて気絶しそうになりました。

―映画のようなことは実生活では経験されていないと思いますが、 役どころの感情の動きや行動をどのように受け止めて、どう理解したのでしょうか?

クァク・チミン:実は日本に来て、 二人の女子高生の間に恋愛感情があったのではないかという意見を聞いてとても驚きました。 スタッフをはじめ監督ももちろんヨジンとチェヨンの間に恋愛感情があるとは全く思ってなく、 同性愛という見方は撮影中も想像もしていませんでした。ヨジンは母親がいなく、父親と二人だけの家庭に育ちましたので、 父親の次に大事なのが友達のチェヨンであって、チェヨンはヨジンにとって人生の一部とも言えるわけです。ですから、 親友に対する思いがとても深く映画に表れていたと思います。監督とのやり取りの中で、 私生活の部分を色々聞かれたと先ほど話しましたが主に聞かれたのは、何歳の時にどういうことがあったのか、今までの悲しい思い出、 楽しい思い出などを聞かれ、少しずつ思い出すうちに段々と自然にヨジンの気持が分かるようになりました。 ヨジンはこのときこう思っていたのかなと私が答えを見つけると、監督はそれをキャッチして撮影を始めようかと言ってくれたので、 私の気持を読むという点で監督さんはすごい方だと思いました。

ハン・ヨルム:隣にいるチミンさんは、 映画の中のヨジンととても似ています。チミンさんも少し保守的なところがあるのです。 先ほどのインタビューでお互いの考えがはっきり分かったのですが、チミンさんは援助交際は何があっても絶対にダメという考えで、 私の方はチェヨンと似ていて悪いことだとは思うけれど、援助交際をしてしまうことも在りうるという考えです。また私は、 なぜ援助交際をするに至ったのかという過程に目を向けます。援助交際はお金を出して性を売り買いするものですが、 売る側の女性が何故お金が必要なのか考えてしまうのです。只単にお小遣いが必要なだけではなく、例えば家が貧しいとか、 両親のどちらかが入院したのでその入院費を払わなければいけないとか、自分の叶えたい夢があるけれどもお金が無く、 また若くして稼げるとなると方法は援助交際しかないし、そういう意味では援助交際はありかもしれないという考えなのです。 もちろん悪いとは分かっていますが、頭ごなしにダメだと言えないとも思います。

クァク・チミン: でも映画の中のチェヨンは、旅行に行きたくて援助交際をしてましたよね。

―日本の、俳優で好きな人はいますか?

クァク・チミン:マツシマナナコ、 サン(日本語で)。私が好きな方は、松嶋奈々子さんです。韓国で人気があるのは木村拓哉さんです。 木村拓哉さんが出たドラマはたくさん紹介されていて、ウォン・ビンさんとも似ているということもあって、 木村拓哉さんが出演したCMも流れているので、韓国ではすごく人気があります。

ハン・ヨルム:私は最近『花とアリス』 という映画を見たのですが、最後に出てくるバレエのシーンがとても印象的で、アリス役だった蒼井優さんがとても大好きになりました。

―今回大役に大抜擢されましたが、 主役を演じて女優としての手ごたえや成長は自身感じたでしょうか?

クァク・チミン: この映画に出演したことで私はとても成長したと思います。今回は端役や小さな役を経ずに、 いきなり初めての映画出演で主人公を引き受けるということで、 すべての映画の流れが自分に掛かっているということでとてもプレッシャーを感じていました。キム・ ギドク監督の映画は出演するとすごく苦労するよと言われていたので、乗り切れたという手ごたえも感じています。 考え方の面でもだいぶ変化がありました。以前はどうしても親に頼っていたのですが、 この映画の出演で自分に責任を持って自分なりの考えで色々なことを決められるようになりました。女優としては、 映画の中で可愛く映るきれいな役ばかりを夢見ていたのですが、この映画のおかげで女優として演技力で認めて欲しいという欲も出ましたし、 これからも良い役をどんどん演じたいと思うようになりました。

ハン・ヨルム:私も『サマリア』 に出演することで、内面がだいぶ成長したと思います。考え方もとても自由になったと思います。以前は人の目を気にしていたのですが、 今は特に人にどう思われてもあまり気にしないようになりましたし、自分自身に自信が持てるようになりました。 以前はそれほど目標を持っていなかったのですが、この映画をきっかけに、本当に良い女優になりたいと思いますし、 独特な魅力のある女優になりたいとう欲を持てるようになりました。

―韓国の俳優さんで尊敬している方とか共演してみたい方はいますか?

クァク・チミン: 日本でも公開されると思いますが『大統領の理髪師』に出演しているムン・ソリさんを目標にしています。 彼女はとても演技力があると韓国で認められています。普通、俳優というのは、 自分の決まったイメージにこだわってしまい似たような役をやるのがほとんどですが、 彼女は自分の殻を常に破ってヴァラエティに富んだ役柄もこなせる女優さんだと思います。 私もそのようにいろいろな役を演じられる女優になりたいと思います。共演してみたい俳優さんは、ヤン・ ドングンさんや私より年はかなり上ですがソン・ガンホさんとも共演してみたいと思います。ソン・ ガンホさんならば父親と娘という設定もいいかなと思います。

ハン・ヨルム: 私は特に目標としている女優さんはいないのですが、あげるとするとチョン・ドヨンさんが好きです。 私からすると先輩ですが、彼女はとても個性的でいろいろな魅力を見せてくれる女優さんだと思います。好きな俳優、 女優さんはあまりにも多すぎるので、 そういった俳優さんたちから少しずつ魅力を自分の中に取り入れて私なりの独特な魅力のある女優になりたいと思います。共演者に関しても、 特定の人とではなく、とにかく好きな俳優さんがたくさんいるので、機会があればそれぞれ共演してみたいと思います。

―ハン・ヨルムさんにお聞きします。 ホテルから飛び降りたシーンの後でも笑みを浮かべていますが、それは監督の指示だったのか、ご自分の判断だったのですか?

ハン・ヨルム:実は私が、 この映画に関して一番多く受けた質問が、「どうしてあなたはいつも映画の中でそんなに笑っていたの?」という質問でした。私も演じながら、 もうそろそろ笑うのをやめようかなと思うことがありました。でも、監督からはチェヨンは常に笑っていた方が良いという指示がありました。 それもあったんですけれども、自分もやはり彼女は笑っているべきだと思ったのです。なぜかというと、 彼女は幸せだから笑っていたのではなかったと思うからです。 (彼女の笑いは)この時代を生きる大人たちへの警告としての笑いだと思っています。

―クァク・チミンは、父親役のイ・オルさんと共演しての感想をお聞かせ下さい。

クァク・チミン:イ・ オルさんと最初に共演するとき、彼は私よりかなり年も上ですし、経歴もたくさんあるベテランの俳優さんで、 私からすると先生にあたる方ですので、とても戸惑って緊張していました。でも、実際に演技をしてみると実の父と思える程温かい方でした。 それによって私の緊張もほぐれ、実の父親の雰囲気とも似ていたので、益々親近感を感じました。イ・ オルさんは映画の中と同じく本当にやさしい方で、やさしさに加えてタフな面も持っておりとても素敵な俳優さんだと思います。 今でも時々会うのですが、いまだにパパと呼んでいます。


サマリア 2004 韓国
2005年3月26日、 恵比寿ガーデンシネマにて公開

監督:キム・ギドク
脚本:キム・ギドク
製作:キム・ギドク
撮影:ソン・サンジェ
照明:イ・ソンファン
編集:キム・ギドク
音楽:パク・チウン
製作:金基徳フィルム

出演:クァク・チミン
ソ・ミンジョン
イ・オル
クォン・ヒョンミン
オ・ヨン
イム・ギュノ
チョン・ユンソ
イ・ジョンギル
シン・テッキ
パク・チョンギ
キム・グィソン
ソ・スンウォン

公式HP
2005/04/30/05:46 | トラックバック (0)
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