足立 フミ

　この映画で重要なポイントにもなっている刺繍。
　私の唯一と呼べる女友達にもこの刺繍が得意だと豪語する人がいます。
　そこそこオシャレにも気を使う彼女はシンプルなものにワンポイントの刺繍を入れるのが大好き！ 　何かと言うと刺繍を入れたがるえらく迷惑な人です。
　そんな刺繍に対しての猛烈アピールの割には私が頂いた彼女からの刺繍作品は、今時これは？と思われる微妙な色使いのフェルトに、プロレスファンの私の為に、 彼女曰くタイガーマスクを刺繍したもの。
　しかもそのタイガーは単なる黄色い何かにしか見えず、 フェルトの周りには彼女の90歳過ぎた半分痴呆のおばあちゃんがリハビリがてら施した実に頼りない波縫いが…。
　ちなみにその変な刺繍入りのフェルトの切れっぱしはコースターとして使うんだそうです。当たり前の話ですが、 もうどこかへなくしてしまいました。
　刺繍とたった一人の女友達って事で映画との共通点満載のはずなのに、私と彼女の間にイチゴと桃子のような固い友情が芽生えないのは、 私のせいじゃなくて、彼女の刺繍が圧倒的に下手だからだと思いました。