今週の一本
(2004年 / フランス / オリヴィエ・ダアン)
『サイコ』でも『スリラー』でも『ミステリー』ですらもない

仙道 勇人

 外界から隔絶された共同体で密かに行われていたおぞましい計画を、二人の刑事が暴いていった前作「クリムゾン・リバー」('01)は、 シナリオの方々に詰めの甘さを残してはいたけれども、そのサイコスリラー的な雰囲気を濃厚に漂わせた作風からは、フランス式カウンター・ ハリウッドの気概を強く感じさせる作品でもあった。

 そんな前作の続編として華々しく登場した本作は、"あるモノ"の接写から始まる冒頭シーン、 それぞれ別の事件を追っていたニーマンス(ジャン・レノ)とレダ(ブノワ・マジメル)が途中から合流する展開など、 前作のイメージを壊さないように周到にスタイルの踏襲が図られている。知っていればニヤリとさせられる前作からの引用や言及といった、 前作のファンに対するサービスもチラホラと見られる上、アクションシーンも細かいカット割りでスピード感と迫力が格段に向上しているので、 一応見飽きることのない作品にはなっている。

 しかし「壁に埋め込まれた死体」という古典的なミステリーから始まり、 黙示録をモティーフに進行していくストーリーに全くと言っていいほど入り込めないのはなぜだろうか。 一つにはストーリーの進行と共に明らかになっていく「キリストの再来」「殺されゆく十二使徒」「第七の封印」といったビッグワードが、 完全に上滑りしているからに他ならないだろう。補足的に加えられるキリスト教関連の説明も必要十分な範囲に抑えられているせいか、 直線的にテキパキと処理されていくので謎そのものに深まりが感じられないのである。 採取した血液から遺伝子情報検索によって3秒で被害者の身元を割り出してみせる、というトンデモ科学捜査を導入してしまうほど、 スピーディーな展開を重視した結果なのはわからなくもないが、折角キリスト教の専門家(=カミーユ・ナッタ)を登場させているからには、 もっと衒学的な無駄話を重ねて煙幕を張るくらいの芸当を見せても良かったのではないだろうか。はっきり言ってしまえば、 この程度のオカルトの扱い方しかできないのであれば、シュワルツェネッガーの「エンド・オブ・デイズ」('99)の方が遥かに潔いだろう。

 また、謎が方々にちりばめられているのに比して、「恐怖」が圧倒的に少ないのはどういったわけか。超人的な力を発揮する 「黙示録の天使たち」も、恐怖の対象と言うよりは謎の対象であるし、「第七の封印」が解かれると世界がどうなるのかという恐怖も、「黙示録」 からの引用で等閑に済ますなど、今一つ実感がわかないせいか物足りなさが残る。結局「730730」 という暗号から導かれる切迫した状況認識や具体的な危機感を、ジャン・レノらと共有することが全く出来ないので、 ラストのカタストロフィには感慨を抱くに至らないし、事件の引き金となった連続殺人の延長線上にあるとされていた"陰謀"とやらの正体も、 黒幕の行動原理も説得力がないので、カタルシスも得られないまま終劇を迎えてしまうのである。

 ミステリー、スリラーといったジャンルに取りたててこだわりのない者であれば、 どぎつい描写もないのでそこそこ楽しめる作品かもしれないが、リュック・ ベッソンの手によってミステリーの質が前作とは較べものにならないほど落ちてしまったのは間違いない。

(2004.5.23)

2005/04/30/18:58 | BBS | トラックバック (0)
仙道勇人 ,今週の一本
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