今週の一本
(2004 / アメリカ / スティーヴン・ソマーズ)
A級娯楽大作になり損ねた愉快なB級映画

仙道 勇人

 昨今ではすっかり流行らなくなってしまったが、モンスター・ムービーは最高に面白いジャンルの一つである。 その殆どがホラーというアプローチを取られることが多い為に、勢い見落とされがちだが、 人間から忌み嫌われる存在<モンスター>は、本質的に極めて人間的な存在である。なぜなら、 彼らが<モンスター>と呼ばれる所以は、殆どの場合人間性の一部分が極端に肥大化をしている点にあるからだ。 我々が彼らを恐ろしいと感じるのは、特異な外貌ゆえではなく、その魂から流露するデフォルメされた人間性ゆえなのである。 良くできたモンスター・ムービーは、単純なホラーとしてだけではなく、そうした異化作用を伴った「人間ドラマ」 としても成立しているものなのである。

 翻って本作、ドラキュラ、狼男、フランケンシュタインという超メジャー・モンスター3人(?)が揃い踏みするという、 まさに夢の競演を実現した本作が、そうしたモンスター・ムービーの系譜に連なるのではないか、 などという期待を持つ人は万に一人もいないと思う。そして、それは全く正しい。更に言えば、 物語としての味わいやドラマとして面白味も殆ど期待してはいけない。何と言っても本作は、 予告編や公開前情報からは想像もできないくらい壮大なB級映画であり、見どころと同じかそれ以上に突っ込みどころが満載の映画だからである。 気になる部分を笑いながら許せるか否か、ここが本作の評価の分水嶺となると思う。

 筆者はどうかと言えば、実はかなり楽しめた口である。本作がアクションシーンを如何に見せるかという点に力点を置かれた作品である、 ということに気がつけばこれほど愉快な作品はないのではなかろうか。冒頭で繰り広げられるやけにマッチョなハイド氏( 「ジキル博士とハイド氏」)との前哨戦、バチカンの地下施設でインチキ化学兵器が日夜研究・開発されているという世界観の紹介など、 ソマーズは本編に入る前段階で、観客にきちんとメッセージを出している。「なんでもありの話だから考えるな、感じてくれ!」と。

 基本物語は「ドラキュラと代々戦い続けてきた一族がピンチなので助太刀せよ」というだけの話で、実に単純である。 これに狼男とのバトルやら女バンパイヤとのバトルを屋上屋を重ねるようにして、アクションシーンを繋げているだけだ。一部、 反則なアイディアもあったような気がするが、そこはそれ。畳み掛けるような演出で有無を言わせない。流石に「5分に1回のクライマックス」 という煽りは伊達じゃなく、場面の展開が早いので、一つの場面に止まっている暇がないのだ。 物理法則を無視した超絶アクションを随所に散りばめることで、漫画チックな展開を何の臆面もなく繰り広げてしまう潔さも個人的に気に入った。

 ただ、本作が惜しいと思うのは、アンチヒーローものであるにも関わらず、ヒーローのキャラが全く立っていないことだろう。主人公ヴァン・ ヘルシングは記憶を失くしており、なぜ自分がモンスター・ハンターとしてバチカンにこき使われているのかもよく分かっていないという設定で、 確かに主人公の過去の謎と物語が微妙にリンクしているなど、過去の謎で物語の持続感を維持しようという狙いは理解できる。 ラストバトルにその伏線を結びつけるのも、展開として王道を行くものだろう。だが、本作で問題なのは、ヴァン・ ヘルシングの過去がどうこうということではなく、彼自身が自分の存在にまるで苦悩しているようには見えないことなのだ。

 アンチヒーローがアンチヒーローたる所以は、ヒーローらしからぬ苦悩を抱えながら戦い続けている、という点に尽きる。その点、ヴァン・ ヘルシングの記憶がないという設定は、アンチヒーローの条件としては焦点がぼけていると言わざるを得ない。寧ろ「人殺しのヴァン・ ヘルシング」という通り名を与えられた者の葛藤をもっと丁寧に描くべきだっただろう。勿論、それが全く描かれていないわけではなく、 随所で軽く触れられてはいるが、まだまだヌルい。ヒロイックな行動を取りながらも、 周囲の人間から忌み嫌われざるをえない人間の孤独と宿命が描かれた時、本作は名実共に「娯楽超大作」と呼ばれうる作品になるに違いない。 「X-MEN」や「スパイダーマン」が、続編によって作品的に大飛躍したように、本作も続編によって飛躍することを秘かに期待したい。

(2004.9.6)

2005/04/30/19:24 | BBS | トラックバック (1)
仙道勇人 ,今週の一本
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ヴァン・ヘルシング(2004年)スティーヴン・ソマーズ監督 A 叡智の禁書図書館

劇場公開時にも見たんですが、昨日、最低最悪レベルのホラー映画見てしまい、気持ちが悪くなったので口直しにこちらをDVDを見ました。 最初見たときも結構面白かった...

Tracked on 2005/05/01(日)02:49:57

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