(1963 / アメリカ / ジョン・スタージェス)
みんな『大脱走』が好きだった!

百恵 紳之助

 今さらレビューなどまったく必要のないこの映画でありますが、 たまたま新宿の映画館でやっており観てしまいました。もう何度目になるでしょう。劇場では三度目でありますが、 二十歳くらいのバカ面した兄ちゃん二人がしきりに「面白しれぇ!面白しれぇ!」と言っていたのがすごく嬉しかったですね。 別に自分が連れて来たわけでもないですが。

 この映画はもうテレビ、ビデオでおそらく100回は越えるんじゃないかってくらい見ているのですが、自分が小学生の頃は水野晴朗解説の 「水曜ロード―ショー」でよく放映してました。そんなわけないんでしょうが、月一くらい放映していたような気がしてなりません。
 「あれ、また『大脱走』かいや!」と小学生の自分はきっとこの映画は大人気だから何度もやるんだと信じてました。毎回水野氏が「さぁ~、 今夜は脱走映画の決定版・・・」などと言うのですが、それだけで水野晴朗が自分の中では一番偉い映画評論家でしたね。ちなみに二位は 「月曜ロードショー」の荻昌弘(『スクワーム』を放映したから)、三位が「日曜洋画劇場」の淀長 (何となく土曜の人よりホントっぽいと思っていたから)、で四位が「ゴールデン洋画劇場」の高嶋氏でした。 (当時はまさか俳優とは知らなかったしね!)

 でまあ『大脱走』でありますが、一番好きなシーンはトンネル掘って脱走するところを横から撮っているところでありまして(当り前だな)、 この映画の影響で小学生だった自分は一体いくつのトンネルを掘ったのか分かりません。だから一番好きなキャラはトンネル王のチャールズ・ ブロンソンです。
 ラストにマックィーンが独房で壁にボールをぶつけているシーンも好きですが、 後に彼のニックネームが独房王と知ったときには笑い転げました。
 何度見ても笑っちゃう場面がトンテンカントンテンカンとトンネルを掘る音に合わせて、その音をごまかすためにみんなで歌を歌うシーンです。 で、歌い疲れた奴がご機嫌にベッドに戻って来ると、ベッドの板がトンネルの支柱用に抜かれていて、 転げ落ちるのですがなぜか子供の頃は涙が出るほど笑いました。
 あと、独立記念日に合わせてマックィーンやジェームズ・ガーナーらが酒を造っていて、それを一人ずつ飲んで「ワオ!」 と言い合う場面が何度か繰り返されます。いつも最後に飲む奴が咳き込んで「ワ、ワオ!」と言うのですが、 この場面は昔芝居をやっていたときに丸パクリしました。

 脱走、友情、腐ったタマゴは一つにチーム、とにかくこの映画は「男の子」のエッセンスがすべて散りばめらています。 女優が全然出ていないのに、なぜか男臭い映画でなく、どこからかまだミルクの匂いすら漂ってくるんじゃねーかと思えるような、 ちょっとトボケた男たちの「男の子映画」だと思います。

 修学旅行の夜を思い返して見てください。意味もなく先生たちの目を盗んで脱走しようとする。不意に先生が入って来て、 立ったまま寝たふりする。で、怒られてもまた脱走しようとする。何でもかんでも面白くてたまらない気持ちになってしまう。 普段なら面白くも可笑しくもないことで腹がよじれそうに笑える。特に仲の良かった奴でもないのに、そいつの見えなかったキャラを発見する。 そして期間限定の友情が芽生えてしまう。 そんな修学旅行の夜のような言葉にできないワクワクした気分を再現したと言ってもいい映画ではないでしょうか。まあ、 何にせよ脱走というただでさえワクワクする行為をそれも集団でやるのですから、これはもう男の子には堪らないものです。 自分が小学生だった頃は、みんな『大脱走』が大好きでした。「かつて『大脱走』が大好きだった少年たちへ・・・」 なんて気分の映画が出来ないでしょうか?あくまで気分のです。久住ブラザースの「中学生日記」 を映画にしたらそんな気分の男の子映画ができるような気がします。全然脱走とは関係のないマンガですが。
 以上、「大脱走」が大好きな自分が好きな百恵でした。

(2004.12.5)

2005/04/30/19:49 | トラックバック (3)
百恵紳之助
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