おまけ付き新婚生活

(2003 / アメリカ / ダニー・デヴィート)

ダニー・デヴィート版いじわるばあさん

おまけ付き新婚生活メイン　次作小説の完成が待たれる新進気鋭の作家アレックス(ベン・スティラー)と雑誌編集者ナンシー(ドリュー・バリモア)の新婚カップルが探し出した理想的な新居。１６７平米で暖炉が三つ、重厚な内装で雰囲気も最高だ。執筆にもうってつけで、子作りにも励めるに違いない……と、この物件に激しく心惹かれる二人。ただ、唯一ネックに感じたのは、この物件が「二世帯住宅」であり、二階に年老いたコネリー婦人が住みついていること。なんでも大昔に政府から得た権利を保持しているために追い出すことは出来ないという。様子を伺いに二階に上った二人がそこで見たのは病弱な老婆の姿。「これなら先は長くあるまい」と踏んだ二人はこの物件の購入を決意、念願のスウィートホームを手に入れるが、コネリー婦人の傍若無人な振る舞いの数々に悩まされることに――。

　といった具合に、無邪気な言動を繰り返すコネリー婦人と若夫婦の攻防をコミカルに描いた本作、要するに西洋版「意地悪ばあさん」なのである。とはいえ、そこはダニー・デヴィート監督作。日本の「意地悪ばあさん」同様にスラップスティックを基調にしているが、ひたすらブラックな方へブラックな方へと転がしていく。特に豆腐にかすがい、糠に釘、暖簾に腕押し状態のコネリー婦人に困り果てた二人が、彼女を亡き者にせんと画策し始めるという展開はその極地と言っていいだろう。

おまけ付き新婚生活サブ　そうした「黒さ」が前面に押し出された本作ながら、後味は決して悪いものではない。否、意外なほど明るく、爽やかさすら感じさせる幕切れに仕上がっている。これはひとえに脚本のラリー・ドイル(本作で映画脚本デビュー)による部分が大きい。「ザ・シンプソンズ」の脚本で鳴らした人だけに、人物造形からストーリー展開、幕切れに至るまで、全般的にどうしようもなくマンガチックなきらいがあるのは否定しようがないが、寧ろこの作品の場合は、それが奏功している面がある。最後の最後で作品から毒を抜くことに繋がっていることは勿論、このマンガ的な風味によって、ブラックコメディでありながらも割と誰にでも楽しめる取っつきやすさを獲得せしめているからである。

　主演のベン・スティラーとドリュー・バリモアの息の合ったコンビネーションは観ていて安心感があり、彼らのファンなら申し分なく楽しめる作品と言えるだろう。本作の評価を分けるのは、やはりコネリー婦人役のアイリーン・エッセルの受け止め方次第ではないかと思われる。どこか憎めない愛らしさすら感じさせるキャラクターを好演しているが、ブラックコメディのキャラクターとしては、こぢんまりとまとまり過ぎていて「毒が薄い」と感じる向きもあるかもしれない。殺伐感の突き抜けた本格ブラックコメディというよりは、マイルドなブラック感を手軽に楽しみたい、そんな作品だ。