チャーリーとチョコレート工場

（2005 / アメリカ / ティム・バートン）

毒と笑いが炸裂する、魅惑のバートンワールドへようこそ

予想通りの大人気で、切符売り場は長蛇の列である。筆者も蛇の一部となっていそいそと入場したところ、見渡す限り婦女子のみのシート… の中、カップルの片割れが居心地悪そうに小さくなっているのをポツリポツリ発見。（よく知らないが）ヨン様の映画みてえ。が、こちらは年齢層がぐっと下がる。館内は満杯にもかかわらず、野郎がいないせいか不思議なほど圧迫感はない。そして空気が何気なしに華やいでいる。いいなあ。女子校ってこんなんか？

世界中の子どもに愛されている「ウォンカ」チョコレート。その製造工程は謎に包まれていたが、ある日のこと、限定５人の子どもたちを工場に招待するという企画が発表される。かくして世界中が大騒ぎ。幸運の招待状である「ゴールデン・チケット」を引き当てた子どもの中には、ウォンカ社のご近所さんで、貧しいながら愛情に充ちた生活を享受しているチャーリーもいた。彼らが胸を弾ませてくぐった工場の門。しかし、オーナーのウィリー・ウォンカ（ジョニー・デップ）の奇人ぶりを始め、チョコレート工場の中は想像を遥かに超えたファンタジックでミラクルな世界だった――。

まさにティム・バートンらしく、毒の効いたお伽噺である。キッチュで豪華なセットやジョニー・デップの怪演、いかにも引きの弱い人生を送りそうな薄幸顔のチャーリー少年や本物のリスの名演技など、婦女子の琴線に触れる要素には事欠かないが、ＭＶＰはブッ千切りで「ウンパ・ルンパ」なる小人だろう。原作（有名なロングセラーらしいが筆者は未見）では工場で働く小さい人、程度の描写らしいが、佐藤栄作と武蔵丸と安達祐実を足して３で割ったようなディープ・ロイの「キモ可愛い」存在感には、誰もがＫＯされるはず。ユルくてベタなダンス・シーンが滅茶苦茶ツボに嵌る。これはもう脱力しながら笑うしかない。

いいなあ。ウォンカ社。万年出社拒否予備軍の身としては、できれば転職したいっす。運が悪いとブルーベリーになっちゃうかもしれないけど（この意味はちゃんと映画を見て確認してね）。給料がカカオ豆ってのも微妙だけど。ウォンカ氏自慢の超ハイテク・エレベーターなんか、終盤では完全に自立してしまって、建物に帰属しない箱型乗り物をもはやエレベーターと呼んでいいのかよくわかんないけど。

ボブ・スタイルで白塗りのジョニー・デップは、どこか既視感のあるオバサン顔。往年の久我美子にもちょっと似てる。安達祐実が入ったオッサンやらオカッパ頭のオバチャンやら。賑やかなことである。そしてナッツの選別に従事する賢いリスたち。当初は、プレーリードッグにシッポをくっつけたようなゴツイ種類であることがちょっと不満だった。シマリスだったら、もっともっと可愛かったのにな。が、見て納得。彼らは実に職務熱心で、あらゆる意味で容赦ない職人（職リス？）なのである。手のつけられない我が儘娘とその父親に対する彼らの「判断」と「処分」を鑑みると、あの貫禄が正解だったのだ。

「家族の愛情が一番大切」というオチはあるものの、アタマに「一応ね」の文字が見え見えのアンチ・良い子映画。理屈抜きに愉しめる、ストレス解消にも打ってつけの一作。一緒に見た、ロードショーは２年ぶりというＯＬ友達も凄く面白かったと喜んでおりましたので、男性諸氏はぜひカノジョを誘ってどうぞ。今回ばかりはジョニー・デップと比べられなくて済みますよん。

(2005.9.16)

2005/09/17/13:45 | トラックバック (17)
鮫島サメ子 ,話題作チェック