今週の一本
(2006 / 日本 / 滝田洋二郎)
直球勝負の本格派

百恵 紳之助

バッテリー1 800万部を越えると言われる原作は一巻しか読んでないが、 正直言ってこの話を映画にするのは厳しいんじゃないかと思っていた。 やはり天才ピッチャーという役所がそれを表現できる肉体と演技力を持った子役なんぞそうは見つからないだろうと思っていたからだ。 予告編でも野球をきっちりと映してはいなかったし、 何だかハンカチ王子みたいなアマ~イ顔したガキ連れてきやがってイメージと全然違うじゃねーかと、 正直言って舐めてかかっていた本作だったが…。映画が始まってから、 間もなくしてあるちょっとした野球の場面で襟をたださざるを得なくなった。この作品は「がんばれ!ベアーズ」級に野球が、 正確には少年野球というものがフィルムに刻み込まれていたと思った。

 映画の中のセリフに「野球はさせられるもんじゃなく、するものだ」というようなセリフがある。 特に良いセリフだと思ったわけじゃないけど、でも、この作品の登場人物たちはみんな野球をしていた。 演技としてさせらているように見えなかった。そこで野球をしているガキたちが映っているように見えた。こんな野球シーンは確かに「がんばれ! ベアーズ」ついでに言えば「3-4X10月」以来じゃないか。そんな野球シーンを出現させただけで、この映画は大成功だ。

バッテリー2 主人公、原田巧は天才ピッチャーであり、周囲に壁を作ってしまう。「あんた、俺の球が打てんのか」 と堂々と大人に言い放つ。男から見れば絶対に部下や後輩にはもちたくないタイプの人間。 そんな難しい役所をオーディションで選ばれた新人が堂々たる演技で小憎たらしく演じていた。 投球フォームも様になっており説得力十分。
 そしてこの天才ピッチャーの女房役となるキャッチャーの山田健太という子役。若干身長が足りないながらも、 原作のイメージそのままで驚いた。素晴らしい笑顔、すべてを託してもいいやと思える大きな声、そして野球の技術。どれをとっても申し分無し。 男なら上司にしたいナンバーワン。

 投手が投げる。それをキャッチャーがとる。そしてピッチャーに投げ返す。 この一連の動きに上手い奴らの少年野球の臭いが漂っていた。(「ベアーズ」ではそういったシーンに下手な奴らの臭いがあった)。が、 それだけではない。彼らが練習する雑草ボウボウの野球場。余談になるが、筆者の田舎にも「川原球場」 と呼ばれていた似たようなグラウンドがあった。少年野球チームにまだ入れない低学年の頃、上手い奴も、 無理矢理連れて来られた下手な奴もそこで野球をしていた。スクリーンから、鼻をつかんばかりに雑草の匂いがプンプン漂ってきた。 「サンドロット」などにしてもそうだが、何となくそんな場面が出てきただけでも涙腺がゆるくなってしまう。

バッテリー3 映画は原作のどこまでのエピソードをまとめたものか知らないが(一巻目は30分ほどで終わる)、 脚本も破綻なくまとまっていたように思える。岸谷吾郎演じる父親の役が良かった。
 「ですよねぇ」とかって人の話にいい加減に相槌を打ち、次の瞬間に「え?なにが…ですか?」と聞いている。でも、 少しでも長男のやってる野球というものを知りたいという父親像を好演。その結果見えた結論にも、 ちょっと違うんじゃねーかと思いながらも少しジーンとする。
 あまりに純粋な自分の息子に対して、なぜかイライラしてしまうという、微妙に大人になりきれない母親も天海祐希が好演。
 そして、この役は絶対にこの人だろうと思っていた菅原文太は言わずもがな。

 久し振りに大人も子供もきっちりと楽しめる、右本格派から投げ下ろす児童映画になっていたと思った。が、 しかし。「バッテリー」という野球的なテーマにはそれほど触れらていなかったような印象も。巧の成長に追いつけない豪など、 もう少し踏み込んで描いてもよかったのではと思う。ラストも病弱な弟のためにマウンドに立つというような雰囲気はそぐわないと思った。

 ちなみに元阪神の嶋尾が出演。芝居もこなれていた。小さな役ではあるが、重要な役だ。 そんな細部にも役者の肉体を得るというこだわりが見えた。

(2007.3.10)

バッテリー 2006年 日本
監督:滝田洋二郎
脚本:森下直
撮影:北信康
美術:磯見俊裕
出演:林遣都,山田健太,鎗田晟裕,蓮佛美沙子,
   天海祐希,岸谷五朗,菅原文太 他
公式サイト
c2007「バッテリー」製作委員会

2007/03/12/12:16 | BBS | トラックバック (0)
百恵紳之助 ,今週の一本
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