脳内i-pod・サウンドトラックコーナー繁忙記
第六回
映画×ロックの隠れた名盤復刻

佐藤 洋笑

小さなスーパーマン ガンバロン オリジナルサウンドトラック ジャケット えー…お久しぶりです。長らくご無沙汰しておりました。映画と音楽の関係にこだわりつつ、ヌルーく楽しむコラムとして立ち上がったこの連載。不必要なオーヴァードーズ、ぢゃなかった、やりすぎのおかげで長らく休息をいただいておりました。

 その後、回転扉の季節は巡り、旅に出る人と着く人が幾人が入れ替わり、沈没船からネズミが消えるように、多くの人がオレのそばから去っていきました。オレは、ココロの風穴ウィンディなメランコリー・サマーを過ごしておりましたが、ようやく社会復帰に向けてヨタヨタと歩き出しております。

 そんなわけで、恥ずかしながらこの連載も再開させていただく運びとなりました。今後もご愛顧くださいますようお願い申し上げます。

 …で、このたび紹介したい一枚なんですが、実は、この連載の休載の一因ともなった30歳当時のオレの渾身の仕事「ロック画報22 特集 映画×ロック」でもギリギリまで掲載の方向で考えていたものです。ですが、その時には、紙幅や他の紹介作とのテイストの違いなどの理由でオミットしてしまいました。後になって、そのレア度や音楽的な面白さから、紹介しておくべきだったと後悔していたのですが、それがなんと、当時の仕様をそのままミニチュア化した紙ジャケット仕様で丁寧な解説付で復刻されたのです。これも何かの思し召しかと。

 『小さなスーパーマン ガンバロン オリジナルサウンドトラック

 ふむー、このタイトルでピンと来る方は、もう30代後半から40代といったところでしょうか。時は77年。世相を反映してか東映特撮ヒーローが、同年は「大鉄人17」「ジャッカー電撃隊」、翌年は「スパイダーマン」とちょっとハード志向に傾きだした時代に反旗を翻し、「男の子なら正しく強く」と、"実写版鉄腕アトム"(…と企画書に明記されております)を目指した明朗快活な特撮ヒーロー番組。「何それ」と思っている方も多いかと思いますが、全盛期の円谷プロの流れを汲むスタッフを中核に、クレイジーキャッツの数々の娯楽作を生み出した古澤憲吾監督までが参加。手練のスタッフが、丁寧に真心こめて紡いだ“良質の子ども番組”の称号がふさわしい、良作です。

 しかし、ここでの本題は音楽。本作の音楽はNTVの「西遊記」などの「テレビ映画のBGM」という枠を駆使して、往時の茶の間にロックを持ち込んだ、ミッキー吉野が担当しています。勿論、(ヴォーカル、タケカワユキヒデこそ未参加ですが)彼率いるゴダイゴの面々も演奏に全面参加。彼らの後期のヒット曲「銀河鉄道999」や「ビューティフル・ネーム」などを記憶している方には、彼らが子供番組の音楽を担当していたといってもさほどの驚きもないでしょうし、特撮ヒーローとロック系サウンドの融合というのは、山下毅雄、渡辺宙明、玉木宏樹といった先達たちが先駆的に取り組んでおられましたが、“ロック・バンド”が特撮ヒーロー番組とがっぷり四つに組むというのは、現在の目で見ても、なかなか斬新なのではないでしょうか。

 中身もかなりトバしてまして、バークリー音楽大学出身のミッキー吉野の才気が爆発。J-リーグ前夜の高校生サッカー試合のテーマ・ソング(アノ、「振ーりー向くなよ、振り向くなよ~」ってヤツです)でおなじみの青少年コーラス・グループ、ザ・バーズとジャニーズ少年団の明朗快活な歌声とクロスオーヴァー~ファンク風味満載の16ビートのアレンジの微妙な遊離具合がたまらなく味がある主題歌に始まり、世界のトミタばりにクラッシックの既製曲をシンセサイザーで再構築したアクション曲など、やりたい放題。番組の見せ場でもある巨大メカのテーマでは、流石、元ゴールデン・カップスと言いたくなる渋くてブルージーなシャウトで曲を引っ張ります。しかしながら、この曲もいざメイン・ヴォーカルとなると、声楽科出身というオペラチックなヴォーカリストに委ねてしまい“こう来るか!”とリスナーに衝撃を与えます。なんと申しましょうか、明朗快活な子ども番組というコンセプトに忠実なメロディとマッドな匂いさえする不良っぽいロック・サウンドのせめぎあいがアルバム全編にわたって繰り広げられているのです。このテッテ的に作りこまれたサウンドと少し線の細いメロディとの遊離具合が、ミッキー先生のサントラ仕事の肝だと私は思っていまして、NHK「男たちの旅路」や、NTV「いろはの“い”」にもこうしたテイストが漂っています。そこにタケカワユキヒデという実にポップの王道を行くメロディ・メイカーが合流することで、往時のゴダイゴ旋風が巻き起こったのではないかな、と私は踏んでいるのですが、いかがですか、? って、誰に訊いているんでしょうかね。ちなみに、前述のシンセ・サウンドについてミッキー氏は、田中雄二氏の名著「電子音楽 in JAPAN」所収のインタヴューで、“当時のシンセサイザー自動演奏の打ち込みにかかる手間と時間を考えれば、自分で弾くほうが早いし正確”という旨を豪語されており、全音ご自身の手弾きのオーヴァー・ダビングだそうであります。この辺、なんだかんだと出自はマニアックなミッキー吉野ここにありなエピソードかと思います。

 番組やゴダイゴに思い入れのない方には、とっつき辛いマニアックなアイテムやも知れませんが、長らく中古盤が高値を呼ぶ状況が続いていた本盤を気合で復刻させた有志の方々に敬意を表してご紹介いたします。

 さて、相も変わらず無駄遣いな日々を続けておりまして、つい先般ボックス・セットで復刻された我が心のベスト・テレビ映画「大都会」シリーズのサントラや、突如大量にアナログ盤を入手する機会に恵まれた(恐らく、同好の士が結婚、あるいは身内の不幸などの人生の大型イベントに直面し、コレクションを放出したんでしょうなあ)某大御所作曲家など、いくつかネタを寝かせてございます。またぞろ、ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。

2007/06/12/15:50 | BBS | トラックバック (0)
佐藤洋笑 ,脳内i-pod
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