以下の文章は、三池崇史監督作品『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』鑑賞後
の、あるアクション/クライム・ムーヴィー・ファンの二人――
仮に黒岩と大門と呼びます――の雑談の抜粋であります。
大門 いやあ、やっぱ三池グレイトっすよ、クロさん!『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』どうでしたか?
黒岩 …うーん、本当に相変わらずの三池節だったな。いや、俺も一応、アクション映画好きを自称する身だからさ、『FULL METAL 極道』(97年)あたりから三池センセもずっと観てますけどね(笑)。まあ、その場ではゲラゲラ笑っちゃうんだけど、観終えた後いつもコレでいいのか?って釈然としない、残尿感みたいなものが残るのよ(笑)。
大門 ドコがいいってアノ世界全部がいいじゃないですか。今回も書割の富士山バックにタランティーノが登場するプロローグからエンジン全開でしたよ。タラや三池については、もうストーリーウンヌンよりはまさに世界を楽しむって感覚で接しないと。クロさん、その辺アタマ硬いんですよ。
黒岩 まあ、言ってることはわかるけどさあ。それにまあ、ストーリーは別に…『用心棒』だしな(笑)。まあ、途中で主役がマジック・マッシュルーム好きから、他の人に乗っ取られる辺りは新機軸というか痛快だったけど(笑)。
まあ、その辺も含めてさ、観終えたアト、いつまでもココで遊んでいていいのかって気持ちになるのよ。まあ、映画を見た後気分を引きずらない人ならいいんだろうけど、オレは見終えた後主人公の気分に浸りたい人だからさ。三池の映画は早く忘れないとマズいみたいな気持ちになるのよね。
大門 それは、アノ世界に乗れない人の嫉みみたいなもんですよ。
黒岩 うーん、でもさ、確かに暴力やアクションが行き着くはてに笑いに転じる瞬間のカタルシスっていうのは間違いなくあるけど、三池の映画って寸止めじゃない?つまり、作者がまじめにやりきったら思わず笑いに転じるっていうのでなく、自らこれは笑いなんですよって開陳してしまうみたいな世界じゃない。まあ、クドカンとかも同じやり方だと思うけど“そこまでホンキじゃありませんよ”って宣言されているみたいなんだよね。まあ、そこが今風なんだろうけど。
大門 うーん、なんだか難癖つけているようにしか聞こえないなあ。2時間強楽しくお祭り騒ぎを見れて何が不満なんですか?
黒岩 うーん、劇中たまにチラホラと“ヌルい時代に生まれちまった”だとか“男なら”的な台詞を出すじゃない。出しておいてこれかよって不満はあるよな。そりゃ、時代がヌルく感じるのは誰しもある時期思うだろうし、そして現実への無力感とか焦燥感もある。そこを2時間目を眩ませてくれれば映画って大成功だと思うんだけど、三池の映画ってホント、描写そのものは凄まじい冴えがあるけど、肝心のところで現実に引き戻されるんだよな。ギャグを入れる場所がどうにもオレには解せないというか。出てる役者さんもみんな楽しんでい るとは思うんだけど、まあ、敢えて名前出してやるけど、木村佳乃とか“アタシがこんなバカなことやるなんてスゴイ!”とか思っているのがミエミエで鼻につくのよ。やんならトコトンやってくれないと。
大門 でも、役者さんたちが役とかそっちのけで楽しんでいるところを撮影して面白おかしく仕上げるって言うのはまあ、娯楽映画としてはありだと思いますけどねえ。
黒岩 梅宮辰夫の『不良番長』とか、な…………。
大門 ……ん?どうしました?
黒岩 いや、ふと『不良番長』だと思えば腹も立たないことに気がついて……。
大門 ……ま、飲みますか!サブちゃんの主題歌はよかったでしょ?
黒岩 だな!思わず劇場でCD買っちまったぜ!三波春夫の「ルパン音頭」 を彷彿とさせるよさだった!
大門 クロさん、好きなんだから、もう!ネぇちゃん、生ビール大ジョッキ二つ!
(2007年9月某日 歌舞伎町・「世界の山ちゃん」にて)
(2007.10.2)
スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ 2007年 日本
監督:三池崇史 脚本:NAKA雅MURA 撮影監督:栗田豊通 美術:佐々木尚
出演:伊藤英明,佐藤浩市,伊勢谷友介,桃井かおり,香川照之,石橋貴明,安藤政信,木村佳乃,松重 豊,
塩見三省,石橋蓮司,堺 雅人,田中要次,小栗 旬,内田流果,西田敏行,クエンティン・タランティーノ 他



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