インタビュー
石井聰亙監督

石井聰亙(映画監督)

DVDBox第二弾の発売に寄せて

特設サイト http://www.transformer.co.jp/special/ishii2.html
発売記念上映イベント http://www.transformer.co.jp/special/pdf/ishii2_flyer01.pdf

石井聰亙(監督)
1957年、福岡県福岡市生まれ。76年、日本大学芸術学部映画学科に入学し、「狂映舎」を設立。1976年に撮った8mm映画の「高校大パニック」が商業映画として日活でリメイクされ、東映系で公開された1980年の「狂い咲きサンダーロード」で多くの注目を浴びる。その後も現在に至るまで、斬新な映画を撮り続け、1984年の「逆噴射家族」はイタリアの第8回サルソ映画祭グランプリ等、国内のみならず海外でも高い評価を受ける。2006年には監督生活30周年を迎えて、記念の初期作品集のDVD Boxが発売された。待望のDVD Boxの第二弾が12月22日に発売される。

第一弾のDVD Boxが大好評だった石井聰亙監督のDVD Boxの第二弾が発売される。 収録作品は、『逆噴射家族』、『THE MASTER OF SHIATSU 指圧王者』、『DUMB NUMB DVD LIVE FRICTION 1989』、『TOKYO BLOOD』、『水の中の八月』、『鏡心〈3DサウンドHD〉完全版』で、『PSYCHEDELIC YEARS』のサブタイトルもあるように、石井聰亙監督が肉体的スピードの表現から精神的スピードの表現に移っていく時期を捉えた必見の作品集になっている。
石井聰亙監督
――今回発売されるDVD boxの第二弾は『PSYCHEDELIC YEARS』のサブタイトルもあるように、石井聰亙監督が肉体的スピードの表現から精神的スピードの表現に移っていく時期を捉えた作品集だと思いました。

石井 そう言ってもらえると嬉しいですが、本人としては当時は必死になって作品を作っているだけなので、そうも思っていなくて、今から振り返ると「そうだったのかもしれない」と思うことはあります。

――個人的にも石井監督は大事な監督で、高校卒業時に弟子入りしようと思ったほどでした。結局しませんでしたが、朝霞市に住んでいる友達と一緒に、大学時代に朝霞市にあった自衛隊基地跡にしのびこんだことがあります。そのときに、石井監督がルースターズの大江慎也さんの主演で準備していた『STONE』のシナリオが落ちていて拾ったことがあります。

石井 確かに、あそこの自衛隊基地跡にはロケハンに行ったことがあります。誰が置いていったんだろう? でも、『STONE』のシナリオを拾ったとはすごいね(笑)。

――『STONE』は陸上の短距離選手が速さの限界を超えていこうとするのを精神的に描いた作品で、『逆噴射家族』の後に予定されていた作品でした。シナリオもとても興味深い内容でした。

石井 大江くんの精神的な問題などもあって(当時、大江慎也さんは精神的な疲弊からルースターズを脱退した)、『STONE』は撮影できなかった作品です。他にも村上龍さんの原作の『コインロッカー・ベイビーズ』の映画化も考えていましたが、予算面のことなどもあって実現しなかったんです。

石井聰亙作品集 DVD-BOX II ~PSYCHEDELIC YEARS~
――今回のDVD Boxの第二弾に収録されている『逆噴射家族』についてお聞きしたいと思います。公開当時に有楽シネマで観て、高校生だったのですが、とても感激して「何でこんな狭い劇場で、しかも人が入っていないんだ」と思った記憶があります。メディアでも必要以上に黙殺されていたとも思います。

石井 新宿の公開館ではもう少し入ったようですが、有楽町や銀座に来るような人向けの作品ではないから(笑)。メディアで取り上げられなかったのは、ディレカン(ディレクターズ・カンパニー)の初期の作品で、映画会社などから見たら、鬼っ子な存在だったのもあったかもしれない。

――石井監督の作品は、当時の他の監督にはない感覚的に見事にこちらにフィットするものがありました。感覚的なので説明しづらいのですが、音楽的とでもいうようなものです。当時の他の日本映画の監督にはない感覚で、同時代だったらジョン・カーペンターや、その後の世代ならサム・ライミにもあった感覚です。

石井 そう思ってくれる若い人は当時はいたようですが、とにかく当時の上の世代にはあまり分かってもらえなかった。『逆噴射家族』は脚本を書いているときも撮影している時も「これはかなりヒットする」という手応えがあったので、あの結果は残念でした。

――だから、『The Crazy Family』の英語タイトルで海外の映画祭で好評で迎えられたときは「やった!」と思いましたし、「当然だろう」とも思いました。

石井 海外の反応は素直に嬉しかったですね。ドイツで上映されたときは、終映後に観ていたドイツ人が話しかけてくれて、それがアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのブリクサだったんです。「素晴らしかった。うちのバンドを撮ってくれないか」と言われて撮ったのが『半分人間』 (86)です。

DUMB NUMB DVD
――その後、今回のDVD Boxにも収録されている『THE MASTER OF SHIATSU 指圧王者』(89)、『DUMB NUMB DVD LIVE FRICTION 1989』(89)まで監督作が空いて その後も『TOKYO BLOOD』(93)まで撮らないのは何かあったのでしょうか?

石井 海外での高評価と日本での評価の差にとまどったことは一つありますね。「どうして分かってもらえないんだろう?」というようなジレンマはありました。前回のDVD Boxを出してイベントをやったときに、多くの人が来てくれて「こんなに熱いファンが当時たくさんいたんだ」と今になって思いました。実際にはいろいろな企画をやっていて、その中にはアメリカからの企画もありました。

――どんなのがあったのでしょうか? 伝わってきていた話しではウィリアム・ギブソンの原作を何か撮るのではないかとの噂はありました。

石井 ギブソンは『クローム襲撃』の中の一編をやる話がありましたね。だが、アメリカで撮るのは人も多く関わってくるし、もちろん英語で進んでいくし、時間もかかるので「まだいい」と思ったんです。『逆噴射家族』もアメリカでリメイクの話しがありましたね。

――それはなぜ実現しなかったのでしょうか?

石井 自分としては、既に撮ったものは終わったものなので「リメイクでなく続編を撮りたい」と言ったんです。そうしたら、その話は無くなりましたね。今から思うとリメイクでやっといてもよかったかなと思うこともありますが(笑)。

――『水の中の八月』は先日、イマジカでのHDデジタルリマスター版の試写を観させていただきましたが、高画質の映像及び今観ることで多くの感慨を得た作品でした。

石井 あの映画は、いろいろな偶然というか奇跡のようなものが絡みあって出来た作品なので、今回の高画質で観ることができたのは、当時のことがいろいろとよみがえってきたことがありました。まず、1年近くオーディションなどをして主演の葉月泉役の女優を探していたのですが、小嶺麗奈さんと出会えたことは奇跡に近かった。イメージもぴったりでしたが、水泳及び高飛び込みの素養もあったから。地元の博多で撮った作品ですが、撮影した年の博多が映画と同じく雨が降らなくて渇水状況だったんです。

石井聰亙作品集DVD-BOX 1 ~PUNK YEARS 1976-1983~
――『水の中の八月』は今観直すともっと出来たと思える部分もあるのでしょうか?

石井 CGなども当時は今とは違う状況だったりしますが、ラストは本来は違っていて、あのラストの後に地球規模の水=命の循環を描こうと思っていました。ただ、映画の方向性から逸脱することもあって撮影しなかったんです。また、今回のDVD Boxには、『水の中の八月』のメイキングの『水の記憶』が特典で収録されていますが、あのメイキングは当時大学生で今は映像制作のプロになったスタッフに撮ってもらったものです。今回、出演者の松尾れい子さんと自分がナレーションも入れて完成させてもらいましたが、普通のメイキングとは違っていて興味深いものに仕上がっていました。

――『鏡心』(05)は最近の作品です。今年になってローマなどで上映して好評だったとブログで拝見しました。

石井 挿入される東京の景色も含めて、海外の人には興味深い作品のようです。予想外の感想が出てくるのが面白い作品でもあります。

――特典に収録されている『ロンリープラネット』はあまり観ることができない貴重な作品 です。撮影は笠松則通氏、美術には磯見俊裕氏の石井聰亙組ともいえるスタッフで、最近は海外で活躍する裕木奈江さんが主演です。

石井 96年に福岡市で福岡実践映画塾というワークショップで一般公募した脚本を書いた本人の花野純子さんが監督、私が製作した作品です。実験的なところもありますが、この機会に多くの人に見ていただきたいです。

――最近はシナリオを勉強していると聞いています。

石井 感覚的な部分に走りすぎて、シナリオが弱いと思うことがあったので、シナリオを一から勉強しているんです。とても面白いです。シナリオの構造的なことで、映画が変化していく様が興味深く、奥が深いと思っています。

――そういう意味で最近面白かった作品があったら教えてください。

石井 『ヒストリー・オブ・バイオレンス』、『ブラック・スネーク・モーン』、『カポーティ』、『アフター・ウェディング』ですね。作り手のやろうとしていることが、どの作品も刺激でした。

――最後にメッセージがあればお願いします。

石井 今となっては、あまり観ることができない作品もありますが、こうやってまとまることで軌跡のようなものが感じられると思います。今回の発売に合わせて、全作品の上映も行いますので是非、映画館でも体感していただけたらと思います。

取材/文:わたなべ りんたろう

特設サイト http://www.transformer.co.jp/special/ishii2.html
発売記念上映イベント http://www.transformer.co.jp/special/pdf/ishii2_flyer01.pdf

2007/12/13/19:50 | BBS | トラックバック (0)
わたなべりんたろう ,インタビュー
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