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『Ricky リッキー』1ありきたりの女のカティ
平凡な男のパコ
そんなふたりが出会ったとき
魔法にかかったような、奇跡が起こる
ひとつの愛の物語

ふたりの間に素晴らしい
赤ちゃんがやってくる
その子の名前は――リッキー

Ricky リッキー

http://www.alcine-terran.com/ricky/

Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開中

INTRODUCTION

平凡なある家族に舞い降りた、素敵な贈り物。
女性映画の名手フランソワ・オゾンが贈る、
かわいくて、とってもユニークな“ある家族”についての物語。

『Ricky リッキー』2最愛の人を失った喪失と再生を描いた『まぼろし』、フランス映画界の大女優たちによる競演と衣装で世界中の女性を虜にした『8人の女たち』、女性の美のミステリーを描いた『スイミング・プール』など、女性映画で国際的な評価を得ているフランス映画界を代表する監督の一人であるフランソワ・オゾン。女性の美しさや強さといった魅力の他に、脆さや恐ろしさ、身勝手さまでもチャーミングに描き、色々なジャンルの映画に挑戦し毎回見事にそれをクリアーしてきた彼が、今回満を持して選んだのは、家族愛、そして母性。

カティは、郊外の団地に娘のリザと二人で暮らすシングルマザー。毎朝バイクで娘を学校に送った後、勤め先の工場で流れ作業をするという、特に代わり映えのしない平凡で単調な日々を送っていた。ある日、カティは新入りの工員パコと恋に落ち、パコは彼女たちの家の一員となる。最初は反発していたリザも、徐々に新しい家庭を受け入れるようになっていく。そしてカティとパコに赤ちゃんが誕生する。名前はリッキー。つぶらな瞳でまんまるほっぺが印象的な可愛い赤ちゃんだ。今までバラバラだった家族が、リッキーを通じて本当の家族になろうとしていた頃、リッキーにある異変が起きるのだった…。

平凡な家族の元に舞い降りた、翼のはえた赤ちゃんリッキー。彼を通して、それまでは自分本位だった家族が相手を尊重し自分と向き合い、不器用ながらも本当の家族になっていく姿を、オゾンならではのオリジナリティ溢れるスタイルで描いた本作は、第59回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品、そのユニークな設定とかわいらしさで話題をさらった。

幸せを運ぶ、風変わりな赤ちゃんリッキー。
彼は天使?それとも……。

『Ricky リッキー』3原作は、アカデミー賞美術賞・衣装賞を受賞した『恋の闇 愛の光』(マイケル・ホフマン監督・1995)の原作者であり、ブッカー賞の審査員を務めたこともあるイギリスの女性小説家ローズ・トレメインによる"The Darkness of Wallis Simpson"の中に収められた短編小説"Moth"(蛾)。 “生活が苦しく恵まれないことが当たり前になってしまっている生活に突如やってきた素晴らしい出来事”という設定を気に入ったオゾンが、長年映画化を希望していた題材だった。この原作に、“リアリティ”というエッセンスを加え、リッキーという翼の生えた赤ちゃんの存在=エンジェルというやや短絡的な発想から離れ、観るものによって色々な解釈ができるような作品に仕上げた。そして、オゾンならではのアイロニックな要素を本編にちりばめることで、独特の世界観に溢れる寓話的物語をつくりだした。

俳優陣にはオゾンとは初タッグとなる面々を揃えた。母親カティ役はコメディ出身の女優アレクサンドラ・ラミーを抜擢。“どこにでもいる平凡な女性”カティを見事に演じ、カティはオゾンが描き続ける様々な女性像に新たなページを加えた。父親パコ役にはフランス、スペインで活躍、2005年の「ハリー見知らぬ他人」ではセザール賞主演男優賞を受賞した実力派俳優セルジ・ロペス。娘リザ役には、メリュジーヌ・マヤンス。8歳という年齢にもかかわらず、新しい家族の出現を戸惑いながらも受け入れていく、物語の中核ともなる重要な役を繊細な表現力で演じきった。リッキー役には、何と生後数か月のアルチュール・ペイレ。 製作陣は、撮影をジャンヌ・ラポワリーが担当、音楽にフィリップ・ロンビを迎え、衣装のパスカリーヌ・シャヴァンヌ、美術のカーチャ・ヴィシュコフなど、オゾン組が再集結。そして製作には今回が初タッグとなる、『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』、『アメリ』などを手がけたクローディ・オサールが務めた。そして、キャット・パワーの名曲「ザ・グレイテスト」が、作品の世界観をより味わい深いものにしている。

Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開中

インタビュー

フランソワ・オゾン監督インタビュー

――『Ricky』が生まれたきっかけは、英国人小説家ローズ・トレメインの小説ということですが……。

フランソワ・オゾン監督フランス語では『LEGER COMME L’AIR(原題)』という題名が付けられていますが、原題は『MOTH(原題)』というんです。つまり蛾のことで、光に引き寄せられる虫のことですよね。非常に短い小説で、ダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』の世界(アメリカの田舎のモービルホームに住んでいる、あまり裕福でない社会層に属した白人の社会)を彷彿とさせる作品なんです。それでずっと長い間、映画化したいと考えていたんですが、どうしたら自分らしく表現できるのかを考えていました。
この小説で気に入ったところは、恵まれないことが当たり前になってしまっている生活に、突然奇跡のような素晴らしい出来事が舞い降りてくる、というところでした。でもファンタジーの部分を表現するのは難しいなと思っていたんです。ファンタジーは、観る人が信じることができ、感情移入できるようなものでなければならないと考えています。だから、翼が突然生えてきて、過程の説明がほとんどない小説と違って、僕の映画ではリッキーの翼の成長を事細かに描いたんです。
でも、実は本当に僕が感動したのは、ファンタジーなところよりも、家族が置かれた環境についてであり、家族に新しいメンバーが加わることがどのように家庭のバランスを崩すのか、ということの語り口だということに気づいたんです。

――監督の作品はいつも、コメディーとファンタジーが複雑に混ざり合っていますね。リッキーの翼にはどういう意味があるんでしょうか?

今回の原作には僕が好きな皮肉が散りばめられていて、映画の中でもそれらを残したいと思っていたんです。物語がファンタジーになりすぎたり、ハッピーになりすぎたりしたら、ユーモアを挟んだりして、テンションを和らげ、シーンにある一定の効果を持たせました。
リッキーは他の赤ちゃんとちょっと違いますよね。そんなリッキーを、カティとリザが大喜びで世話をするんです。この映画に込められた皮肉は、非現実的な状況の中で、ありきたりな母性を見せるところから生まれているんです。どんな親でも、子どもが何かできるようになった瞬間を目にすると大喜びしますよね。例えば、子どもが最初に笑うときやゲップをするとき、それに、最初の一歩を踏み出すときなど。親というのは赤ちゃんの体を敬愛するものです。リッキーの背中の翼は、そんな親たちの気持ちや行動を強調しているのです。カティにとって、リッキーの翼はハンディキャップではないんです。それは贈り物で、価値のあるものなんですね。彼女はその翼を面白がっているし、気に入っています。
人間と動物で共通しているものの一つに、母性本能が挙げられると思います。だから、パコの動物的な側面を映画の中で繰り返し登場させているんです。みんなは、リッキーの翼に宗教的な意味があると思うかもしれないけれど、僕にとっては、生えかけのときの形とか、大きさも色も天使をイメージさせるものじゃないですね。

――映画は、カティがソーシャルワーカーと向き合っているシーンのフラッシュバックで始まりますが、どうしてこのシーンを最初に持ってきたのですか?

フランソワ・オゾン監督2これはいろいろな解釈を生むだろうなということは思っていましたし、そういったことは悪くないと思っています。僕の作品に関して、みんな好きなように、それぞれの個人的な体験からいろいろな解釈を持ってくれて構わないと考えています。
僕はこのシーンは映画の初めではなく、中盤だととらえています。ちょうどリザとリッキーをカティに押し付けて、パコが出て行ってしまったところですね。この“勇敢な母親”が、絶望で耐えきれなくなって、疑いを持ったり、自分の子どもを施設に預けることを口にしてしまうところを見せることが必要だと思ったんです。このシーンを映画の最初に持ってくることで、カティの社会的な立場や母性を取り戻すところを手っ取り早くあらわす事が出来るんです。よくあるフラッシュバックに慣れている観客は、このとても現実的なシーンで、この話が社会的なテーマを扱ったドラマだと勘違いしてしまう。その期待を裏切って、後からファンタジーで驚かすのは楽しいですね。

――『リッキー』は家族についての映画ですが、再び女性がテーマとなっていますよね。

僕は女性の姿を描くのが好きなんです。だから、また母性をテーマにした作品を作りたかったんですよ。『海を見る』とは違う形で。『海を見る』では、良き母と鬼のような母という正反対の女性を通して、ふたつの母性本能の姿を描いたんです。『リッキー』ではこのふたつの姿がカティというひとりの女性の中に描かれていて、彼女の複雑な母性の変化が表現されているんです。
初めのうちは、カティは子どもを守る強い母親なんです。でも、そのうち、子どもを人形と遊ぶように扱うようになり、浮き沈みの激しくて子どもっぽい母親になるんです。それから、自分の子どもは世話が必要で、いろいろなものを分かち合える存在だと思っているけれど、最後にはその子を手放さなければならないという現実に向き合うようになるんです。

――母性は父性よりも複雑だと思いますか?

子どもは母親の体から生まれるので、母親は子どものことを自分の一部のように考えることが多いのではないでしょうか。この生理学的な面と身体的な関係はとても興味深いと思います。
小説の中では、父親のパコは、ジャーナリストからお金をむしり取りに戻ってくるような、とても感じの悪い男として描かれていますが、映画の中では複雑なキャラクターとして描かれています。僕は、この男女の関係を小説よりも詳しく描きたかったんです。パコはリッキーを使って、ジャーナリストからお金を稼ごうとします。でもこれは、単にずうずうしいのではなく、正当な理由があるからなんです。家を買うためとか、良い環境でリッキーを育てるためのスペースを得るため、とか。確かに、パコが戻ってくるのは、リッキーが珍しい子どもだと分かってからだけれど、彼には父性を発達できるような機会も時間も与えられなかったんです。彼は、リッキーが生まれてすぐにカティに追い出されてしまったのですから。“男が父親になれるチャンスはどのくらいあるんだろうか?”、というのがこの映画が問いかけるテーマのひとつでもあるんです。

――今回のキャスティングについて教えてください。

父親役のセルジ・ロペスとはずっと一緒に仕事をしたかったんです。登場人物の構成を練っていたときに、ずっと彼の事が頭にあった。特に、カティが体の毛のことを話しているシーンではね。セルジはとても繊細な俳優なんですよ。動きが官能的で、やわらかいんですね。でも、女性に好かれるような男性らしさがあって、女性が癒されるような要素を持っているんですよ。小説の中でのパコは良いイメージではないんだけれど、セルジがそんな人物を演じることによって、パコに曖昧さや、人間味が加わっているんです。
アレクサンドラ・ラミーは、テレビで『UN GARS, UNE FILLE(原題)』を見ていたときに、面白い女優だな、と思ったんです。コメディの才能があって、受け答えの速さはピカいちだし、その速さやリズムがスクリューボール・コメディのアメリカ人女優みたいだなって。でも、僕は、彼女はもっとドラマティックな役も上手にこなせるんじゃないか、と思ったんです。それにアレクサンドラは、一般的な女性に近い雰囲気を持つ女優ですよね。それがカティにピッタリだったんです。彼女がカティだったら、すでにいろんな役を演じている他の女優よりも、観客がもっと身近に感じるだろうな、と思ったんですよ。それで、彼女にはノーメイクで出演してもらうことを承諾してもらいました。この映画では、カティが魅惑的であってはならないなんですよ。
僕は、現実性にすこしスタイルを加えようと考えました。カティの社会的な立場を表現して、どの家族にもある“閉じ込める”という概念を強調しようと考えたんです。もしカティがブルジョワ層に属していたら、おそらく有名な医者に診てもらったでしょうね。でも、彼女は隠すことを選んだんです。なぜなら彼女は社会との関わりをあまり持っていなかったから。だから、この赤ちゃんの登場はチャンスだったんです。ぱっとしない、変わり映えのない日常の中で起こった素晴らしい出来事だったんです。赤ちゃんはまさに宝物そのもので、それを彼女は自分だけのものにしたかったんです。
リッキーを演じているアルチュールは、ぽっちゃりしていて愛らしいですよね。でも、姉役のリザを演じているメリュジーヌと同じくらい堂々として見えるんですよ。『海を見る』のときのように、僕は彼を役者として扱いました。彼に話しかけ、どう役を演じてほしいかを説明したりしたんです。すぐに、彼のリズムで撮影を行えるようになりましたよ。彼のお昼寝の時間とか、ご飯の時間とか... 面白かったのは、彼が自分の役を真剣にとらえて、撮影を重ねるごとに演技が上手になっていたことですね。空中を飛んだ時は、本当にうれしそうでしたよ!

C R E D I T

CAST カティ:アレクサンドラ・ラミー パコ:セルジ・ロペス リザ:メリュジーヌ・マヤンス
リッキー:アルチュール・ペイレ 医師:アンドレ・ヴィルムズ ジャーナリスト:ジャン=クロード・ボル=レダ
図書館員:ジュリアン・オロン 肉屋:エリック・フォルテール 販売員:アキム・ロマティフ
スーパーの店長:ジョン・アーノルド オディール:マリリンヌ・エヴァン

STAFF 監督:フランソワ・オゾン 脚本:フランソワ・オゾン、エマニュエル・ベルンエイム
原作:ローズ・トレメイン『MOTH(原題)』(出版:Edition Plon)
製作:クローディ・オサール、クリス・ボルツリ 製作指揮:フィリップ・ドゥレスト 映像:ジャンヌ・ラポワリー、AFC
音響:ブリジット・テランディエ 美術:カティア・ヴィスコップ 衣装:パスカリーヌ・シャヴァンヌ メイク:ジル・ロビヤール
ヘア:フランク=パスカル・アルキネ 監督アシスタント1:ユベール・バルバン 台本:クレモンティーヌ・シーファー
キャスティング:サラ・ティーパー(a.r.d.a)、レイラ・フルニエ キッズ/エキストラキャスティング:アナイス・デュラン
モンタージュ:ミュリエル・ブルトン 音声モンタージュ:オリヴィエ・ゴワナール ミキシング:ジャン=ピエール・ラフォルス
特殊効果グラフィックデザイナー:ジョルジュ・ブッシュラゲン SFX監督:パスカル・モリーナ 視覚効果:BUF
スタントマン:パスカル・ゲガン、マルク・ビゼ 表紙写真:ジャン=クロード・モワロー オリジナル音楽:フィリップ・ロンビ

2009年/フランス、イタリア/90分/フランス語/35mm/カラー/アメリカンビスタ/DTS、SRD/原題:Ricky
(C)Eurowide&Foz 配給:アルシネテラン 後援:フランス大使館 協力:ユニフランス
http://www.alcine-terran.com/ricky/

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2010/12/09/12:13 | トラックバック (0)
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