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ZIGGY FILMS ’70s vol.2

http://nashville.sky-way.jp/

2011年8月6日より『ナッシュビル』、8月27日より『天国の日々』
新宿武蔵野館にて連続公開

INTRODUCTION

今も語り継がれる‘70年代アメリカ映画伝説 第2弾!
『ナッシュビル』 『天国の日々』連続公開

1970年代、型破りな発想と斬新な映像、そして究極の映画的描写力で作られ、今に語りつがれる伝説の映画が誕生した。公開当時、興行面では闇に葬り去られたが、それらの多くは今なお映画ファンを引きつけるカルト的な魅力を放っている。そんな映画を紹介する「ZIGGY FILMS‘70s vol.2~70年代アメリカ映画伝説」――昨年の『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』『バード★シット』に続く第2弾はロバート・アルトマン監督の『ナッシュビル』とテレンス・マリック監督の『天国の日々』だ。
アルトマンは2006年のアカデミー賞名誉賞の授賞式で「映画作りとは海辺で砂の城を作るようなもの。やがて大洋が作った城を運びさる、それでも砂の城は胸に残っていく」とスピーチして喝采を浴びたが、半世紀近くをスタジオと闘い続けながら多くの傑作を作り上げて来たアルトマンならではのメッセージである。今回の『ナッシュビル』は大統領候補の選挙キャンペーンのためにカントリーウエスタンのメッカ、ナッシュビルに集まったミュージシャン、その中の24人を中心に描かれる。アルトマン流、“群像劇ドラマ”の原点がここにある。
最新作『ツリー・オブ・ライフ』がカンヌ映画祭でパルムドールを受賞したテレンス・マリックの『天国の日々』は、‘73年の記念碑的デビュー作『バッドランズ』に続いて発表した第2作である。今世紀初頭のテキサスの広大な農場を舞台に、時代に翻弄される4人の若者たちの青春、希望、挫折を、人間と自然に敬虔な深いまなざしを通して描き出した、マリックの代表作だ。“光と影のバラード”と謳われた撮影監督ネストル・アルメンドロス、ハスケル・ウェクスラーの映像は時代を超えて見る者を圧倒する。
自由な映画制作で独自の映像空間を作り上げてきたアルトマンとマリック。映画ファンの間でカルト的人気を誇る『ナッシュビル』と『天国の日々』は映画に対する概念を変えてしまうほどの魅力あふれる作品だ。

詳細

ナッシュビル 8月6日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次

監督・製作/ロバート・アルトマン 脚色/ジョーン・テュークスベリー 撮影/ポール・ローマン 音楽編曲・監修/リチャード・バスキン 編集/シドニー・レビン、デニス・ヒル キャスト/ヘンリー・ギブソン、リリー・トムリン、ロニー・ブレークリー、グウェン・ウェルズ、シェリー・デュバル、キーナン・ウィン、バーバラ・ハリス、スコット・グレンほか 1975年/カラー/160分/原題:NASHVILLE
(c)1975 Paramount Pictures corporation  『ナッシュビル』予告編youtube

『ナッシュビル』カンヌ、ヴェネチア、ベルリンの世界3大映画祭最高賞をはじめ世界各地で数々の映画賞を受賞し、アメリカの俳優から“最も尊敬される映画作家のひとり”“20世紀最後の巨匠”とも称されたロバート・アルトマン。2006年11月20日、がんによる合併症のため81歳で惜しくも逝去したが、本作『ナッシュビル』(75年)はカンヌ映画祭パルムドール受賞作『M★A★S★H』(70年)やベルリン金熊賞に輝く『ビッグ・アメリカン』(76年)など、年に1,2本のペースであふれる着想を映画化していった黄金期ともいえる70年代の伝説の作品だ。

舞台はアメリカで最も保守的な町といわれ、カントリー&ウェスタンの聖地でも知られるナッシュビル。ここには歌手として、ミュージシャンとして成功しようという野心を持った男女が全米から集まってくる。映画はオープリーという有名なナッシュビルのフェスティバルに係る24人もの人間ドラマを、フェスティバル期間中の数日間を通して描いてゆく。しかもドラマと並行して政治への問題意識や人種差別、お祭り化した選挙キャンペーン、民衆のエネルギーなど、当時のアメリカ社会の意識のありようが浮かび上がる周到な物語だ。
この映画は、アルトマンの遺作となったラジオ音楽バラエティの舞台裏を描く『今宵、フィッツジェラルド劇場で』(2006年)やジャズの世界を描いた『カンザス・シティ』(96年)に先立つ、アルトマンの音楽ドラマの原点といえるだろう。24人ものオールスター・キャスト、カントリー&ウェスタンという音楽の力、「グランド・ホテル形式」でありながらそれぞれのエピソードがクライマックスへと結実する物語の映像化に成功した驚くべきスタイル、そして選挙の宣伝カーが流すコメントから男女の諍いに至るまで、相変わらずセリフも演出も細やかで乾いた、ブラック・ユーモア満載のアルトマン節……。

『ナッシュビル』は素晴らしい内容でありながら公開当時は今ほど情報化社会ではなかったためか、また2時間40分という上映時間もあって日本では3週間で打ち切りになったといういわくつきの作品だ(劇場公開:1976年4月3日~4月23日/有楽町スバル座ほか1館/動員数:1万7410人/興収:¥18,815,800)。その後、公開される機会もほとんどなく、現在もDVD化されていないため、アルトマン・ファンでさえ目にすることがなかなか難しい、カルト的人気を誇る幻の作品なのである。
自伝によれば『ナッシュビル』製作のきっかけは前作『ボウイ&キーチ』(74年)の予算をユナイテッド・アーチストに出してもらうための引き換え条件だったという。本人はナッシュビルには一度も行ったことがなく、カントリー&ウェスタンに興味を持っていなかったため、脚本家のジョーン・テュークスベリーをナッシュビルに向かわせ、そこで起きた出来事を日記に付けさせた。彼女は『ギャンブラー』(71年)『ボウイ&キーチ』(74年)でも脚本を手がけたアルトマン一家の一人。そのエピソードをつなぎ合わせてドラマを作りあげたそうだ。

『ナッシュビル』2撮影はナッシュビルで10週間にわたって行われた。その間、スタッフ、キャストは全員同じモーテルに泊まり、ほとんどの時間を一緒に過ごすというアルトマンのいつもの撮影スタイルで行われた。同じひとつの映画に携わるスタッフ、キャスト全員が和気あいあいとした中で自然に演技ができる雰囲気を作り上げることによって、個々の俳優たちの自在なアドリブ演技を生む――役者にとってはそれこそがドキュメンタルな、アルトマン映画ならではの面白さ、なのだろう。ギャラに関係なく、アルトマン映画への出演を渇望する所以である。

豪華なキャスト陣はブロードウェイの実力派女優バーバラ・バックスリーや『華麗なるギャツビー』(74年)『エアポート75』(75年)で人気を博したカレン・ブラック、『三銃士』(73年)『四銃士』(74年)で当時注目を集めたジェラルディン・チャップリンをはじめ、『M★A★S★H』や『ギャンブラー』(71年)『ロング・グッドバイ』(73年)などにも顔をみせていたアルトマン一家の俳優というべきキース・キャラダイン、シェリー・デュバル、マイケル・マーフィ、バート・レムゼン、デビッド・アーキン、ティモシー・ブラウン、ヘンリー・ギブソン、ジェフ・ゴールドブラム、グエン・ウェルズ、キーナン・ウィンなどがドラマを支えている。
後に『ザ・フライ』(86年)や『ジュラシック・パーク』(93年)で有名になるジェフ・ゴールドブラムはこれが初めての本格的な映画出演作。また『羊たちの沈黙』(91年)のクラリスの上司役を演じたスコット・グレンや『ブルース・ブラザース』のネオナチのリーダー役で知られるヘンリー・ギブソン、そしてこれが映画デビュー作となったアメリカを代表するコメディエンヌ/リリー・トムリンやハリウッド映画に欠かせないバイ・プレイヤーとして活躍するネッド・ビーティなど、思わぬスター探しも楽しめる。
また『M★A★S★H』で人気を博したエリオット・グールドと『ダーリング』(65年)でアカデミー主演女優賞を獲得したオスカー女優ジュリー・クリスティーもカメオで登場した。

映画の全編を彩るカントリー&ウェスタンの歌のほとんどはカレン・ブラック、キース・キャラダインをはじめとする主演俳優自身が作詞・作曲したもので、サントラ盤も発売され、キース・キャラダインの歌った“I am Easy”はアカデミー最優秀歌曲賞を受賞した。

なお、この映画の主演俳優たちのギャラは一律1000ドル前後だったといわれている。

天国の日々 8月27日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次

監督・脚本/テレンス・マリック 製作統括/ジェイコブ・ブラックマン 製作/バート・シュナイダー、ハロルド・シュナイダー 撮影/ネストル・アルメンドロス 編集/ビリー・ウェバー 音楽/エンニオ・モリコーネ 衣装/パトリシア・ノリス キャスト/リチャード・ギア、ブルック・アダムズ、サム・シェパードほか 1978年/カラー/94分/原題:DAYS OF HEAVEN
(c)1978 Paramount Pictures corporation 『天国の日々』予告編youtube

『天国の日々』寡作でありながら作品を発表するたびに絶賛されるテレンス・マリック監督。この夏公開されるブラッド・ピットとショーン・ペンの共演が話題の最新作『ツリー・オブ・ライフ』も第64回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを獲得した。
73年の初の長編監督作品『バッドランズ』(地獄の逃避行)以来、約40年間に5作品という寡作ぶりや独特の撮影スタイル、ギャラや役柄を問わず出演を熱望する大物俳優が列をなしていること、公の席になかなか出てこないことなどから、生きながらにしてすでに“伝説の監督”と崇拝されている。

『天国の日々』はマリック監督の長編第二作にあたる。第一次大戦さなかのアメリカ中西部を舞台に、季節労働者となって農作物の収穫期に各地をさまよう移民たちの希望と絶望を、繊細な感情の揺れ動きに焦点をあてた演出や、ため息の出るような詩的な映像美とともに描き出している。
78年の公開当時、リチャード・ギアは『アメリカン・ジゴロ』や『愛と青春の旅立ち』で大ブレイクする直前であり、サム・シェパードは本作が本格的な映画デビュー作だった。大スターの出演作でもなく、観客にわかりやすく移民の説明がなされるわけでもない。歴史や宗教、社会的背景は暗黙の了解であって、ただ静かに移りゆく時間の中で予定調和的な悲劇が訪れる物語が地味だとされたのか、当初アメリカでは興行面では成功しなかった。しかし当然のことながら作品を見た批評家はこぞって大絶賛。ニューヨーク映画批評家賞監督賞をはじめ、ナショナル・ボード・オブ・レヴュー最優秀作品賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞撮影賞、同年のアカデミー撮影賞などを受賞(その他衣裳デザイン、音響、音楽各部門でノミネート)。さらにカンヌ国際映画祭監督賞など、数々の映画祭で高い評価を受けている。

そんな名作の誉れ高い作品であったが、日本ではアメリカの興行成績の影響からか、劇場公開されたのは製作から5年たってからだった(劇場公開:1983年5月13日~6月16日/劇場:シネマスクエアとうきゅう/動員数:1万8667人/興収:¥25,014,000)。その評判にもかかわらず、残念ながらヒットにはならなかったが、フランソワ・トリュフォーの映画で知られる撮影監督・故ネストル・アルメンドロスによる自然光をいかした映像の美しさ、人間の営みや移民の悲哀、若者の青春の挫折といった、いくつもの壮大で普遍的なテーマを、自然と共に暮らす人々の日常や細やかな感情表現の積み重ねで浮かび上がらせてゆく作品は名作と呼ぶにふさわしく、一部の熱狂的なファンによって崇拝されることになった。

特にこの作品を特別なものにしているのはため息が出るほど美しい映像だろう。撮影を担当したネストル・アルメンドロスはスペイン生まれのキューバ育ち。父親が作家でフランコ独裁政権から逃れるためにキューバに移り、大学で文学と哲学を学ぶかたわら短編映画を撮っていた。その後、ニューヨーク市立大学やイタリア国立映画実験センターなどで映画を学んだ後、カストロの革命が起こり、カストロに批判的なドキュメンタリー映画に取り組んでいたことがきっかけとなってヌーヴェルバーグが注目されていたフランスへ脱出。エリック・ロメールやトリュフォーの作品の多くを手掛けたという異色の経歴の持ち主だ。『天国の日々』の撮影はアルメンドロスが撮影した『野生の少年』のモノクロ映像に感銘を受けたマリック監督が熱望したものだという。

『天国の日々』マリック監督はアルメンドロスに人工的な光はなるべく使わない方針を伝えたという。時間と機材の手配次第で撮影の多くをその場で決めていく自由度の高いマリック監督のスタイルはいまも変わらない。アルメンドロスはそこで自然光をいかし、フィルターを使わず、画家フェルメールの絵画のように、室内では窓から入り込む光や一つの光源しか使わない方法を用いて、サイレント映画へのオマージュとした。またあの美しい黄金色の麦畑をはじめとする外のシーンは朝焼け、または夕焼けの前後の時間帯(マジックアワー)に撮影し、それ以外の日中は準備に費やされたという。
残念ながらトリュフォー監督の『恋愛日記』のスケジュールがすでに予定されていたため、限られた日数でしか参加できなかったが(残りはハスケル・ウェクスラーが担当/編注:ネストル・アルメンドロスのインタビュー参照のこと)、映画史に残る素晴らしい映像となった。

『天国の日々』という題名は旧約聖書の「申命記」に出てくる言葉からとられたもの。「申命記」はモーゼが約束の地に入るイスラエル人に対して与えた律といわれ、「唯一の神ヤーウェを愛していれば約束の地(天国)に住む日数=天国の日々が多くなる」ことが強調されている。また、全体の構成が「創世記」から借りたもの(ビルとアビーが兄妹と偽るのはアブラハムとサラの関係と同じ)であったり、<小麦の刈り入れ>や<イナゴの来襲>などを映画の重要なシーンとして扱うなど、聖書を想起するエピソードが物語の骨格を成している。

マリック監督は『天国の日々』以後、約20年間、映画制作から遠ざかっていたが、その沈黙を破ったのが太平洋戦争の激戦地となったガダルカナル島の戦いを描いた『シン・レッド・ライン』(98年)だった。この映画では伝説のマリック監督作品の出演を熱望する俳優が殺到し、ショーン・ペンをはじめ、ジョージ・クルーニー、ジョン・キューザック、ウディ・ハレルソン、ニック・ノルティ、ジョン・トラボルタなど、そうそうたる顔ぶれが揃い、ベルリン国際映画祭金熊賞やニューヨーク批評家協会賞監督賞/撮影賞などを獲得、見事な復活を果たした。

長編第4作となる2005年の『ニュー・ワールド』はアメリカ人なら誰でも知っているポカホンタスとジョン・スミスのラブストーリーだったが、この作品に出演したクリストファー・プラマーはテレンス・マリックについて「彼はどこか地方都市の大学教授が何かの拍子にショービジネスの世界に迷い込んでしまったような人物」と評し、そのスタイルについて「映画業界特有のやり方をいっさい拒み、独自のやり方で進めていこうとする。そんなところを尊敬している」と語っている。またクリスチャン・ベールは「マリック監督はとても自然で流動的な撮り方をするんだ。彼は打ち合わせやリハーサルをすることを嫌い、(何も言わず)現場でいきなりはじめようとする。だから、誰もが生まれて初めてそのシーンを演じる形になる。監督はミスや突発的な出来事をわざと求めていた。そういうシーンは嘘がないから。僕はこの撮り方を歓迎している」と語っている。役者にとって演じることそのものに自由度があることが出演を熱望する理由なのかもしれない。
 主演のリチャード・ギアはこの作品に次いで撮影した『ミスター・グッドバーを探して』(77)で人気を博し、『アメリカン・ジゴロ』(80)『愛と青春の旅立ち』(82)でスター俳優の仲間入りを果たした。恋人アビー役を演じたブルック・アダムズ、チャック役のサム・シェパード、妹役のリンダ・マンズもそれぞれ素晴らしい演技で注目を集め、この映画がきっかけとなってキャリアを築いた。また、『真昼の決闘』(52)や『荒野の七人』(60)など、古くから脇役として活躍するロバート・ウィルクが射るような眼差しでビルを威圧するベンソン役で、ベテランならではのいぶし銀の演技を見せつけている。

その他のスタッフに触れておくと、美術のジャック・フィスクは舞台出身で、映画の初仕事はマリック監督の「バッドランズ」(地獄の逃避行)。この作品がきっかけでシシー・スペイセクと結婚。その後『リップスティック』(76)『キャリー』(76)『ブルックリン物語』(78)などを手掛けハリウッドでキャリアを築いた。以後もマリック監督作品には『ツリー・オブ・ライフ』まですべて美術監督として参加。続く最新作も担当する。
制作のバード&ハロルド・シュナイダー兄弟は60年代末にBBSプロダクションを創設して『イージー・ライダー』(69)『ファイブ・イージー・ピーセス』(70)『ラスト・ショー』(71)と立て続けにニューシネマの名作を作り上げた黄金コンビとして有名。兄のバートは近年日本で公開され話題を呼んだ「ハーツ・アンド・マインド/ベトナム戦争の真実」(74)でアカデミー賞最優秀記録映画賞を受賞している。
なお、マリック監督は、今年早くも(!)ベン・アフレック、ハビエル・バルデムなどの出演する次回作(6作目)に取り組んでいる。

2011年8月6日より『ナッシュビル』、8月27日より『天国の日々』
新宿武蔵野館にて連続公開

http://nashville.sky-way.jp/

2011/07/09/16:25 | トラックバック (0)
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