インタビュー
高橋泉監督/『あたしは世界なんかじゃないから』

高橋泉 (映画監督)
映画『あたしは世界なんかじゃないから』について

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第13回東京フィルメックス・コンペティション出品/学生審査員賞受賞

ある復讐のために集められた男たちが、ひとりの女を拉致する。悪意に満ちた不穏な気配に惨劇の予感を抱かせたまま、カメラは登場人物たちのそれぞれの生活でのドラマも映していく。群像劇のパズルのピースがはまっていく快感と、繊細に葛藤する人間の目線から社会的テーマと対峙する独自のスタイルが一層冴える高橋泉監督の新作『あたしは世界なんかじゃないから』は、今年の東京フィルメックスの最重要作の1本となった。見事学生審査員賞を獲得した授賞式直後の高橋監督に、光栄にもお話を伺うことができた。自らの体験に基づく作品のモチーフや映画作りへのこだわり、廣末哲万監督との映像ユニット「群青いろ」での先を見据えた活動に対する思いを力強く、ときに飄然と語ってくださり、映画への情熱と愛情にさらに深い感銘を覚えた。「今」を象徴するような事件を「普遍」に高め、なかなか作品を観る機会が訪れないことへの渇望を訴えると「今公開するのがもったいない」と撮った作品に絶対の自信を窺わせた。「映画を撮りたい」という衝動で錆びない作品を撮り続ける「群青いろ」の活動がますます楽しみになった。(取材:深谷直子
高橋泉 1973年、埼玉県に生まれる。2001年に廣末哲万とともに映像ユニット「群青いろ」を結成。2004年、長編監督デビュー作『ある朝スウプは』がぴあフィルムフェスティバルでグランプリを受賞。同作品はバンクーバー映画祭でドラゴン&タイガー賞を受賞したほか、多くの国際映画祭で上映された。続く『むすんでひらいて』(07)は東京フィルメックス、ベルリン映画祭等で上映され、シネマ・デジタル・ソウル映画祭ではブルー・カメレオン賞を受賞。一方、脚本家としても活躍し、廣末哲万監督作品『14歳』(06)、三木孝浩監督作品『ソラニン』(10) 、白石和彌監督作品『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(10・共同脚本)等の脚本を担当している。廣木隆一監督『100回泣くこと』が、来年公開待機中。
高橋泉監督――『あたしは世界なんかじゃないから』の学生審査員賞受賞おめでとうございます。挑発的なのにグイグイ引き込まれる、テーマ性とエンターテインメント性を兼ね備えた作品で、私は今回のフィルメックスの上映作品の中で格段に面白いと思っていたので、受賞をとても嬉しく思っています。

高橋 ありがとうございます。

――見知らぬ人たちを巻き込んでの進行形の復讐劇がまずあり、登場人物の人生を回想で見せていく群像劇でもあり、ストーリーがとても練られていると思いました。大きなテーマとしては、映画の冒頭でも語られますが、世間を騒がす大きな事件に埋もれている、いじめなどの日の当らない事件を見せたいということですよね。

高橋 そうです。

――Q&Aで、作品を撮るきっかけは監督ご自身の経験に基づくものだと語られていましたね。昔の友人をインターネットで探していたら自分の名前が出てきて、昔のいじめをずっと恨みに思われていたことが書かれているのに驚いた、と。

高橋 はい、でも話の内容が間違って記事にされてしまってるんですけどね。友達を探していたらその友達が僕を恨んでいた、みたいになっちゃってるんですけど、そうじゃなくて、友達の名前を検索していたら、その友達と一緒に僕の名前が2ちゃんねるの“いじめてたヤツの名前を曝すスレ”みたいなのに載ってたんですよ。

――ふたりともいじめる側として。

高橋 そういうふうに取られてた。僕は別に特定の人をいじめた覚えはないけど、まあ申し訳ないなあと思いますよ。でもそれを見たとき僕は30歳で、中学生からだと15年も経っているのに、まだ恨んでいたということに驚いてしまって。

――そんなに長い間抱えているんですね。

高橋 モチーフはそこです。でも別にいじめの問題とかを描こうとは思ってない。

――もっと大きな、人間関係の難しさや孤独に悩む今の社会の問題ということですか?

高橋 まあ「今」ということじゃないと思いますけどね。ずっと普遍的にあるものじゃないかな。昔から人と人ってそんなに向き合い切れていないと思います。

――群青いろでずっと描いてきていることですよね。どんなに近くにいても届かない苦しさというのは。

高橋 ええ、もしかしたらテーマってずっと変わらないのかもしれないな。

――脚本はどれぐらいかけて書かれたんですか?

高橋 どれぐらいかけたかなあ。最初はまったく別の物語を書いていて、別と言ってもモチーフは一緒なんですけど、完全にいじめる側といじめられる側の関係性だけでずっと1本通すものを書いていて、それに違うところから集まってきた3組が加わって。

――演劇をしている人とDVの夫婦、そしてちょっと微妙な関係の恋人同士という3組ですね。それぞれ同性愛とかDVとか重いものを背負っていて、想いが上手く伝えられない人の姿にとても苦しい気持ちになりましたが、そういういろいろな人間関係を否定はしていないですよね。掬い取って見せようという思いが感じられたんですが。

『あたしは世界なんかじゃないから』場面1 『あたしは世界なんかじゃないから』場面2高橋 まあそこまでのことはできないとは思うんですけどね。でも痛みだけを描くのはすごく簡単なんですけど、そうではないところまで描いてあげないと扱った意味がないと思うので。

――クライマックスでもいじめられたほうの辛さも描きながら、いじめたほうにもそれなりの思いがあってやっていたことだという、公平さがありますよね。

高橋 完全にただいじめていたということにしてしまうといじめの映画になってしまうので。いじめる側にも動機や理由があって、お互いそれを伝えることができないことに問題があると思うんです。ラストでギターを弾く女の子が言う「かかってきなさい」というセリフを、最初に考えたモチーフである僕がいじめていたことを掲示板に書き込んでいた人への、いや実際はいじめてはいないんだけど(苦笑)、答えとして書きました。

――心の中で思っていないでぶつけてほしいということですよね。

高橋 まさか今でも恨んでるとは思わなかったから。

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あたしは世界なんかじゃないから 日本 / 2012 / 112分 / HD / カラー / 1:1.85
監督:高橋泉
製作:群青いろ 制作協力:カズモ
脚本:高橋泉 撮影:高橋泉 照明:廣末哲万 録音:ブジさん、川井武、中原潤也
整音:浦田和治 編集:高橋泉 音響効果:中村翼 音楽:Buji
出演:廣末哲万、新恵みどり、並木愛枝、高根沢光、結、カラトユカリ、礒部泰宏、中村倫子
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第13回東京フィルメックス・コンペティション出品/学生審査員賞受賞

2013/01/11/16:41 | BBS | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー
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