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『さよなら渓谷』第35回モスクワ国際映画祭
《審査員特別賞》受賞会見レポート

『さよなら渓谷』第35回モスクワ国際映画祭《審査員特別賞》受賞会見レポート http://sayonarakeikoku.com/

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現在公開中の『さよなら渓谷』が、先月29日に閉幕したモスクワ国際映画祭・コンペティション部門において審査員特別賞を受賞し、7月2日、現地からトロフィーを携えて帰国した大森立嗣監督と主演の真木よう子さん、大西信満さんによる凱旋記者会見が行われた。(取材:深谷直子)

審査員特別賞は作品に与えられる賞としては最優秀作品賞に次ぐものであり、日本の作品の受賞は1965年の『手をつなぐ子等』(監督:羽仁進)以来48年ぶりの快挙となる。栄えある姿を報じようと詰めかけた大勢の報道陣に圧倒された様子の大森監督は、帰国後の第一声を求められ、「賞を獲ると、こんなにいっぱい集まっていただけるんだなと、そういう感じです。よかったなという感じです」と語った。

第35回モスクワ国際映画祭レッド・カーペット公式上映は1800人を収容する会場で行われ、日本にはそんなに大きな劇場はないので「迫力がすごかった」と大西さん。上映後の反応は上々で、日本にも観客の「今回のベスト3に入る」といった声が伝えられたが、翌日レッド・カーペットに登場するとサイン攻めに遭う一幕もあったそう。ここでも大西さんが「みなさんプレスシートなどを差し出してきて、サインを頼まれたりしましたね。でも言っていることはちょっと……。ロシア語なのでよく分からなかったです」と残念がりながら語った。また、レッド・カーペットを歩いたときの気分を、『そして父になる』(監督:是枝裕和)で参加したカンヌ国際映画祭に引き続きの体験となった真木さんは「やはり映画祭に来たという華々しい空気を味わいました。全然相談なしに衣装を決めたら3人とも黒だったので、カッコよくていいね、なんて話しながら」と、リラックスしてご褒美の場を満喫したことを語った。

授賞式では、発表の前から席やカメラの向きで真木さんと大西さんが何となく予感を覚え、「もしかしたら賞を獲るんじゃないか……?」とささやき合っていたそう。大森監督は緊張したのかトイレに立ったところそのまま締め出されてしまい、「ロシア人はそういうの絶対だから入れてくれなくて、もういいや、って思っていたんだけど、一緒に行ったプロデューサーたちは直前に受賞を知らされていたんですよね。会場の中でも焦っていたようで無線で連絡を取って入れてもらえました。発表の瞬間は……、ロシア語で分からなかったんだけど『Japanese~』という言葉で気付いて、びっくりしましたね。みんなで顔を見合わせて……、真木さんと抱き合えばよかったなあ(笑)」と臨場感たっぷりに受賞の様子を振り返った。 受賞の喜びを誰に真っ先に伝えたか?との質問に、真木さんは「お母さんに電話しました。ずっと応援してくれていたんです。日本時間の夜中だったんですけど、すぐに出てくれて泣きながら喜んでくれて、すごく嬉しかったです」と微笑んだ。大森監督は「僕は一応弟(出演もしている大森南朋さん)にメールを送ったんだけどどうやら寝てたみたいで。数時間経ってから『やったね』とかいう返事が」と笑い飛ばしていた。また、初日舞台挨拶に、熱望していた映画祭出品を喜ぶ手紙を寄せていた原作者の吉田修一さんからも現地に電話が入り、監督は直接はお話できなかったそうだが「すごく喜んでくれたそうです。『これは銀賞だから!』と派手に言っていたらしいです(笑)」と人気作家の人情家な一面を明かしてくれた。 一方、真木さんは授賞式での涙について訊かれ、「言いたくないなあ……」と恥ずかしそうに渋りながらも「初日舞台挨拶で吉田修一さんからサプライズでお手紙をいただいたとき、とても泣きそうだったんですけど我慢したんです。まだ何も結果が出ていなかったから。でも実はその手紙を私がいただいていて、夜中に一人で読んで泣いていました。モスクワ映画祭で作品の賞をいただいたときに、やっとこれで涙が流せると思って……」と、映画の原点である原作者の吉田さんからの手紙に溢れ出た思いを語った。

第35回モスクワ国際映画祭レッド・カーペット現地で受けた質問や評価について、真木さんは「外国だからと言ってものすごく違う質問はありませんでした。ひとつ演技の技術についての質問があって、それは今まで受けたことがないものでしたけど。みんなすごく褒めてくれましたね。繊細な心理描写を描いた映画なので、理解されるかどうかという不安はあったんですが、こういう賞をいただいたということは国境を越えてみんな同じように感じ取ってくれたんだなあと、そういう喜びを感じました」と語った。大森監督も、「モスクワでは時間もなく言葉も分からないので感想を聞ける機会はあまりなかったんですよね。ただ映画祭のディレクターとか審査員の方々と話す機会はあり、まず授賞理由が『人間関係の深い洞察がなされている』ということだと言われて、それは役者が作り出したものなので、役者に対する評価だと僕は理解しました。映画祭のディレクターが『授賞式のステージにはシステムの関係で一人しか上がれなかったけど、本当は3人で上がってほしかった』ということを言っていて、この3人で行けてよかったなっていうことを思いましたね。あとは先ほども出たように真木さんが『あの演技はどういうアプローチをしているんですか?』という質問を受けたのですが、ロシアという国は、僕も向こうで演劇を観賞したんですけど、(コンスタンチン・)スタニスラフスキーという演劇人がいて、演技というものに対して非常に長けている国だと思うので、そういうところで俳優が認められたというのはとても嬉しいです」と俳優重視の監督らしい喜びを述べた。

今回の受賞を機に、今後どのような活動をしていきたいか、との質問には、大森監督は「僕は『作品性』とともに、なるべく多くの人に観てもらえる『商品性』を目指せる手法の映画で育ってきたところがあります。それを今の日本でこういう中規模の作品で出すのはすごく難しいんですが、これからもがんばっていきたいなと思いますね」と意気込んだ。
真木さんは「この間行ったカンヌ国際映画祭が私にとって初めての映画祭だったんですね。そこでも賞をいただけましたし、今回モスクワで自分がとても大切にしている主演の映画で賞をいただきましたが、これは決して当たり前のことではないです。『おごるなよ』と自分に言い聞かせつつ、すごく光栄なことだし名誉なことだし、自分がこれから仕事をしていく上での自信をすごくもらいました。より一層気を引き締めてきっとこれからの現場には行けるだろうなと、すごく感じていますね」と真摯な表情を見せた。
大森立嗣監督
大森立嗣監督 真木よう子
真木よう子 大西信満
大西信満
大西さんは「この作品に関しては企画段階から関わって、俳優が自分からやっていくということも、こういう間口の狭いシリアスな題材をやるということも難しい状況の中で、自分たちの意気込みを粋に感じて賭けてくれた製作サイドの思いも背負いながら現場に臨んでいました。モスクワで賞をいただけたことで、そういう方たちに義理を果たせたな、とホッとしています。また、真木さんを主演に迎えていただいて、短い期間でしたがともに雑念なく純粋に現場を過ごすことができて、あらためて芝居というのは相手役からいろんなものをもらって生きるということなのだと分かった作品なので。いろんな意味で大きな作品だし、次にも活かしていきたいなと思います」と、映画との長い道のりを感謝を込めて振り返り語った。

最後に、まだ公開間もない映画をこれから観るお客様へのメッセージが伝えられた。真木さんは「映画祭で作品賞をいただけたということは本当に誇らしいことですし、これは自慢していいことだと思うので、みなさん、観なければ損です(笑)! ぜひ劇場に足を運んでください」と自信たっぷりに宣伝。また、物語のスキャンダラスな側面が注目されることをずっと心配していたという大西さんは「海外の映画祭で人間ドラマとして評価してもらえて、日本にもちゃんとそれが伝わり、そういうふうに観てもらえるきっかけになったと思うので、いろんな層のお客さんに劇場に来てもらえたらいいなと思います」と大切な作品の追い風となることを祈った。大森監督は「なかなかとっつきにくい映画ではあるかもしれないけど、観たら何かが心に残ります。そして10年経っても20年経っても残るような映画を作りたいと思って作った作品なので、ぜひ観に来てください。よろしくお願いします」と作品への愛情を語って会見を締めくくった。

(2013年7月2日 赤坂ツインタワーで 取材:深谷直子)

さよなら渓谷 2013年/日本/カラー/ビスタサイズ/117分/R-15
監督:大森立嗣 原作:吉田修一『さよなら渓谷』(新潮文庫刊)
出演:真木よう子,大西信満,鈴木杏,井浦新,新井浩文,鶴田真由,大森南朋
配給:ファントム・フィルム ©2013「さよなら渓谷」製作委員会
http://sayonarakeikoku.com/

有楽町スバル座、新宿武蔵野館ほか全国絶賛上映中!

2013/07/04/23:34 | トラックバック (0)
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