インタビュー
安部智凛/『華魂』

安部 智凛 (女優)
映画『華魂』について

公式

2014年1月18日(土)より、新宿K's cinemaにてレイトショー他全国順次公開

いじめ、体罰、そしてレイプ。映画『華魂』は社会の縮図のような学校という密室に渦巻く暴力を、その鬱屈がついに爆発したときに訪れる真の恐怖を、エロスと狂気の巨匠・佐藤寿保監督が世界観を炸裂させて描いた異色の学園ドラマだ。桜木梨奈、島村舞花という若い女優の体当たり演技にも惜しみない拍手を贈るが、子どもたちの戦場で嬉々と悪ふざけするような飯島大介や諏訪太郎ら名バイプレイヤーの変態演技にも大人の異常さを見て震撼した。そして子どもと大人のどちらからも浮くような潔癖症の若い女教師がタガを外す、そのときが惨劇の予兆だったのかもしれない……。そんなドラマの鍵とも言える西沢役を演じたのは、故・若松孝二監督作品の常連であり、このところ活躍めざましい安部智凛さん。とてもお話を聞いてみたい方だったのだが、低いトーンでマシンガンのように若松監督やそれに負けず劣らずの佐藤監督への敬愛、『華魂』のこと、ご自身の哲学までを、笑いと情と毒もたっぷりに繰り出してきて、演じることの多い一途なキャラクターそのままのようなお人柄にますます魅了された。ショーモデル出身でストイックさと繊細さも持ちながら、ギラギラした強烈な作り手たちと映画の世界に生きる安部智凛さんの魅力、そしてこんな異能が集結した映画『華魂』が、ぜひ多くの方に届くことを願ってやまない。(取材:深谷直子)
安部 智凛 (あべ ともり) 1982年9月21日生まれ、東京都出身。映画を中心に活動する。代表作に『フラガール』(06/監督:李相日)、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(07/監督:若松孝二)、『極道兵器』(10/監督:山口雄大・坂口拓)、『千年の愉楽』(12/監督:若松孝二)、『女たちの都 ワッゲンオッゲン』(12/監督:祷映)。公開待機作に『Snowchild』(11/監督:Uta Arning)がある。ドラマでは「平清盛」(12/NHK)、「梅ちゃん先生」(12/NHK)、「実験刑事トトリ2」(13/NHK)、「かなたの子」(13/監督:大森立嗣・WOWOW)に出演。ポルノグラフィティ「東京ディスティニー」PVのヒロインとしても出演。
安部智凛――『華魂』は高校を舞台にしたいじめを描き、表現の容赦のなさに圧倒されながら引き込まれてしまうパワフルな作品でした。主人公の少女たちはクラスメイトばかりではなく教師や親からもひどい仕打ちを受けて、安部さんもそんな悪い大人のひとり、西沢という女教師役で強烈な演技を見せていますが、出演のきっかけはどのようなものだったのですか?

安部 (佐藤)寿保監督とは5年前にワークショップを受けてからの付き合いがあって、こういう映画をやるという情報をお聞きしてぜひ私も出たいと思い、台本を読ませていただいたんです。その中で私の年齢的にできるのは西沢役しか見当たらなかったということもありますが、「西沢 よだれを垂らしながら男子生徒の上にまたがり『ちんぽ最高!』と叫ぶ」とか書かれているのを読んだときに「すごいな、この役絶対にやりたいな」と思って。自分と真逆だからこそやれたらすごいなあと思って。

――ではこういう映画があると知っていて安部さんのほうから手を挙げたんですね。

安部 はい。ただ、「Fカップ」と書かれていたし、自分のイメージとはまったく違うので、もし寿保監督が「安部ちゃんじゃない」っておっしゃるのであれば監督の納得のいくキャスティングをしていただきたかったので、無理に「出たいんです」と言うつもりは全然なかったんです。でも別にそれでいい、私で行こうということになって。「その代りFカップでなければダメだから」とは言われて、このために豊胸手術はしたくないので、すぐにFカップのブラジャーを買ってきてパットを詰めまくり……、という感じでしたね。

――大人の役者さんは個性派ばかりで当て書きのように思えるので、安部さんもそうなのかと思っていました。安部さんもご自分ではイメージではないとおっしゃいますが、細身でメガネをかけて、という女教師の定番的イメージにぴったりで。

安部 ありがとうございます。高校生役はオーディションですが、それ以外の俳優さんはオーディションではないんじゃないかと思いますね。詳しくは分かりませんけど。でも私としては、やっぱり普段の自分と似たような役ばかりだと、やりやすいかもしれないけど役者としてはよくないと思うので、違うからこそやりがいがあると感じてやりたいと思いました。撮影が若松(孝二)監督の『千年の愉楽』(12)の1年後だったので、性的にすごい役が連続してしまうな、とは思いましたけど、そこに喜びもありましたし、絶対またやりたいと思いましたね。

――佐藤監督に5年前に出会われたときの印象はどんなものだったんですか?

『華魂』安部 寿保監督のワークショップを受けることにしていちばん最初にお会いしたときは、あんな残虐な作品を撮るので気難しい人を想像していたら実際は優しくてフレンドリーなので、そこにギャップがありました。そのワークショップは女性が3人しか受けていなかったんですが、受講生に対して律義というか、よく見てくださるんですよ。一度会った俳優のことは多分覚えますね。映画を観に行っても「あの女優はいいな」とか、無名の発掘でもないけどかなり見ています。繊細で観察力の鋭い方ですよね。とても純粋な人なんだなあという信頼感がまずありましたね。

――いい方ですね。作品を観てもそんな気がしますね。弱い立場の人をちゃんと見ているというか、他人を理解しようとする方なんだろうなあと思います。

安部 現場では怖いですけどね。普段は優しいんですけど。あと、飲むと熱くなってしまうから近付かない方がいいかな、みたいな感じなんですけど(笑)。

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華魂 2013年/日本/カラー/HD/106分
監督・原案:佐藤寿保 プロデューサー:小林良二 協力プロデューサー:矢島仁
脚本:いまおかしんじ 撮影:芦澤明子 照明:御木茂則 音楽:大友良英
編集:橋口卓明 録音:西山秀明 特殊造形:鶴岡瑛子 助監督:岡元太
出演:桜木梨奈,島村舞花,浅田駿,中村映里子,伊藤マサヨ,丸山明絵,近藤ゆき,泊帝,飯島大介,今泉浩一,安部智凛,諏訪太朗,不二稿京
共同研究:東京工芸大学 制作・配給:渋谷プロダクション © 華魂プロジェクト
公式

2014年1月18日(土)より、
新宿K's cinemaにてレイトショー他全国順次公開

2014/01/14/19:51 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー
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