早熟のアイオワ

ロサンゼルス映画祭 優秀演技賞受賞(ジェニファー・ローレンス)

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2014年2月22日(土)より、新宿シネマカリテほか全国順次公開

インタビュー

*WEB「collider.com」掲載 米公開(2009年7月19日)直前の
ジェニファー・ローレンス&ロリ・ペティ監督 インタビュー 2/2

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――なにがきっかけで、この話をしようと思った?

『早熟のアイオワ』場面5ロリ この話は私の人生の中で一度もしたことがなかったの。でも女性にもっと声を上げるように、勇気づけることはとても大事なことだと思うわ。どこぞの男がスーパーヒーローだとか、そういう話ではないものをね。アナザーボイスだと思って聞くべきだと思うの。ここには4人の女性がいて、その大多数が20歳になる前に性的虐待を受けたことがあるって賭けてもいいわ。それは女性の人生にとってほんの一部のことかもしれないけど、それが事実なのよ。私は彼女たちがその事実を共有することが重要だと思っているの。ありえないことが起こったこと、そして男たちはそういう態度を改めないこと。気持ち悪い男にどんなことをされたとしても、それで自分が悪い人になるなんてことは絶対にないわ。本当は素晴らしい人で、ただ馬鹿で気持ち悪い男になにかされただけ。だから、事実を自分の中だけに閉じ込めておくのは良くないことなの。映画祭での試写を終えるたびに、50~150人くらいの女性が、私の前に列を作って、「ロリ、ありがとう」、「私にも同じことがあったわ」って、みんなが自分は7歳だったとか、10歳だったとか、12歳だった、11歳だったって言ってきたの。なんだか急に自分が聖職者になった気分でそこに立っていたわ。「私は一体いつ勲章を得たのかしら?」って思ったくらい。みんな次から次へと私のもとへ来て、それがすごくうれしかったわ。彼女たちには訴える声がなかったのよ。

――昨年(2008年)のロサンゼルス映画祭では、試写の後にすごい人だかりに囲まれたそうですね。

ロリ ええ、試写会場から出られなかったくらいね。私はただ立ち止まって、観客の話を聞いたり、ハグされたりしていたわ。でも私はただまだ幼い3人の子供たちが、お互いを愛し合って助け合って苦難を乗り越えたという話をしただけなの。

――監督はただ真実を伝えて、その真実が観客の心に振れたと。

ロリ その通りよ。真実だし、映画は真実であることを証明しているわ。

――監督の人生の中で起きた悲劇を、自身で受け入れるまでにはどれくらいの時間がかかった?

『早熟のアイオワ』場面6ロリ でも私が生まれたときからの話なのよ。生まれたそのときから苦しめられたわけではないし、私はただすごく若いときに世界がどういうものなのかを知ったの。私の父親は熱心な聖職者だったんだけど、私は「そんなの全部嘘だわ。じゃあ太陽を崇拝している中国人たちはどうなの?」と思っていたの。中国かどうかは定かではなかったけど、「どうしてイエスが唯一の手段になるの?ブッダという名前の人のことも聞いたことがあるし、ほとんどの人はイスラム教なのよ。みんな地獄に落ちるの?私以外?」って。でも父は「黙って学校に行け」って言うのよ。小さいときから他人にレールを敷かれるものなのね。忘れられないことがあるの。すごく面白かったわ。4歳のときの話なんだけど、一生忘れられない。すごく暑い日で、サッカーをして遊んでいたんだけど、男の子たちがみんなシャツを脱いだの。それで私もシャツを脱いだんだけど、そしたら近所の人が私の母親を呼んできたのよ。母は慌てて私のところに来て、「早く家に入りなさい」、「シャツは脱いではダメよ」って。私が「なんで?」って尋ねると、「あなたは女の子なんだから」って母が答えたの。私は「それは答えになってないわ」って言ったの。だって本当にそう思ったのよ。だからまた服を脱いだら、家の中に連れ込まれて、父親にも怒られたの。私は不機嫌になって、庭に出て服を脱いで、突っ立ってやったわ。まだ4歳だったのよ。このとき、人はときに力づくで物事を動かすってことを知ったわ。今は胸を出して歩き回ったりはしないけど、でもそれはあまりの美しさにみんなが見とれて自動車事故を起こしたら困るからよ。

――優秀な女性監督と、女優として仕事をしてきているけど、本作を撮るのにそれらの経験を生かしたりした?

ロリ いいえ、だって優しさなんていらないもの。監督というのは優しくては務まらないのよ。私はね、男が好きなの。意地悪で言うつもりはないんだけど、男という生き物は人の話を聞いていないのよね。私には夫がいないから、本当に正しいかはわからないけど、でもこんなにも話を聞いていない生き物だなんて思わなかったわ。私が話している途中でも、立ち去ってしまうのよ。私が「ちょっとこっちに来て」と助監督を呼んで、「チャールズ、彼にこっちに来るよう伝えて」と言うと、彼は「わかった」って言うんだけど、「まだ話は終わってないわ」と言うと、「そうなの?」って。私の言うことに集中出来ないのよ。私には理解できなかったわ。でも一度あまりにも話を聞いていない男に頭が来て、その人の頭からワインをぶちまけたことがあって、そのときに「そっか、話を聞いてもらえないと人は人を殺したくなるのね!」って思ったのよ。撮影中も、「カメラを動かさないで。ちゃんと固定してよ、モニターを見てるんだから」って言っていたの。だってフィルムがそんなになかったからカット出来なかったし、時間もないし、誰か殺しそうな勢いだったわ。『早熟のアイオワ』場面3カメラを動かしたスタッフに「なにしてるの?なんでこんなことをするの?」って言ったの。撮影している対象が男だったら、彼は絶対そんなことはしないと思ったのよ。そしたら彼は「だって彼女はなにもしゃべっていないから」って言うのよ。だから私は、「私は彼女が聞いている姿を見たいのよ。馬鹿みたいに喋っている男より、誰かの話を聞いている彼女を見ている方が美しいと思うでしょ」って言ったの。そしたら彼は「わかった、ごめん」って。このときは本当に殺意を抱いたわ。頭がおかしくなりそうだった。こう言うと私が男勝りに聞こえるでしょうけど、実際はまったく違うのよ。男たちにバスケットボールを与えてはダメね。車も銃も与えるべきじゃないわ。撮影中にバスケットボールをしていたんだけど、男たちはみんな、「どういう風にプレイするか教えてあげるよ」っていう感じだったの。私は「私は、奨学金をもらってプレイしていたほどバスケットボールをしていたのよ。私は男でもないし、アーティストなの。だからバスケはしないわ」って言って、結局バスケをしなかったの。さらに、「私はバスケが出来るけど、それは関係ないわ。私は監督なのよ。たとえ私がバスケが出来なかったとしても、関係ない。あなたたちは私の言うことを聞かなければならないのよ」って言ってやったわ。でも結局みんなバスケに夢中になっちゃって、プロデューサーのピーターに拡声器を渡してやったわ。私は角に座って、ギネスを飲んでいたわよ。そのときはすごい人だかりで、私が何を言おうと聞きもしないんだもの。もう勝手にすれば、って感じだったわ。私は何が必要で、どれくらいの時間しか与えられていないか分かっていたのよ。

――ドラマティックで強烈なシーンが多い中で、ジェニファーがバスケットボールをしているシーンは楽しそうに見えたけど?

ロリ 全然楽しんでなかったわよ。バスケをするのを、すごく嫌がっていたんだから。

ジェニファー みんな私のことをからかうのよ。みんな「アスリートなんだろ、ジェニファーは本物のアスリートだ」って言ってからかうの。ロリは「全然ダメね」って。

――じゃあアグネスのバスケのシーンは、ムービーマジックですね。

ジェニファー 絶対ムービーマジックね。去年の舞台挨拶の時、白状したの。みんなに私はバスケは出来ないって。そうしたら、ロリが「本当に下手ね、スタントが必要だわ」って。

『早熟のアイオワ』場面8 ロリ だって本当に下手だったのよ。

ジェニファー わかってるわよ!ごめんって。

ロリ でもジェニファーは女優なのよ。優秀な女優ね。だからバスケのシーンは気にならなかったわ。

ジェニファー 観客席にいたエキストラの人たちが、私がコートを走りまわっているのを見て驚いていたのよ。私が遠くからシュートを打ったりすると、「彼女は本当に自分がバスケが出来ると 思い込んでいるわ」って思ったみたい。自分が何をしているのかわかっているように演技をしなくてはいけなかったから、見ていた人たちはみんな「彼女は本当に自分が上手いと思っているみたい」って。

――ジェニファー、ロリから学んだことで一番ためになったことはなに?

ジェニファー うーん、そうね。いくつかあるわ。私が今まで聞いた中で、彼女の座右の銘が一番好きなの。映画の中の倫理観とも言えるわ。「あなたに起こることが、必ずしもあなたの心に起こることではない」。みんな彼女が映画やスタッフすべてのことを、どれだけ考えているか知っているから、彼女が寝ているところを誰も邪魔をしないの。彼女は寝る前に、「あのヘアメイクにあの髪型は最悪だったと言えば良かった」とか「マドンナの最低な話を聞いてほしかった」とかそういう愚痴っぽいことは一切言わないの。みんなすべてを分かっていたわ。ロリからはいつも正直な気持ちが聞けたの。たくさんのことをロリから学んだわ。

ロリ あとコンドームはいつもつけるようにね。覚えてる?

ジェニファー 覚えてるわ。それで「なにそれ?」って(笑)。

――バスケのシーンが楽しくなかったなら、最後に他の女の子2人と歌を歌うシーンはどうだった?

ジェニファー あれも最悪だったわ。だって私は世界一歌が下手なのよ。

ロリ ジェニファーはバスケも出来ないし――。

『早熟のアイオワ』場面9ジェニファー 歌も歌えないの。あの歌を書いてくれた人がいて、私はただ大声で歌えば良かっただけまだマシね。

ロリ でも彼女は才能があって美しいの。本当に才能があるのよ。

ジェニファー 車の中で撮影しているときは最高だったんだけどね。

ロリ 実際良かったわよ。

ジェニファー 歌って撮影して…本当のことを言うわ。撮影を全部終えたあとに、アフレコ現場に行って自分の声を聞いて、「ロリ、お願い、これは使わないわよね?」って。だってすごく耳障りで。とにかくひどかったの、撮影しているときは楽しかったんだけどね。

ロリ でもジェニファーは「歌うのは大好きだけど、すごく下手なの」って言っていたのが好きだったわ。「大好きなら最高よ」って。本当に良かったわよ。3人の子どもがラジオに向かって歌っているように聞こえていたわ。心地良かった。

――観客にはこの映画を観て、なにを感じて欲しい?

ロリ 観客には、みんなが持っているお互いへの共感性と思いやりを、映画の中に感じて欲しいわ。あとは、自分が出来ることを本当に頑張っている人への許し。あなたはその人がなにを乗り越えてきたのか、どこから来たのか、家に帰って何が起きているのか、なにも知らないということを覚えておいて。自分がされたら嬉しいように人に接すること、そして、生きていること、ただここにいることに感謝すること。ここ2か月で感謝すべき人たちを大勢失ったわ。でも恐れないで、過去に囚われて今を失ってはダメよ。

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C R E D I T

監督・脚本:ロリ・ペティ 「ハートブルー」「クリスマス黙示録」※ともに出演
脚本:デヴィッド・アラン・グリア
製作:スティーヴン・J・キャネル「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」,
マイケル・ドゥベルコ「THE THING ザ・シング」
撮影:ケン・セング「ステップ・アップ3」「REC:レック ザ・クアランティン
出演:ジェニファー・ローレンス「世界にひとつのプレイブック」「ハンガー・ゲーム」,
クロエ・グレース・モレッツ「キック・アス」「ダーク・シャドウ」「モールス」,
セルマ・ブレア「ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー」「ザ・フォッグ」,
ボキーム・ウッドバイン「デビル」「Ray/レイ
アメリカ/2008年/英語/93分/原題: THE POKER HOUSE/R-15+
© The Poker House LLC 2009 配給:アット エンタテインメント
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2014年2月22日(土)より、新宿シネマカリテほか全国順次公開

2014/02/08/13:00 | トラックバック (0)
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