――『山猫』やフェリーニの『道』、『青い体験』などをBD化してきたイマジカTVとしては、ソフトの数よりもひとつひとつのタイトルのクオリティを重視してリリースをしているように感じられますが。

個人的に好きな作品も出したい作品はいっぱいありますが、会社としてはペイする見込みがないものは出せませんし、売上の見込みがあってもブルーレイで出すに相応しい良いマスターがないとこれも出しにくい。その両方の条件を満たすものとなると、年に4作品くらいしか出せないのが現状です。SNSが発達してみんなが情報交換し、何かを買う前には通販サイトのコメント欄をチェックする、というような時代ですから、良くないものを出したら、すぐに悪評が広まって、その商品の生命は絶たれてしまう。だからちゃんとしたもの以外はもう出せない時代、嘘のつけない時代になってしまいました。それは悪いことではありません。

――イマジカBSではブルーレイのマスターを放送にも使用していますが、そのことでソフトの買い控えにつながってしまう恐れもあるかと思いますが、どのようにお考えでしょう？

確かに若干の影響はあるでしょう。でも買う人は買ってくれると思っています。人それぞれのライフスタイルがあって、オンエアを録画して楽しむ人もいるし、パッケージソフトを買って手元に残したいという人も別にいるんだと考えます。もちろん両方だという人もいます。僕はインターネットでの映画配信の仕事もやっているんですけど、今はそれらで映画を楽しんでいる人もいる。GYAO!の無料の中からしか観ない、という人もいれば、iTunesやAmazonでタイトルごとにお金払ってレンタルする人、完全にダウンロードする人……映画の楽しみ方が随分と幅広くなってきました。ブルーレイを買って楽しみたい、という人はブルーレイそのものが好きだし、買うとか、それを部屋の棚に並べるとか、そういう行為全部をひっくるめて好きなんですよね。

――日本の映画ソフト産業はかなり厳しい状態にはある？

昔のようではなくなったのは確かです。3年くらい前は、僕はパッケージ・ソフトはもっと早く廃れるんじゃないかと恐れてました。ネット配信に世の中がドーッと流れていくんじゃないかと思っていたんですが、そうはなってない。しかしブルーレイやDVDが昔ほど売れてないのは確かだし、その減った分を配信の売上がカバーしてくれてるかというとそうでもない。景気も悪いし、携帯の通信料もバカにならないし（笑）、お金を使う先が別のところに行ってしまってるのかもしれない。

だけど僕はブルーレイって好きで、家庭で味わう映画ソフトとしては現状、最高のものであることは間違いないんですよ。それに、ブルーレイがある程度普及したことで、権利元もそろそろマスターをちゃんと制作しないといけない、とかフィルムをきちんとデジタルでアーカイヴしないといけないなという覚悟が出来て、以前のDVDだと画質・音質の酷かった作品も、ブルーレイでは格段に良くなっているものが沢山あります。映画監督のステイーヴン・ソダーバーグが、「自分はあらゆる種類のフィルムで『2001年宇宙の旅』を観てきたけれども、ブルーレイをPioneerのプラズマモニターKUROで観るほど良くはなかった」って言っている。まあ、彼はかなりの変わり者だけど（笑）、そんなレベルのものがたかだか数千円で自分のものになるって、けっこう凄いことだと思うんです。ブルーレイ、出始めてしばらくしてもなかなか売れないからってすぐに安くしちゃったでしょう？　あれは良くなかったと思う。良いものにはそれなりの値付けが必要です。2枚で3,000円だったら1枚1,500円、大人が映画館で1本観るより安いわけじゃないですか。それはやっぱりどうなんだろうな、と。当然制作、製造コストを下げないといけないからパッケージも貧相になる。映画という文化へのリスペクトも下がっていく。自分で首を絞めてるようなところがありますね。とは言え、僕だって好きな映画が1,500円で売ってたらそれはそれで買っちゃうわけですけどね（笑）。