インタビュー
岩井俊二監督/『リップヴァンウィンクルの花嫁』

岩井 俊二 (監督)
映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』について【2/8】

2016年3月26日(土)より全国公開中

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:わたなべりんたろう)

『リップヴァンウィンクルの花嫁』――「ロックの会」の2次会で岩井さんと映画話しをする機会があるとそういう話になりますよね。『THX1138』『インターステラー』『コンタクト』などSF映画の話をした時もジャンルとしてのストーリー展開での良し悪しでした。

岩井 SFではないけど例えば『スラムドッグ$ミリオネア』は冒頭で暴行を受けているシーンから始まる。ショッキングなシーンから始めたいということなんだろうけど、冒頭のシーンはその作品の入口なので、どんなシーンから始めても結局その映画の全てが含まれているシーンだし、そうなってしまうというか。それは観客が勝手にそうしてしまう。全ての映画文法って結局、観客の脳の中で行われていることで僕ら作り手じゃないんですよね。

――観客はこういうストーリーになるんじゃないかと展開を読もうとしたりします。今まで見た映画やテレビ、本などからリファレンスして。

岩井 それだけではなくて深層心理で、これはこういうものであるって勝手にどんどん定義していってしまう。だから映画を観た時に最初のシーンが出てきて「これはこういう映画だ」と思ってしまう。「いやいや、まだ本題に入っていないんだけど」って作り手は思うんだけど、でも観客は先に「こういう映画だ」と思ってしまうから。先の『スラムドッグ$ミリオネア』の暴行シーンは中盤の後半ぐらいにもう1回出てきて「このシーンだったのか」と分かる流れになっている。その時点でこれが重要な話しだったんじゃないのかと観客が勝手に思っているので、それがさほど重要なシーンでないと分かると失速してしまうんですよね。これは長年映像をやっていて、いかんともしがたかったことで自分はいろいろな始め方をしたかったんだけど、やっぱりそういう始め方をすると物語の展開において必ずエラーが発生するという。「その正体は何なのか?」とさんざん悩んで自分なりに出た答えが、それはお客さんが勝手に自分の脳内で情報処理をしてしまうというところがどうもあるみたいだと。

――今作は予想がつかない映画だと思います。原作を読まないで映画を観ましたが予想外のほうに話がどんどん展開していって、そこがとてもスリリングで心躍りながら観て行くことになり3時間を感じず体感時間が80分程度に感じる。だからこそ2回目見た時に発見が多くありました。

岩井 自分の中の監督の生理としてはお客さんのことはあまり考えているわけではなくて、お客さんとの格闘はありつつ最終的に自分が作って楽しいかだったりするので。そうすると作り方がどうなるかというと観た人の初見時はどうでもよくなって、この映画を観て1か月後とか、もしくは半年後、1年後とかに思い出した時にどこのシーンや感情が残っているのかなあと。そこが自分が映画を作るうえで作品と向かいあっている時に費やしている多くの時間かもしれないですね。

――深層心理に残るというか、人生に影響をどこかで与えるような。

岩井 そこは深層心理というより、もっとあっさり脳の表面の真ん中ぐらいあたりにざっくりどこが残ってしまうんだろうと。それ以外のシーンや感情もよくよく考えたら思い出すかもしれないけれど、『リップヴァンウインクルの花嫁』というとパッと思い出す、要はどういうものとして観た人に残っているかという。そういう時に思い出すのが例えばタイムスケールを組み替える映画があるじゃないですか。時系列を組み替える映画が。

――ありますね。『パルプ・フィクション』『メメント』など。

岩井 21グラム』とかもそうですけど、個人的には否定的で無駄と思っちゃうんだけど。観てる時は驚かされるんだけど、結局お客さんが頭の中で後から時系列通りに置き換えて元にもどしてしまう。1年後、2年後には何が残っているかなと。例えば、『バベル』の4つか5つの複数の話をどの順番に出てきたか覚えている人は殆どいないと思う。

――緻密に脚本分析した人はともかく、普通はいないでしょうね。

岩井 結局、あの話とこの話とインデックスをつけて脳内整理してしまう。だから、観客が後で再編集してしまうんだとしたら無駄としか言いようのない手法だなと。観せてる間のカンフル剤にしかならないから、それはしたくない。基本的に自分が作ったものとお客さんの頭の中に残るものを同じにしておきたいっていうのはありますね。

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リップヴァンウィンクルの花嫁
監督・脚本:岩井俊二
エグゼクティブプロデューサー:杉田成道 プロデューサー:宮川朋之,水野昌,紀伊宗之
原作:岩井俊二『リップヴァンウィンクルの花嫁』(文藝春秋刊)
撮影:神戸千木 美術:部谷京子 スタイリスト:申谷弘美 メイク:外丸愛 音楽監督:桑原まこ
出演:黒木華,綾野剛,Cocco,原日出子,地曵豪,和田聰宏,金田明夫,毬谷友子,佐生有語,夏目ナナ,りりィ
制作プロダクション:ロックウェルアイズ 配給:東映 © RVWフィルムパートナーズ
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2016年3月26日(土)より全国公開中

2016/03/31/19:12 | BBS | トラックバック (0)
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