御法川 修監督/『泣き虫ピエロの結婚式』

御法川 修 (監督)
映画『泣き虫ピエロの結婚式』について【4/6】

2016年9月24日(土)シネマート新宿他全国順次ロードショー

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

『泣き虫ピエロの結婚式』場面4 『泣き虫ピエロの結婚式』場面5
――竜星さんにとっては難病の患者役を演じるというのは新たな挑戦だったと思いますが、役作りなどはかなりされたのでしょうか?

御法川 僕の知らないところで、竜星さんも独自に取材を重ねていたことは後で知りました。腎臓病や人工透析患者のことは、医療監修の方に指導を受けながら描き方を検討しました。竜星さんに限らず、この作品に携わるスタッフ皆で最初に共有したかったことは、「人の死を描くことで観る人を泣かせる」作り手の態度でした。よく、これでもか、これでもか、という言い方がされるような、観客を無理やり悲しい気分に誘い込むことで泣かせるのではなく、上質な感傷を与えられる作品にしたい。そのために、「人の死」に触れる心構えを言葉で確認しておきたかったんです。その答えは、志田さんがジャグリングを練習する場に立ち会っている時に見つかりました。志田さんが劇中で披露するジャグリングは、ボールを空中に投げてお手玉するような曲芸のことです。何度もボールを落としながら繰り返し練習している志田さんの横で、のん気に僕は教則本を眺めていたんです。その本に、こんな一節があったんです。《自分が手にしたボールは「かけがえのない存在」です。だから決して手離してはいけない》。この言葉が、とても腑に落ちて胸に沁みたのです。後から悔やんでも取り返しのつかないことって日々たくさんありますよね。そういう「刹那」の感覚。人の命に限らず、僕らの営みは「儚い」もので溢れているのだということを、観る人が自分の経験と重ねながら共感してくれる、そういう作品を目指せばいいのだなと。このことが演出する上でのモチーフになりました。その想いから、死に至る病のディテールにこだわるよりも、登場人物が感情を露わにする描写に神経を配ったつもりです。やり過ぎてはいけないんだ、一歩手前でうまく引くんだ、その姿勢を絶対に崩すまいと。泣き叫んだり、眼をむいてすごんだりする場面は目を引くかもしれないけど、所詮は役者の技巧を誇るような表現でしかありません。むしろ、映画の中の何げないしぐさや表情に、観る人がふと自分を重ねて、胸に秘めた感情を蘇らせるような自然さを大切にしたいと思いました。志田さんや竜星さん、そして新木優子さんが見せてくれた表情は、あどけない子供の微笑を眺めているような優しい気持ちにさせますよね。でもそれは、軽やかに見えても簡単なことではないんです。私心を去る、という言葉がありますが、なにか派手なそぶりで目立とうとしたりせずに、透明なままでいられる俳優の美しさだと感じました。三人の人柄や人格そのものが画面に現れているのだと思います。

――新木さんも主人公二人を同志のように支える演技が光っていましたね。

御法川 新木さんのことは、『家族ごっこ』(15)を観て知ったのです。小さな役ながら際立って目を引く存在で、心にとめていました。僕は『泣き虫ピエロの結婚式』でご一緒した後、続けざまにドラマ『いつかティファニーで朝食を』(15)でも現場を共にできたのですが、グングン輝きを増しているのが分かります。ああノッているなと、そういう勢いある風に吹かれている彼女がいてくれて、映画がより瑞々しくなったと感謝しているんです。本当にラッキーな出会いでした。新木さんが演じた真紀というキャラクターは、はすっぱでクールな女性をイメージしていたんです。衣装もオヘソなんか出してもらってギャル系ファッションを選んだのですが、新木さん本人のパーソナリティを隠すことはできなくて、映画に現れているのは可憐で凛々しい女性になっていますね(笑)。

――本当に個性豊かで、しかも俳優然とした方々が揃った感じですね。

御法川 本当ですね。若い三人の回りを固めてくれた螢雪次朗さん、髙橋洋さん、おかやまはじめさん、粟田麗さんは、これまでにも他の作品をご一緒してきた間柄で、的確に役割を担っていただけました。一つひとつの現場ごとに様々な制約がありますから、気持ちを通わす出会いがあっても、それをつなげることは難しい現状です。そんな中、今回のようなアンサンブルが組めたことは幸運でした。

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泣き虫ピエロの結婚式 (2016/88分/カラー/アメリカンビスタ/5.1CH)
出演:志田未来、竜星 涼、髙橋 洋、おかやまはじめ、岩橋道子、佐藤恒治、粟田 麗、新木優子、螢雪次朗
監督:御法川 修 原作:望月美由紀「泣き虫ピエロの結婚式」(リンダパブリッシャーズ)
エグゼクティブプロデューサー:浅野由香 中西一雄 高木徳昭 余田光隆 プロデューサー:山本晃久 八尾香澄
スーパーバイジングプロデューサー:久保田 修 共同プロデューサー:木幡久美
ラインプロデューサー:佐藤幹也 宣伝プロデューサー:西 利一郎 撮影:池田直矢 照明:加持通明
美術:松田香代子 録音:照井康政 衣裳:植田瑠里子 小道具:武田恭子 ヘアメイク:清田恵子
助監督:長尾 楽 編集:山中貴夫 リレコーディングミキサー:浅梨なおこ 音響効果:勝亦さくら
製作:映画『泣き虫ピエロの結婚式』製作委員会 配給:スールキートス
©2016映画『泣き虫ピエロの結婚式』製作委員会
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2016年9月24日(土)シネマート新宿他全国順次ロードショー

2016/10/03/19:44 | トラックバック (0)
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