インタビュー
森 義隆監督/『聖の青春』

森 義隆 (監督)
映画『聖の青春』について【1/6】

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2016年11月19日(土)丸の内ピカデリー・新宿ピカデリー他全国公開

29歳で夭折した天才棋士・村山聖の生涯を描いた同名ノンフィクション小説を映画化し、第29回東京国際映画祭クロージング作品にも選定された映画『聖の青春』が、11月19日(土)より全国公開される。難病ネフローゼと闘いながら将棋に命を燃やし尽くした村山の生き様に惚れ込み、大幅な増量をして役に挑んだ松山ケンイチが主演を務める本作の美点は、彼と東出昌大が演じる最大のライバル羽生善治との関係がまるで恋愛かのような美しさをもって描かれていることであり、またライバルはいても悪役は誰ひとりとして登場しないところである。そして、自分の生き様を静かに見つめ考えるひとりの人間という像もまた新たに立ち上がっていることも映画ならではの豊かさと魅力があるだろう。森義隆監督に俳優の魅力を最大限に引き出す演出やノンフィクションへのアプローチについてお話を伺った。 (取材:常川拓也)
森 義隆 08年 『ひゃくはち』で映画監督デビュー。同作で、第13回新藤兼人賞銀賞、第30回ヨコハマ映画祭新人監督賞を受賞。12年公開『宇宙兄弟』が大ヒット、第16回プチョン国際ファンタスティック映画祭でグランプリ、観客賞をダブル受賞。テレビ、映画、舞台と幅広く活躍する。

STORY 1994年、将棋のプロ棋士・村山聖(さとし)七段は、将棋界最高峰のタイトル「名人」を目指し、15歳の頃から10年間弟子入りし同居していた森師匠の元を離れ、上京しようとしていた。聖は幼少期より「ネフローゼ」という腎臓の難病を患っており、家族や仲間は反対する。しかし、幼いころから何をおいても将棋にかけてきた聖を見ている森師匠は、背中を押す。
東京――。髪や爪は伸び放題、足の踏み場もなく散らかった家、酒を飲むと先輩連中にも食ってかかる聖に皆は呆れるが、みな彼の将棋にかける思いを理解し、陰ながら支えた。その頃、同世代の棋士・羽生善治が前人未到のタイトル七冠を達成する。聖は強烈に羽生を意識し、ライバルでありながら憧れの想いも抱く。そして聖は、将棋の最高峰であるタイトル「名人」になるため、一層将棋に没頭し、並居る上位の先輩棋士たちを下して、快進撃を続ける。そんな中、聖の身体に癌が見つかる。だが、「このまま将棋を指し続けると死ぬ、手術し、療養すべし。」という医者の忠告を聞き入れず、聖は将棋を指し続けると決意する。彼の命の期限は刻一刻と迫ってきていた……。
森 義隆監督1
──もともと監督自身も将棋がお好きだったのでしょうか。

森義隆 小学校の時に父親と指していたくらいで、駒の指し方と勝ち方を知っている程度でした。長い間やっていませんでしたが、今回の企画のお話をいただいて、将棋会館のある千駄ヶ谷に引っ越して会館に通い詰めるところからはじめました。

──プロジェクトが始動したのが2008年で、完成までに8年という時間をかけて取り組まれました。

森 結果的に時間がかかってしまいました。2016年に映画になったわけですが、この時期に生まれるべくして生まれる映画だったのではないかと思っています。

──それは震災を経てということも含めてですか。

森 それも含めてですし、8年前だと松山くんは22歳だし、東出くんは俳優ですらないですからね。時間がかかった理由は色々ありますが、ポジティブに捉えれば、この映画が松山くんが30歳になるのを待っていたということです。

──この企画のお話を受けられた時、監督自身が村山聖が亡くなった年齢と同じ29歳でした。

森 そうですね、そこがまず取っかかりでした。29歳で亡くなった人が死とどう向き合ったのか。自分だったらのたうちまわるしかなかったかもしれない、発狂して泣いて終わるだけだったかもしれない。同じ年齢だったので容易に想像ができました。その時に村山さんの生き方を自分なりに感じて、取り組んでみたいと感じました。原作を読み取材をしてみると、彼の人生は幼少の頃から常に死が隣り合わせにあった。本当は我々も死が隣り合わせにあるわけですが、明日生きている保証は何もないという風には誰も生きられない。当時震災の前に取り組みはじめた時に、彼はどう死と向き合っていったのか、常に死と向き合う人生とは何だったのか、映画を通して29歳の自分が追求してみようと思ったら、8年も経ってしまったということですね(笑)。

──その間にアプローチの仕方に変化はありましたか。

森 やはりそうですね。一時期、彼の年齢から徐々に離れていってしまうということに危機感を覚えたこともありました。当初は村山聖という29歳で亡くなった男の内面に徹底的にフォーカスしようと考えていましたが、震災を挟み、自分の中でも結婚して子どもができたり、自分の死生観が当時とはだいぶ変わった中で出来上がったものです。また、ぼくが37歳になったことで、当時29歳で入れあげていたぼくの代わりに30歳の松山くんが現れてくれて、彼が29歳で死ぬということをどう捉えるかという側面が生まれ、そのことが非常に重要になっていきました。村山さんだけでなく、彼を支えて愛した、残された人たちの気持ちにも段々目が届くようになっていったとも思います。なので必然的な時間だったとも思いますし、29歳で撮っていたらまた全然違う映画になっていただろうと思います。

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聖の青春 (2016年/日本/カラー/123分)
出演:松山ケンイチ,東出昌大,染谷将太,安田顕,柄本時生,鶴見辰吾,北見敏之,筒井道隆/
竹下景子/リリー・フランキー
原作:大崎善生(角川文庫/講談社文庫)
監督:森義隆『宇宙兄弟』『ひゃくはち』 脚本:向井康介『クローズEXPLODE』
主題歌:秦 基博「終わりのない空」 AUGUSTA RECORDS/Ariola Japan
© 2016「聖の青春」製作委員会 配給:KADOKAWA 公式サイト 公式twitter 公式Facebook

2016年11月19日(土)丸の内ピカデリー
・新宿ピカデリー他全国公開

2016/11/08/19:31 | トラックバック (0)
常川拓也 ,インタビュー
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