遠藤ミチロウ『SHIDAMYOJIN』

遠藤 ミチロウ (監督・ミュージシャン)
映画『SHIDAMYOJIN』について【3/7】

2017年5月27日(土)より、新宿K's cinemaにてレイトショー上映

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

『SHIDAMYOJIN』場面1
――沖縄の桜坂アサイラムも楽しそうですね。

遠藤 あれは盆踊りじゃないですけどね。本当は盆踊りをやるはずだったんですよ、桜坂にやぐらを作って。でもちょっと無理だったのでライブハウスとホールになりました。そういう会場だとどうしても盆踊りというよりもコンサートのイメージになっちゃうけど、あれはひとつの街フェスですから、お祭りという感覚でとらえていました。

――沖縄にも盆踊りってあるんでしょうか?

遠藤 沖縄はエイサーでしょう。あれもリズムは「トンコ、トンコ、トンコ、トンコ……」って2拍子のアフタービートになってるから。阿波踊りとおんなじなんですよ。

――なるほど(笑)。沖縄ではもう1ヵ所、高江の音楽祭にも行っていますね。

遠藤 そうですね。高江には12年から行っているんですよ。高江音楽祭というのは12年から始まって、その最初の年は第1弾で勝井さんたち(勝井祐二+SoRA)が出て、次に(七尾)旅人くんが出て、それから僕が第3弾でやったんです。それがずっと今も続いていて、東京でもやったりしているんですけど。

――高江の問題を知ってもらおうと。志田名とも問題の根っこは同じなんですよね。棄民政策とか限界集落とか。

遠藤 でも志田名は元々そこまで限界集落でもなかったんですよね。山奥ではあるんだけど、子供たちもいれば若い人たちもいて年寄りもいる、バランスの取れた集落だったんですよ。それが放射能のせいでいきなり年寄りだけになってしまった。限界集落というのは経済的な問題で起こるんですよね。そこに仕事がないから若い人たちが都会に出てだんだん減っていく、そうすると残されるのは年寄りばかりでだんだん限界集落になっていくという。それが放射能という経済で一気に限界まで持ってこられちゃったんですよね。

――ひどい話ですね。

遠藤 他の、まだ限界になっていないところも、いずれは「もうこの村はなくなっていいです」みたいな感じになっちゃうんじゃないですか? 映画の中で「志田名は僕らの未来だ」と言ったのは、いい意味でも未来だし、悪い意味でも未来だっていう両方なんですよね。「年寄りががんばればここまでなれるんだぞ」っていう意味でも未来だし、「いずれどこもこうならざるを得ないんだよ」という意味でも。その両方が象徴的に志田名に表れているなと思います。

――確かにそうですね。でもそんな志田名の人たちを救うためにみなさん一生懸命で、放射線衛生学者の木村真三先生も集落にあそこまで入り込んで。

遠藤 木村先生は元々は「住まない方がいい」って言っていたんですよ。「ここは危ないから避難しなさい」と。ところが年寄りは「いや、よそに行った方がストレスになるし、どうせ放射能でくたばるよりももっと先に死んでしまうから、志田名に骨をうずめたい」って言うので、残るんだったら放射能の被害を少なくしようと協力しているんですよね。本当は残らない方がいいんだけれど、残らざるを得ないというお年寄りの気持ちを認めて。こういう問題も福島のどこでも起こっていることで、自主避難している人たちは「子供が危ないから」って考えてそうしているけど、年寄りは「放射能の悪い影響があるとしても先は長くないから生まれ育ったところで死にたい」って思っていて。若い人たちと年寄りとで考え方が全然変わってしまったんです。だから避難解除になったとしても帰りたいのはお年寄りだけで、若い人は誰も帰っていかないですよ。それを政府は「もう帰還できると言っているのに帰らないのは自己責任だ」とか言っちゃったりするわけですよね。泥棒に入られたら入られる人のほうが悪いと言っているようなもので、泥棒を送り込んだのはお前だろう!って。

――本当にそうですよね。そんなみなさんの気持ちを、ミチロウさんは歌でも表現して。

遠藤 そう、僕は表現者だから、口で言ったところでしょうがない。表現でやらないと。表現でやると残るし、ある意味では正論を吐いたりするよりも表現でやると面白さとかいろいろ出てきて、そっちの方が大事だなと。表現したい内容が「あいつはクソ野郎だ」っていうことだとして、それを言葉で言うとギスギスしちゃうけど、歌だと「そうだよね」って言ってみんなで楽しめるという。反体制的なことを言葉で言って何で支持されないかというとつまらないからですよね。それが楽しかったらみんな結構「そうだそうだ」ってなりますよ。だから音楽っていうのはすごく重要だなと思いますね。

12 3 4567

SHIDAMYOJIN シダミョウジン (2017年/日本/カラー/ステレオ/64分/)
監督:遠藤ミチロウ、小沢和史
撮影:小沢和史、藤田功一、照屋真治、木村真三、阿部崇 編集:小沢和史 整音:宇波拓
カラーグレーディング:稲川実希 製作・配給:北極バクテリア プロデューサー:伊東玲育、藤田功一
宣伝/海外担当/ウェブデザイン:植山英美 デザイン:新矢千里
出演:遠藤ミチロウ、木村真三、伊藤多喜雄、石塚俊明[羊歯明神]、山本久土[羊歯明神]、
茶谷雅之[羊歯明神Jr.]、タテタカコ、永山愛樹
© 2017 SHIDAMYOJIN
公式サイト 公式twitter 公式Facebook

2017年5月27日(土)より、新宿K's cinemaにてレイトショー上映

2017/05/24/22:23 | トラックバック (0)
インタビュー記事
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

主なキャスト / スタッフ

記事内容で関連がありそうな記事
キャスト&スタッフで関連がありそうな記事
メルマガ購読・解除
INTRO 試写会プレゼント速報
掲載前の情報を配信。最初の応募者は必ず当選!メルメガをチェックして試写状をGETせよ!
新着記事
アクセスランキング
 
 
 
 
Copyright © 2004-2024 INTRO