インタビュー
ジュン・ロブレス・ラナ監督『ダイ・ビューティフル』

ジュン・ロブレス・ラナ (映画監督)
映画『ダイ・ビューティフル』について【1/4】

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2017年7月22日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開

ミスコン出場を生業とするトランスジェンダーのトリシャが急死してしまうところから物語は始まる。美しく生きることを信念としてきたトリシャは、7日間続くお葬式でも日替わりでセレブのメークを施してほしいと遺言していた。映画はそんな彼女が歩んできた人生と、心優しい友人たちが腕を振るうお葬式の様子を描いていくが、そのどちらもが実は困難続き。果たして彼女は自分らしい人生を全うできるのだろうか……? 奇抜で曲がりくねった物語を駆け巡っているうちに、大きな感動と優しさで満たされていくヒューマン・ドラマの傑作『ダイ・ビューティフル』が、7月22日より公開される。監督はフィリピンのジュン・ロブレス・ラナ。東京国際映画祭など主にアジア圏の映画祭の常連であるとともに、本国では興行的にも成功している売れっ子なのだが、本作は実験性と娯楽性のバランスが絶妙。華やかさと明るいユーモアの中に、家庭にも社会にも居場所を見つけにくいトランスジェンダーの苦悩も描写し、そんなすべての経験が形づくる人間の奥深い魅力が複雑な構成によって浮かび上がってくる。ラナ監督の確かな手腕が生み出す珠玉の物語を、ぜひ劇場で堪能してほしい。お仕事でオランダに滞在中のラナ監督にSkype取材を行い、作品の背景などをうかがった。 (取材:深谷直子)
ジュン・ロブレス・ラナ フィリピンで最も熟練した映画監督の一人。多数の映画賞に輝いた『ブワカウ』は、2012 年の米国アカデミー賞フィリピン代表作品に選ばれ、香港のアジア映画賞で主演のエディ・ガルシアが主演男優賞を受賞。 2014 年、『ある理髪師の物語』がウディネ極東映画祭でフィリピン映画として初の最優秀女優賞を受賞。続く 『SHADOW BEHIND THE MOON』(15)は、ロシアのウラジオストク国際映画祭で最優秀監督賞、最優秀女優賞、フィリップス批評家賞、NETPACベストアジア映画を受賞し、インドのケララ国際映画祭でも最優秀監督賞を受賞。本作『ダイ・ビューティフル』は、2016年の第29回東京国際映画祭でワールド・プレミア上映され、最優秀男優賞と観客賞をW受賞した。
作品紹介 ミス・ゲイ・フィリピーナ、トリシャ・エチェバリアが急死した。家族から絶縁され、身寄りのない娘を育て上げ、ついにミスコン女王に輝いた末の突然の死だった。そんな彼女の遺言は、葬儀までの七日間の死化粧への注文!?愛を求め、裏切られ、差別と偏見に立ち向かい誇り高く生き抜いたトランスジェンダーの、波乱に満ちた一生を笑いと涙で描いた、拍手喝采の一代記が遂に日本公開!
ジュン・ロブレス・ラナ監督監督1
――昨年の東京国際映画祭で大変話題になった『ダイ・ビューティフル』が、このたびラナ監督の作品として初めて劇場公開されることになり、さらにたくさんの観客にご紹介できることを嬉しく思っています。

ジュン・ロブレス・ラナ監督(以下ラナ) ありがとうございます。フィリピンの映画を映画祭以外の日本の普通の映画館で観てもらえるのはとても嬉しいことです。

――トランスジェンダーの主人公が死んだところから始まって、彼女の波乱に満ちた人生の回想と、そんな人生を友人たちが肯定するお葬式の様子を描くというストーリーがとてもユニークでした。監督は、ある実際のトランスジェンダー殺人事件に対して感じたことからこの物語を着想したとのことですね。

ラナ はい。その殺人事件について知ったとき、実は私はNYで結婚記念日を過ごしていたんです。私自身もゲイなんですが、その1年前にパートナーとNYで結婚式を挙げていて、結婚1周年のお祝いのためにまたNYを訪れていたときにフィリピンのトランスジェンダーが殺されたというニュースを知り、さらにSNSに「そんな化け物は殺されて当然」みたいなひどい書き込みがたくさんあるのを見て、非常に心が痛んで。自分はNYというゲイとかが自由にやっている場所にいて、自分たちの結婚を祝っている。そういうときに自分の母国であるフィリピンではトランスジェンダーが殺されるという事件が起き、しかもそれに対して「ざまあみろ」のような反応をする人が多いということにすごく複雑な気持ちになりました。それで、トランスジェンダーやゲイがどういうことを考えているのかだとか、「普通の人として生きているんだよ」ということを理解してほしくてこの映画を撮ったんです。

――その複雑な思いの中には怒りもあったと思うんですが、映画には怒りは表れていないですよね。実際の事件の犠牲者は亡くなってからSNSで攻撃されましたが、その魂を映画で救おうとするかのようにこの映画の主人公のトリシャはたくさんの人に想われ、SNS自体も映画の中ではお葬式の様子を拡散する素敵な手段として描かれています。悲惨な事件を前向きな物語に転換しているのがとても素晴らしいなと思いました。

ラナ おっしゃるとおり、怒りをもってこの作品を作ってはいけないと思ったので、怒りから離れようということを心がけました。というのは、やはり怒りを中心にして映画を作ってしまうと、プロパガンダ、宣伝映画のようになってしまうんですね。政治的主張を伝えるだけで、楽しめるものではなくなってしまうと思うんです。だから自分にとってエキサイティングなストーリーというだけではなくて、お客さんにとっても楽しんで観てもらえるものにしたいと思って作りました。そしてストーリーを考えていく過程でいろんな要素を入れていきました。例えばミスコンというのが出てきますね。フィリピンではゲイだけではなくて普通の女性のミスコンも盛んなんですけど、特にゲイの間ではミスコンに出て賞金を得ることで生活をしている人がかなりいるので、そういう人たちのことも描きたいと思いました。また、トランスジェンダーには変身願望というのがとてもあるので、そこからお葬式のときに7日間毎日違うセレブのメークをするというアイディアを思い付きました。さらに日替わりで変身するごとに回想シーンを入れているんですが、それぞれでトリシャの人生の違う時期を描いていきました。トリシャがシャーリー・メイと名付けて養子にする娘との出会いのこととか、恋の話とか、友情の話とか、そういう違う時代を織り込んで彼女の人生を描いていこうと考えました。

『ダイ・ビューティフル』 『ダイ・ビューティフル』場面1

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ダイ・ビューティフル (2016/フィリピン/120分/カラー/原題:Die Beautiful)
監督/プロデューサー/原案:ジュン・ロブレス・ラナ
出演:パオロ・バレステロス、ジョエル・トーレ、グラディス・レイエス、アルビー・カシノ、ルイス・アランディ、クリスチャン・バブレス、イナ・デ・ベレン、I・C・メンドーサ、セデリック・ジュアン、ルー・ヴェローゾ、イザ・カルザド、ユージン・ドミンゴ
エグゼクティブ・プロデューサー:リリィ・モンテヴェルデ、ロッセル・モンテヴェルデ、ペルシ・インタラン
プロデューサー:ジュン・ロブレス・ラナ、フェルディナンド・ラプス
ライン・プロデューサー:オマール・ソルティハス
脚本:ロディ・ベラ 撮影監督:カルロ・メンドーサ 編集:ベン・トレンティーノ
作曲:リカルド・ゴンサレス プロダクション・デザイナー:アンヘル・ディエスタ 日本語字幕:佐藤恵子
制作会社:アイディアファーストカンパニー、オクトーバートレインフィルムズ、リーガルエンターテイメント
宣伝協力:太秦 配給:ココロヲ・動かす・映画社〇 © The IdeaFirst Company Octobertrain Films
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2017年7月22日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開

2017/07/19/21:31 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー
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