インタビュー
サトウトシキ監督/『名前のない女たち うそつき女』

サトウトシキ (監督)
映画『名前のない女たち うそつき女』について【1/6】

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2018年2月3日(土)~3月2日(金)
新宿K’s cinemaにて公開 他全国順次

ノンフィクション作家の中村淳彦氏が500人以上の企画AV女優にインタビューしてまとめた人気シリーズを原作に、ピンク四天王のひとり、サトウトシキ監督がドラマを膨らませて映画化した『名前のない女たち うそつき女』が、2月3日より公開されている。AV女優を内心バカにしながら彼女たちへの取材を続ける中年ルポライターと、奨学金返済のために始めたAVの仕事に前向きに臨みながらも心の葛藤を抱える若いAV女優との交流を軸に、ままならない人生と格闘する人たちが小さな一歩を踏み出すまでをこまやかに映し出す。ベテランの吹越満と城アンティアらフレッシュな俳優たちのアンサンブルと、企画がスタートした9年前から磨き続けられた加瀬仁美の脚本の力を得て、あたたかな感動を呼ぶ人間ドラマを作り上げたサトウトシキ監督にお話をうかがった。 (取材:深谷直子)
サトウトシキ 1961年、福島県生まれ。1981年、日活芸術学院卒業。ピンク四天王の一人。フリーの助監督としてピンク映画の世界に入り、1989年『獣-けだもの-』で監督デビュー。1994年アテネ・フランセ文化センターで特集上映が行われ、1995年『痴漢電車人妻篇 奥様は痴女』がロッテルダム国際映画際で上映される。『LUNATIC』(96)、『アタシはジュース』(96)、『夢の後始末』(97)、『迷い猫』(98)、『今宵かぎりは…』(99)、『団地妻 不倫でラブラブ』(00)、『青空』(01)、『夢なら醒めて……』(02)、『ロスト・ヴァージン』(02)、『団地の奥さん、同窓会に行く』(04)、『ちゃんこ』(05)、『重松清・愛妻日記』(06)などを監督する。その後の主な作品に『ジャイブ 海風に吹かれて』(09年/主役:石黒賢・清水美沙)、『モーニングセット、牛乳、春』(13年/主演:平田満)がある。
STORY ルポライターの志村篤(吹越満)は、主にAV女優を専門に取材をしては本にしていた。AV女優を「人前で裸になってセックス売ってるだけの社会の底辺」と内心バカにしつつも、彼女たちの前では「尊敬している」と言ってみたりしていた。自分が心底見下している対象であるはずのAV女優たちに、なぜ彼は執着し、追い続け、そして取材し続けるのか。彼はある種の矛盾を抱えていた。彼をそこまで惹きつけて止まないAV女優とは何なのか。そんな中、企画AV女優である前田葉菜子(城アンティア)と取材を通して出会う。いつものパターンだと思った。惨めなくせに、そこを直視することなく、「充実している。」「幸せ」「AV女優は夢だった」等と言っては明るく振る舞い、空虚な嘘で作り固められた今までのAV女優と同じだと思っていた。しかし、葉菜子は何かが違っていた。
一方で、葉菜子の妹の前田明日香(円田はるか)は、高校を中退し、若さも時間も持て余していた。実家に全く帰ってこない葉菜子に会いに、田舎から親に内緒で出てきてしまう。そんな時、ワケありのホストとして働き始めていたツバサ(小南光司)と出会う。それぞれが、それぞれに、切ない人生を日々生きていて、心にある闇や、葛藤、矛盾、言いようのない何かを抱えて、それでも生きて……。
サトウトシキ監督1
――この作品は2010年に公開された佐藤寿保監督の『名前のない女たち』(10)に続く、同名ノンフィクションの映画化第2弾ということになりますね。サトウ監督も原作は以前から読まれていたんですか?

サトウ 読んでいました。佐藤寿保が第1弾を撮ったころに小林良二プロデューサーから何人かの監督が呼ばれまして、その中のひとりだったんです。そのときに原作をまとめて渡されて読みました。

――映画化もそのころから考えていらしたんですか?

サトウ はい。今から9年ぐらい前になりますか、そのときに脚本までは作っていました。今と同じではないですが、ヒロインの葉菜子関係は大体そこでできあがっていたと思います。

――脚本の加瀬仁美さんも早くから参加されていたのでしょうか?

サトウ はい、加瀬は学生を終えて現場に出ていたころだったんですね。学校では脚本の勉強をしていて、その学生のころから知っているので、「書いてみないか?」と声をかけて書いてもらいました。9年ぐらい前に作っていた話は葉菜子と彼氏の辻本を中心に置いた話だったんです。

――今の映画のようにAV女優とそのヒモのような間柄だったんですか?

サトウ いや、葉菜子は介護の仕事を本業にしていて、パートタイムでAVの仕事をしているという設定でした。辻本は葉菜子より年上の、30代とかのカメラマンだったな、確か。結婚してしまった元彼女を今でも好きで、写真をずっと持っていたりするという。それも歪んでいますけどね(苦笑)。

――(笑)。この映画の辻本は葉菜子と同世代で20代前半ぐらいですけど、ちょっと何を考えているのかわからない感じですよね。

サトウ ちょっといびつですよね。明日結婚しますという関係ではないわけだし。この二人の関係がどう続いていくのかというところまでは描いていないですからね。

――こういうノンフィクションを映画化するときは、原作から抽出したキャラクターやエピソードからお話を作っていくこともできるんですけど、この映画には原作者である中村淳彦さんをモデルにしたような志村というルポライターが主人公として登場し、取材対象の葉菜子に関わっていくという構造になっていますね。このアイディアはどうやって出てきたのですか?

サトウ 9年前に企画が持ち上がってからずっと葉菜子を主人公に脚本作りをしていたんですけど、それとはまったく違うものを3年前に一度作ったことがあるんです。シノプシスの段階までだったんですが、それは葉菜子から少し離れるものでした。葉菜子以外の人物が立ち上がってくるというのがあって、それは女性だったんですが。で、今回は実は3回目の映画化の話になるんですけど、ルポライターを主人公にしたらどうだろう?ということになって、志村の役柄ができました。狙いとしては、少し見やすいエンターテインメントの映画にしようというのがあって、AV業界周辺の話を誰の視点で描くか?というようなことで出てきました。脚本家には主人公は葉菜子でいきたいという想いがあったから、僕の方から振っていく形ではありましたね。他に登場する男性がちょっと弱かったというのもあって。僕には男と女の話にしたいっていうのがちょっとあって、葉菜子と志村をタイな関係にしたんです。

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名前のない女たち うそつき女 ( 2018年/日本/DCP/カラー/ステレオ/86分 )
出演:吹越満,城アンティア,円田はるか,笠松将,小南光司,吉岡睦雄,不二子,クノ真季子,川瀬陽太
監督:サトウトシキ(「ジャイブ」「ちゃんこ」「モーニングセット、牛乳、春」)
原作:中村淳彦「名前のない女たち 貧困 AV 嬢の独白」(宝島社)
プロデューサー:森原俊朗・小林良二・橘慎 脚本:加瀬仁美 撮影監督・スティル・編集:小川真司(J.S.C.)
録音:岩間翼 助監督:大城義弘 音楽:入江陽 ラインプロデューサー:川上泰弘
制作会社:ソリッドフィーチャー 配給・宣伝:渋谷プロダクション
製作:「名前のない女たち うそつき女」製作委員会(オデッサエンタテイメント・渋谷プロダクション)
主題歌:アクメ『CALL MY NAME』 ©「名前のない女たち うそつき女」製作委員会
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2018年2月3日(土)~3月2日(金)
新宿K’s cinemaにて公開 他全国順次

2018/02/05/20:21 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー
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