ダニエラ・ヴェガ/『ナチュラルウーマン』

ダニエラ・ヴェガ (女優)
公式インタビュー 映画『ナチュラルウーマン』について【2/2】

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2018年2月24日(土)シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開


『ナチュラルウーマン』1
――この映画を観てもらう人に一番届けたいものはなんですか?

ダニエラ メッセージというよりも問いかけです。この映画を観終わった後に観客が自分に問いかけてくれればいいなとおもいます。自分がどこまで共感できるのか、共感の限界を広げるのか、狭めるのか、許されない範囲があるのか、どこまで身体性を自分は許せるのか、もっと自由な世界をつくるのか、それとも多様性を認めない世界をつくるのか、壁をつくるのか、橋をつくるのかです。映画は答えを与えるものではなく、問いかけなのです。

――この物語は、性的マイノリティが対面する逼迫した状況を描く作品だと思いますか。

ダニエラ 私はそういった概念のための作品だとは思いません。トランスジェンダーの人物像が世間の目と闘うだけの映画ではなく、大きく普遍的なテーマは「死によって別たれた愛の物語」です。そして彼女が自らを取り巻く一つ一つの壁とどう対峙していくかということが描かれます。トランスであるか否かということは、オルランド(亡くなった恋人)の家族や周りがそういう目で見るから定義づけられてしまうだけのこと。チリの性的マイノリティの実情も同様で、本人の意思に関わらず、周囲が男や女がこうあるべきと決めてしまうために苦悩する人がいるのです。

――映画ではマリーナに対し、失礼で傲慢な態度をとる人々が現れますが、彼女は自分らしさを失わずにポジティブに決然と生きていきます。その原動力の源は何だと思いますか。

ダニエラ 彼らにとってマリーナが“脅威”であるということを、マリーナ自身よく分かっているからこそ暴力に暴力で応えないのです。マリーナには、オルランドが焼かれてしまう前に、絶対に彼に会わなければ、という最大にして唯一の目的がありました。それが彼女を突き動かしたのです。

――あなたが生きていくうえで大切にしているもの、ポリシーは何ですか?

ダニエラ “反逆性”と“抵抗”と“愛”です。私は何か公式にタイトルを持っているわけではないし、歌も演技も独学で、大学を出ているわけではありません。アートへ通じる扉はすべて閉ざされていて、だから反逆児である私は窓から入ってほしいものを手に入れました。政治権力、差別や偏見、自由に生きるものを拒むものに対して、私は抵抗します。今、私たちが生きる世界は、前の世代が作り上げたものに他なりません。私たちが多様性という新しい認識を築くことで、次の世代が進む道になっていくのです。生きたいように生きる人生の為に、私は闘います。

ダニエラ・ヴェガ2© mitsuhiro YOSHIDA/color field
――世界的に評価されるレリオ監督の演出はいかがでしたか。

ダニエラ すごく美しく幸せな体験でした。彼はこれまでに会ったことがないくらい寛大な人で、いつでも愛を持って演出してくれました。自分にとって挑戦となるような難しいシーンもありましたが、彼は私を決して見捨てたりしないという安心感の中で演じることができました。

――日本では昨今、LGBTを取り上げた映画やドラマがたくさん輩出されています。このムーブメントについてどう感じますか?

ダニエラ 今この時代というのは、人類の歴史の中で一つの検証の段階に来ているのだと思います。国境や民族、性差――といった自分たちの中に境界を作ってしまった理由を考える節目の時を迎えているのです。なにを排除してきたのか?なぜ世界はこうなったのか?なぜ共感の限界を定めてしまうのか?
そんな常識に縛られた限界を飛び越えた存在というのが、トランスジェンダーなのでしょう。彼らから学ぶ部分があると考えているのだと思います。現在は、私たちが歩んできた歴史を振り返る時期に来ていて、それを問いかけるのが、今作られている映画やドラマなのかもしれません。

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ナチュラルウーマン (2017年/チリ・ドイツ・スペイン・アメリカ作品/スペイン語/104分)
監督・脚本:セバスティアン・レリオ『グロリアの青春』『Disobedience』
出演:ダニエラ・ヴェガ、フランシスコ・レジェス、ルイス・ニェッコ
原題:Una Mujer Fantástica/英題:A Fantastic Woman 提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム © 2017 ASESORIAS Y PRODUCCIONES FABULA LIMITADA; PARTICIPANT PANAMERICA, LCC; KOMPLIZEN FILM GMBH; SETEMBRO CINE, SLU; AND
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2018年2月24日(土)シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、
YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開

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2018/02/12/20:22 | トラックバック (0)
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