インタビュー
宮崎大祐監督/『大和(カリフォルニア)』

宮崎 大祐 (監督)
映画『大和(カリフォルニア)』について【1/7】

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2018年4月7日(土)より新宿K’s cinema ほか全国順次ロードショー

米軍基地のある街、神奈川県大和市を舞台に、ラッパーを目指す10代の少女の青春を描き、海外メディアから絶賛されている宮崎大祐監督の長編第2作『大和(カリフォルニア)』がいよいよ日本でも公開を迎える。韓英恵演じる主人公のサクラは、アメリカ、日本、家族、音楽、そのどれにも愛着と疎外感を抱き、苛立ちをひたすらリリックに綴る。宮崎監督が本作に込めたそうした問題への想いは、インタビューで話を聞くとさらに深刻で物憂いものだったが、映画はあくまでもエンターテインメントに。苦しい環境の中でも夢中になるものを持つピュアな少女が、他者との関係の中で変容し、大きく優しく成長する様子を、切なさや楽しさ、喜びとともに描く。世界は変わらず不穏なままかもしれないが、これが映画にできることと信じる宮崎大祐監督のチャレンジを享受し、そこに暮らす人々に想いを寄せながら様々な問題を噛み締めたい。今年は他にもオムニバス映画『5TO9』の公開や、池袋シネマ・ロサの新インディーズ映画企画「シネマ・レガシー」へのキュレーターとしての参加などが決まっており、日本でも躍進が期待される宮崎大祐監督のインタビューをお届けする。 (取材:深谷直子)
宮崎 大祐 1980年、神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。2007年に黒沢清監督作品『トウキョウソナタ』に助監督として参加して以来、フリーの助監督として活動。脚本を担当した綾野剛主演、 筒井武文監督作『孤独な惑星』が2011年冬に全国公開され、話題を呼ぶ。同年、初の長編作品『夜が終わる場所』を監督。サンパウロ国際映画祭、トランシルバニア国際映画祭など世界中の国際映画祭に出品され、トロント新世代映画祭では特別賞を受賞した。翌年2012年に渋谷ユーロスぺースで行われた国内初公開ではのべ三週にわたり、個人での宣伝配給作品としては異例の記録的動員を達成。公開中は連日、アート・ジャンルを横断するイベントを行い、「映画館」という場所の従来のイメージを更新するまったく新しい興行スタイルを提示し大きな話題となった。2013 年にはイギリス・レインダンス国際映画祭が選定した「今注目すべき日本のインディペンデント映画監督七人」にも選ばれ、2014年には日本人監督としては実に四年ぶりにベルリン国際映画祭のタレント部門に招待された。直近の活動としては2015年にアジア四ヶ国によるオムニバス映画『5TO9』のうちの一編『BADS』を永瀬正敏主演で監督し、同作が中華圏のアカデミー賞こと金馬影展など様々な国際映画祭で上映された。本作が二本目の長編監督作となる。
STORY 神奈川県大和市。この町は戦後米軍基地と共に発展してきた。厚木基地の住所はカリフォルニア州に属しているのだという都市伝説があるという。10代のラッパー・長嶋サクラは、日本人の母と兄、母の恋人で米兵のアビーに囲まれ、この町同様、複雑な関係性の中で育ってきた。アメリカのラッパーに憧れて、サクラは毎日ラップの練習と喧嘩に明け暮れる。ある日、アビーの娘・レイがカリフォルニアからやってくる。日米のハーフで、サンフランシスコで生まれ育ったレイ。好きな音楽の話をきっかけにして2人は距離を縮めていくのだが――。
宮崎大祐監督1
――『大和(カリフォルニア)』は監督の故郷である大和市をきちんと映画で描きたいという想いから作ったということですね。子どものころはアメリカと日本を行き来するような生活だったとお聞きしましたが。

宮崎 はい、転勤の多い家庭で、母親の本家が大和なのでそこを拠点にどこかに引っ越してまた戻ってきたりという感じでした。関西や横浜に住んでいたこともあります。高校に入ってすぐくらいに完全に大和に引っ越して、今も大和に住んでいます。

――主人公のサクラは高校をドロップアウトした10代で、監督が大和に住み始めたのと同じ年代ということですね。

宮崎 はい、僕が基地の騒音にいちばん苛立ちを覚えていたのもそのころでした。

――主人公を女の子にしたのはなぜですか?

宮崎 ラップの映画にしようというのがもともとあって、ラッパーには男性が多いから男性キャラクターを主人公にすることも最初は考えていました。でも男のラッパーが貧しい街で鬱屈としていたんだけど成功する……という話はありがちで面白くないなと思い、一方で最近少し変わってきているとはいえ、日本に限らず社会システムはまだまだ男性中心だと感じるので、ラップという男性性が強い音楽に女性が入ったときに違う向きでの化学変化が起きないかな?とも考えて女性の主人公にしました。また、ここに至るまでに僕はわりと脚本の仕事をしてきたんですが、書きながら女性って男性からは到底わかり得ないものであることは前提とした上で、すごく深いし素晴らしいなと思っていたので、男のわかり切った苦痛を吐露するよりは、女性を主人公にして「わからないんだけどわかろうする」みたいなことをやりたいなというのもありました。

――じゃあキャラクター作りは俳優さんと相談などしながら?

宮崎 そうですね。1本目の『夜が終わる場所』(11)はわりとガチガチに固めた演出で、ある種スタイリッシュな映画を撮ってみたんですけど、毎回映画を撮るときに新しい挑戦をしたいなと思っているので、今回はシナリオは基本的に固めた上で、それをベースに俳優の方と相談しながら即興なども入れて撮っていくスタイルで臨みました。

――サクラを演じた韓英恵さんは、監督が前々からとても好きな女優さんだったそうですね。

『大和(カリフォルニア)』宮崎 韓さんは芝居をしていないときでも非常に雰囲気がありますし、スタートがかかると普段のお上品で静かな感じからガラッと変わります。それに、昔ながらの女優らしさがいまだに残る女優さんですね。今までの作品も好きでしたし、この作品で今まででいちばんいい印象が残せるんじゃないかという自信もありましたので、なかなか厳しい撮影になるだろうとは思ったんですが、「どうしてもご出演ください」とお願いしました。

――この映画は日本とアメリカに引き裂かれているという思いを抱える女の子のお話で、韓さんのハーフであるという境遇もそこに重なるように思いますが、それもキャスティングのとき意識されていたのでしょうか?

宮崎 いえ、韓さんが韓国と日本のハーフだからキャスティングしたということはまったくなくて、たまたまです。レイというキャラクターがハーフであることは決まっていたのですが、たまたまスタッフにも在日の方やお父さんが米兵という方もいて。偶然そういうメンバーが揃って、それがかえってある種の一体感を出したような気がしますね。

――韓さんとレイ役の遠藤新菜さんはハーフ同士でも対照的な感じで、面白いコンビでしたね。息も合っているようでしたが、お二人が一緒に仕事をするのは初めてだったんでしょうか?

宮崎 まったく初めてです。歳も多少違うのでうまくいくか少し心配していたんですけど、とても仲良くなって、まるで親友のようでした。出会った二人のみずみずしい瞬間を捕らえられたなと。

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大和(カリフォルニア) ( 2016/日本・アメリカ/カラー/119分/アメリカン・ビスタ/5.1ch )
監督・脚本:宮崎大祐(『夜が終わる場所』監督、『孤独な惑星』脚本)
出演:韓英恵,遠藤新菜,片岡礼子,内村遥,西地修哉,加藤真弓,指出瑞貴,
山田帆風,田中里奈,塩野谷正幸,GEZAN,宍戸幸司(割礼),NORIKIYO
撮影:芦澤明子 音響:黄永昌 サウンドデザイン:森永泰弘 プロデューサー:伊達浩太朗
音楽:NORIKIYO Cherry Brown GEZAN 割礼 のっぽのグーニー 配給:boid © DEEP END PICTURES INC.
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2018年4月7日(土)より新宿K’s cinema ほか全国順次ロードショー

2018/04/07/19:01 | トラックバック (0)
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