緒方貴臣監督『飢えたライオン』

緒方 貴臣 (監督) 映画『飢えたライオン』について【4/6】

2018年9月15日(土)より、テアトル新宿にてレイトショー!以降全国順次公開

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

緒方貴臣監督2 『飢えたライオン』場面6
――確かにそうですね。追い込まれた瞳にとっては最後のよりどころという感じだったのでしょうね。

緒方 自殺するにはいろんな理由があって、本当の理由は本人にしかわからない。もしかしたら本人すらわからないかもしれないですよね。ひとつだけではなく複合的にいろんなことが重なり合って自殺に至るのだと思います。高校生のコミュニティには家とか学校とか部活とかあると思うんですが、それがひとつずつなくなって孤立していって、相談する相手もいなくなって自分だけで考えるようになり、他人が外から見たら「そんなことぐらいで」と思うようなことが見えなくなってしまう。そういう状況に彼女がなっていったというふうにしたいと思って、少しずつ狭めていきました。瞳には友達がいて家族がいて彼氏がいて先生がいて、それがみんな離れていって、唯一相談に乗ってもらえるのが西島だった。でもああいう形で裏切られて。タイミングもあると思います。この映画では電車で自殺することになっているけど、そういう場所にたまたまいて、何かきっかけがあって自殺することって多いと思うんですよ。ここに飛び込めば楽になれる……と視野が狭くなって、「死にたい」というよりも「解放されたい」という考え方で。自分自身でそういう気持ちになったことがあるんですよ。この映画を観て「あっさり自殺した」と感じる人もいると思いますが、死ぬときはあっさりしていると僕は思っているし、そこまでの辛さというのはその人にしかわからないものなので。もしこの映画を観て「このぐらいで自殺を?」と思ったら、そこを考えてほしいなと思いますね。

――瞳を取り囲む人物がすごくたくさん描かれますが、隅々まで配役が行き届いているなと感じました。

緒方 この映画には、ほかの映画で主演をするような方も含め、本当にたくさんの俳優が出ています。僕自身は役の大きい小さいというのをあんまり気にしていなくて、小さい役でも本当に重要だと思うから、自分の信頼する人にお願いしたという感じです。

――生徒役も、クラス全員がエキストラではなく俳優なんでしょうか?

緒方 はい。そこはすごく助かりました。例えばファーストシーンは生徒たちがすごく動きがあるじゃないですか。メインのセリフのある役だけが役者で芝居ができても、他がただのエキストラだったら絶対にあの動きはできなかったと思っていて。セリフはないけどいい動きをしてくれたなあと思います。

――あの冒頭の教室のシーンはワンカットで撮っているんですよね。ガヤガヤ騒いでいるようでいて、動きも会話の内容も考えられていて。

緒方 そうですね、すべての発端だからファーストシーンは本当に重要で、いちばん力を入れたところですね。みなさんのおかげでいいシーンになって、いちばん好きなシーンです。

――普通の人を演じる俳優さんのお芝居も本当に見事で、筒井真理子さんのだらだらっとした喋り方もリアルだなあと感じましたが、このセリフは台本通りなんでしょうか?

緒方 台本とそんなに変わっていないと思うんですが、ニュアンスは変わっていないけど言葉が変わっているようなところはたくさんあると思います。昔はそこにあまり融通が利かなくてセリフを変えてほしくなかったんですが、今は役者さんを信頼しているので内容が変わらなければ自由にという感じで。特に筒井さんはかなり自由にやってくれて、忙しくしているお母さんという感じになっていました。

――松林さんは自主的にデパートのトイレなどでお芝居の練習をしたとのことですが、リハーサルもかなりしたんでしょうか?

緒方 リハーサルは結構やりました。特に4人組が本当の高校生に見えるということがこの映画の肝だと思っていたので、そこはかなりがんばってもらいました。ファーストシーンのあとの女子トイレのシーンはかなりリアリティがあると思います。最初はやっぱり高校生に見えなかったんですよね。セリフはちゃんと言えるけどすごく落ち着いているなという感じで。高校生ってところ構わず本当にビックリするぐらい元気じゃないですか。会話も脈絡なく飛ぶし、その会話の中でいきなり写真を撮り出したりして、その感じがほしいなと思って。あと若い人は、笑うときによく手を叩くんですよ。それはバラエティ番組で芸人さんが笑っていることがわかりやすいように手を叩くのを真似ているんだと思うんですが、そういうのを入れてほしいと言ってがんばってもらいました。

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飢えたライオン ( 2017年/日本/カラー/16:9/ステレオ/DCP/78分 )
出演:松林うらら 水石亜飛夢 筒井真理子 菅井知美 日高七海 加藤才紀子
品田誠 上原実矩 菅原大吉 小木戸利光 細川岳 遠藤祐美 竹中直人
監督・脚本・プロデューサー:緒方貴臣 脚本:池田芙樹 共同プロデューサー:小野川浩幸
撮影監督:根岸憲一 録音:岸川達也  編集:澤井祐美  音楽:田中マコト
配給:キャットパワー © 2017 The Hungry Lion
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2018年9月15日(土)より、テアトル新宿(東京)にてレイトショー!
10月13日(土)より、シネ・リーブル梅田(大阪)、元町映画館(兵庫)
10月27日(土)より、名古屋シネマスコーレ(愛知)
11月24日(土)より、小山シネマロブレ(栃木)
ほか全国順次公開

2018/09/14/20:24 | トラックバック (0)
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