塚本晋也監督『斬、』

塚本 晋也 (監督) 映画『斬、』について【2/5】

2018年11月24日(土)よりユーロスペースほか全国公開!

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

『斬、』場面1 『斬、』場面2
――殺陣がとても見事で驚きました。

塚本 池松さんは自然体のお芝居をされることが多いですが、身体能力も優れた俳優さんだと感じていたので、殺陣もすごくやってくれそうだと思っていました。それだけではなく、お金はないけれど高潔な心を持っているという感じだとか、今の若い人に通じそうな、戦うことに対してグラグラしちゃいそうな感じだとか、いろんな面を池松さんは持っていらっしゃるなと思っていました。

――池松さんに出てもらえることになって、脚本を一晩で書き上げたとうかがいました。

塚本 一晩というのはちょっとオーバーなんですけど、それに近い感じですね。池松さんが僕の映画に興味があると言ってくださったのは去年の4月ぐらいのことなんですが、夏は予定が入っているということだったんです。この映画は夏の設定なので、その年の撮影は無理だとあきらめていたんですが、そのひと月後の5月に「やっぱり空きました」と言ってくれて。クランクインの3ヶ月前で、ちょっと無理な感じだったけど、そこを無理矢理やりました。1行だけのアイデアをもとに、以前にも短いプロットを書いたことがあったんですが、今度は時代考証の先生とお話をしてもっとまとまったプロットを書いて、次の日には第1稿を書き上げていました。そこからまた少し時間をかけて改稿していきましたが、最初に脚本という形に仕上げたのは確かに一晩、一瞬の出来事でした。それぐらい実りある日を毎日毎日過ごして、やっと間に合った感じだったんです。

――人間の普遍的な姿が描かれ、神話や寓話のようだと感じました。今の社会問題に重なることがたくさん織り込まれていましたが、脚本を書く上でポイントにしたのはどんなことですか?

塚本 今、「嫌だなあ」と思うことを素直に入れていきました。理屈っぽく考えて書いたわけではなく、自然に出た感じですね。そうやって今のことを少し暗示させて書くうちに、僕の心配やら不安やら憤り的なものがそのシンプルなストーリーの中に入ってしまい、寓話性を感じ取ってくれたロカルノ国際映画祭のディレクターから、「ギリシャ悲劇のようだ」というコメントをいただいたりしました。

――ゆう役の蒼井優さんのキャスティングも、監督のたっての希望だったそうですね。

塚本 プロットを書いているときに「難しい役だな、これを誰がやってくださるかな?」と考えていて、蒼井さんならやれるだろうけど、引き受けてくださるかなあ?と。住む世界が違うような、多分僕の映画には関心ないんじゃないかなという気がして、ちょっと勇気が要ったんですけど、迷っている暇もないし、いちばんいい人から訊いていったほうがいいなと思って、一か八か訊いてみたっていう感じだったんです。

――そうしたら蒼井さんも快諾してくれたそうですね。

塚本 10代のころに、日本映画を好きになるきっかけの1本に『双生児』(99)を入れてくれていたそうです。思いも寄らなくて「ああ、そうだったのか」ってビックリしました。

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斬、 (2018年/日本/80分/アメリカンビスタ/5.1ch/カラー)
監督、脚本、撮影、編集、製作:塚本晋也 出演:池松壮亮、蒼井優、中村達也、前田隆成、塚本晋也
製作:海獣シアター/配給:新日本映画社 © SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
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2018年11月24日(土)よりユーロスペースほか全国公開!

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2018/11/23/00:02 | トラックバック (0)
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