インタビュー
杉田協士監督/『ひかりの歌』

杉田 協士 (監督)
映画『ひかりの歌』について【1/7】

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2019年1月12日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開

『ひとつの歌』の杉田協士監督の7年ぶりとなる長編映画『ひかりの歌』は、”光”をテーマにした4首の短歌からインスピレーションを受けて生まれた4章仕立て。北村美岬、伊東茄那、笠島智、並木愛枝が演じる各章のヒロインたちの孤独と熱い感情を、静かに見つめて描き出す。遠くの星のようにゆらめきながらも確かに輝く小さな光が、思い思いの方向を照らし合いながらいつしか見せてくれる美しく力強い光景に、映画を観る誰もが幸福を感じることだろう。熊切和嘉、黒沢清、青山真治など、錚々たる監督たちの現場で経験を積んできた杉田監督は、映画の職人たちの仕事に敬意を払い、一方で映画ワークショップの生徒や街で出会う人たちにも、分けへだてのない親密さで向き合う。それだけではなく、自然のリズムに無理なく身を委ねるすべを知っている人なのだと思う。偶発的に始まっていったような映画づくりで、どうしてこうも人と場所と物語が調和する作品ができあがったのか。このロング・インタビューをお読みになって、少しでも必然と感じていただけたら幸いである。 (取材:深谷直子)
杉田 協士 1977年、東京生まれ。映画監督。他に写真や小説も手がける。2011年、映画『ひとつの歌』が第24回東京国際映画祭にて上映され、2012年に劇場公開。歌人の枡野浩一氏との共著になる写真短歌集『歌 ロングロングショートソングロング』(雷鳥社)が2012年に出版。小説『河の恋人』、『ひとつの歌』がそれぞれ2014年、2015年の文芸誌「すばる」(集英社)に掲載。演劇との関わりもつよく、『金子の半生』(ハイバイ、2010年)、『浴槽船』(FUKAIPRODUCE羽衣、2012年)、『洪水』(2012年、指輪ホテル)などの映像作品がある。
STORY だれかをおもう気持ちが この世界のひかりになる
都内近郊に住む4人の女性、詩織、雪子、今日子、幸子は、それぞれ誰かを思う気持ちを抱えながら、それを伝えられずに日々の生活をつづけている。旅に出てしまう同僚、他界した父親、閉店が近いアルバイト先の仲間、長い年月行方知れずの夫のことを思いながら、彼女たちは次の一歩を踏みだしていく。
杉田協士監督1
――『ひかりの歌』は、短歌を原作にしたユニークな映画です。成り立ちを教えていただけますか?

杉田 この映画の第4章の主演をしている並木愛枝さんと知り合ったばかりのころに、愛枝さんはある商業映画への出演が決まっていて、商業映画はひさしぶりだから少し不安だということを言っていたんです。大事なシーンに登場する役で、愛枝さんはフリーで活動していたから一人で現場に行くことになっていて。私はもともと演出部の出身で現場に慣れているので、「付き人をしましょうか?」と申し出て、その後もオーディションの付き添いなどをしました。そのうちに、フリーランスで活動している他の俳優のサポートも、自分でできる範囲でやってみようかと思いついて、まずそういう俳優たちの窓口になるようなサイトを作ったのが始まりになります。

――それが本作の主演の4人となるわけですが、並木さん以外の方には監督の方から声をかけたのですか?

杉田 そうですね。全員私が現場で関わったことがあって、もっと活躍の場があるといいなと思っていた人たちです。ボランティアのつもりだったので、自分の仕事とのバランスを考えながら、小規模に進めました。

――監督は普段どんなお仕事をされているんですか? 差し支えなかったら教えてください。

杉田 高校とか大学、あとは美術館などで映画の講師をするのがメインですね。この映画の第4章を千葉で撮っているのも、千葉大学に呼んでいただいて、1年間映画のワークショップをしていたことから始まっています。あとは依頼があれば映画のことならなんでも。

――では映画関係のお仕事をずっとされつつ、俳優さんたちのサイトを立ち上げて。それがどのような経緯で『ひかりの歌』へとつながっていくのでしょうか?

杉田 窓口にしたサイトの名前には“光”という言葉をつけたいと思って、その意味にあたる世界中の言葉を調べたら、デンマーク語の“lys(リュース)”の響きが気に入って、そのまま「lys リュース」という名称に決めました。でも立ち上げたサイトがほとんど窓口の役割を果たせない状況から始まりました。たとえば並木さんの名前でネット検索をしても、結果表示の最後のページの、さらにいちばん下に出てくるんです。ネットの知識もなく始めたので甘さを痛感しました。そのことを前作『ひとつの歌』(11)の出演者でもある歌人の枡野浩一さんに雑談の流れで話したら、枡野さんはネット事情にすこし詳しくて、「サイトの信頼度というのがあって、訪問者が増えると検索も上位に上がっていくんですよ」と教えてくれたんです。さらに「短歌のコンテストをやりましょうか」と提案してくれました。「lys リュース」の“光”という言葉をテーマにした短歌を、たとえばSNSのツイッター上で募集して、短歌1首と筆名に加えて「lys リュース」サイトのURLも載せることを応募ルールにしたら、そこからリンクを辿ってサイトを訪問する人が増えて、検索も上位に行くでしょうと。

『ひかりの歌』――なるほど。枡野さんすごいですね。

杉田 はい。しかもコンテストを開催するのは思っている以上に労力のいることで、枡野さんご自身は選者の依頼が来てもあまり引き受けないと知っていました。その枡野さんが「やりましょう」と言ってくれたことに驚きましたし、ありがたくて、ちゃんとやろうと決めました。結果として、1200首もの応募があって、募集期間中にたとえばGoogle検索でトップに表示されるようになりました。

――そしてコンテストの副賞として映画を作ることになったのですよね。

杉田 ああ、そうでした、映画の話でしたね(笑)、ありがとうございます。サイトの信頼度を上げるという、表では言わない目的があって始めていることなので、せめてみなさんが短歌を創作してくれることに見合ったお返しはしたい気持ちでした。私には映画を作るくらいしかできることがないので、「短歌を映画にします」という副賞にするのはどうだろうと。そんなに深くは考えていなくて、4首の短歌を選べば、「lysリュース」にプロフィールを載せている4人を主演にして4本の短編映画が撮れるし、完成すれば俳優たちの宣伝用動画にもなるから、とてもいいアイデアだと思ったんです。

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ひかりの歌 ( 2017年/⽇本/カラー/スタンダード/153分 )
出演:北村美岬,伊東茄那,笠島智,並木愛枝,廣末哲万,日高啓介,金子岳憲,松本勝,リャオ・プェイティン,
西田夏奈子,渡辺拓真,深井順子,佐藤克明,橋口義大,柚木政則,柚木澄江,中静将也,白木浩介,島村吉典,
鎌滝和孝,鎌滝富士子,内門侑也,木村朋哉,菊池有希子,小島歩美,岡本陽介
監督・脚本:杉田協士 原作短歌:加賀田優子,後藤グミ,宇津つよし,沖川泰平 撮影:飯岡幸子
音響:黄永昌 編集:大川景子,小堀由起子 音楽:スカンク/SKANK カラリスト:田巻源太
写真:鈴木理絵 題字:岸野統隆 配給協力・宣伝:髭野純 宣伝:平井万里子 宣伝デザイン:篠田直樹
配給: GenuineLightPictures 製作:光の短歌映画プロジェクト © 光の短歌映画プロジェクト
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2019年1月12日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開

2019/01/15/18:01 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー
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