#　97　／2002.2.14

第92回

「デロンギ1200W」編（2）

上野動物園やら水族館でペンギンを見る。

…気紛れだ、こいつら。
ハァ…。大丈夫かなぁ、オレ。

そう、オレは今ペンギンものと格闘している（そんなジャンルがあるのか？）。敵はかなり手強い。

はぁ…つくりもんにしよーよ。アメリカから「バットマン・リターンズ」で活躍したペンギンたちよぼーよ。

なわけいかねーしなぁ…。
頼むよ、アジばっか食ってんじゃねーよ、ペンギン君。

　*　*　*　*　*　*

深夜1時半、ラーメンズ片桐仁乱入。
頼んでたジャニス・ジョップリンとペガッサ星人を持ってきてくれたのだ。

アーティスト片桐の塗りは本当すげぇ出来栄え。思わず唸る。

「色の三原色ってあるじゃないすかぁ。あれ混ぜ合わせた黒が俺好きなんですよー。ほらこの右手は赤強めね、左は緑強め、少しだけ色残すとこーなんすよねー」

かなり自慢気に細部を説明してくれる。しかもオリジナル台座付きだ。

「いやぁ…片桐くん、君は天才。ガメラあげる、ゴジラもだぶってるからあげる。あっ、余ってるカネゴンこれ好きな色にしていーから…」

オレもうれしさの余りがんがんあげる。

　*　*　*　*　*　*

オレはその左手を持ったまま凍り付いた。
何故二つあるの？右手入ってないじゃん…。
オフホワイトの素体は片輪状態で哀しげに立たずんでいる。

ビリケン商会、ウルトラマン・マスクAタイプ原型ハマハヤオ作…14年振りのリニューアルだ。

深夜2時、捗らない仕事から逃避して作りはじめたのに…右手がない。いつもより哀しげに見えるウルトラマン・マスクAタイプの横顔。

オレは諦め、熱い焙じ茶を注れ一口啜る。
その時携帯が激しく鳴った。こんなディープな時間まともな電話であろうはずがない。

「はい…」
「あっ、監督ですか？春ですっ！」

映画でスピアー特訓で体中に痣作って役作りした川津春だった。

「元彼ですからっ！！」

…は？
オレはいまいち事情が飲み込めない。

「そーいうことなんでっ！おやすみなさいっ！」ツー・ツー・ツー・…

ハァ…相変わらずの思い込みの強い語り口…机の上の片手のウルトラマン・マスクAタイプが少し微笑んだような気がした…。