#　84　／2001.12.11

第79回

「12月の雨」編（1）

北千住にいる。
生涯二度目である。一回目はロケハンだった。

駅前にかなりいい感じにひなびた甘味屋があって看板に大きく「自慢焼き」とある。じ、自慢焼き？何それ？オレは思わずおばちゃんに100円渡す。
！…これって…今川焼きじゃん！熱々…えっ！？美味いじゃねーか！甘党のオレ的には全然OKじゃん。あなどれないぞ、自慢焼き！…をくわえてタクシーに乗り込み一路東京FC練習グランドへ。
もうスタッフ達は大量の器材を持ち込みグランド関係者が引いている。
助監督長谷が仕切りまくっている。

あっ肉まんだっ！

　*　*　*　*　*　*

「すいません！即刻撮影中止してくださいっ！」
ガングロPM（編注：プロダクション・マネージャー（？））久川が肉まん片手に突っ込んできた。

気が付くとオレらの撮影を取り囲むように近隣住民が「安眠妨害！」「撮影なら何をしても許されるのかっ！」等のプラカードを立てシュプレヒコールをしている。
警官隊が整理に追われガンガン焚いたスモークを火事と勘違いした通報で消防車まで何台も駆け付けている…。

何これ…？
許可出てたんじゃ…ガングロ久川が肉まんを喉に詰まらせ絶叫している。
はぁ…こんな状況で食ってんじゃねーよ。

雨降らしでびしょ濡れのオレらは立ち尽くしていた…爪先が痺れる程寒い夜だった…

　*　*　*　*　*　*

深夜2時…クリハラ先生は疲れ切った凝り凝りのオレの身体をほぐしている。
BGMのラウンジミュージックが眠気を誘い捲る。

はぁ…寒かった…静かにオレは横たわる。
魂のマッサージ終了後クリハラ先生がお茶をいれてくれてチョコを三個くれた。甘味が身体に行き渡る…その時携帯が激しく鳴り慌てて出るとガングロPM.久川が泣き叫ぶように、
「か、監督ぅーっ！あの…あの…」

何？
何が起こるわけ？
この時間に！？

「撮影の大塚さんがっ！」

えっ！ポルシェが事故った！？

「…富谷の交差点でオンナの子強引にナンパしてポルシェに押し込んで…あの…あの…」

…オレは静かに携帯の電源をオフった‥

　*　*　*　*　*　*

あぁ…あっという間に一年が過ぎた…三年分位濃い一年…さっき真っ白に燃え尽きた…ふぅ…風呂に足だけつかってる…件の脚本の権利はチームロメロスペシャルにあり！朗報じゃ！よーし、攻めこんじゃるわいっ！戦じゃあーっ！！