#　131　／2002.6.8

第126回

「紫陽花の上のカタツムリ」編（3）

ライター足立は締切をとっくに過ぎた原稿がようやく上がったので、野田岩の中入り丼（大盛り）と白焼きを前に上機嫌であった。

中入り丼というのは、ご飯・鰻・ご飯・鰻とタブルの板挟み鰻丼のことでここの名物だ。
エンゲル係数の高いオレはこれをよく牛丼代わりに食べる。
別の意味でエンゲル係数の高い足立は滅多に食べれない。

「旨いっす！旨いっす！」と興奮気味に足立はぱくつく。
オレは煮詰まった脚本を足立に手伝って貰うつもりで食わせていたのだが…。

その後部屋で「‥どうかな？」と殊勝に聞いても「なんか甘いもん欲しいっすね！」と話も聞かない。

オレは怒りをぐっとこらえハーゲンダッツを出してやる。
「シナモンくださーい。あっ、固いっすね。入れっぱだったんすかぁ？」
…！
…ぶつぞ
…いや‥締切は明日なのだ。
煮詰まっているのだ。
クニシ君が会社で原稿ずっと待っているのだ。

「ねぇ、どうかな？これ？」ようやく読み始めた足立に「ごめんね。読みづらくて…」などと気を使い、焙じ茶をいれてやる。

「うーん…どうなんすかね。オレの書いた一稿めの方が分かり易いかなぁ…。まぁでも、こーいくのもありじゃないすかぁ…。」

…ふむふむ
…あり、か…。
よーしっ！あり、ね！
よーし！
…てめぇ、よくも…