東北新社SPS部入社。横浜博、名古屋デザイン博などイベント展示映像の制作に関わる。90年よりCM本部に移籍。以降、CMディレクターとして企画・演出。96年より東北新社退社後、フリーランスに。
現在、今秋公開予定映画『MASK DE 41』(マスク・ド・フォーワン)ポスプロ中。
# 25 /2001.6.19
5月末、オレは参宮橋の小さな編集スタジオにいた。
愛飲しているピーススーパーライトボックスタール6mgはすでに3箱めに入った。
申し訳なさそうにはってある禁煙のステッカーが目に付くがオレは全く気にしない。
「カントク、つながんないよ」
「えっ!?」
「だって片桐くん、ここマスク持ってんでしょ。カチャカチャ(Avidの音)、ほら切り返すとウーロン茶飲んでんじゃん。」
「…あぁ…。」
毎日オレはこーやって責められている。スクリプターの長坂女史が「だから、言ったのに…」とブツブツ言ってる。
「いーじゃないすかァ。そんなとこ、誰もみないっすよ。」
「見る。はっきり。」
編集のアベさんは、去年の日本アカデミー賞編集賞をもらったらつ腕だ。オレのそーいういーかげんなとこが許せないらしい。
「ホラ、ここんとこの松尾さん、もう、めちゃくちゃだよ。こんなんじゃ映画になんねーよ。」
えっ…、でも。いーじゃん、おもしろいんだから。
口にしたらオレは、2秒で刺されている。ここは、日本映画村。村の掟に逆らう者は、生きては帰れない。
で、こんな日々がすでに10日以上続いている。この日記が滞っていたのも理解して欲しい…。オレは、いっぱいいっぱいだったのだ。
「冷やし五目ソバで、いーや。」近所の中華から、いつものメニューを頼む。ここの冷やしはゴマだれが美味い。オレは1分30秒できっかり食べ終え、ウーロン茶を飲み干す。
ベランダから見える新宿の高層ビルの明かりが美しい。
オレは、83本目のピーススーパーライトボックス6mgを深く吸い込む。
つ、つらい。何て、孤独なんだオレは。
けっ、どーせ、オレはヒールだからよォ、明日からバンバン攻め込んでやるぜ。
「カントク、あと30分は切んないと、小屋(=劇場)かけらんないわよォ!」
長坂女史が、やはり、五目冷やしソバをすすりながらクールに言い放った。
「……。」
オレはベランダから下に向かってつばを吐いた。