#　106　／2002.3.24

第101回

「春告鳥」編（6）

午前2時過ぎ。
「いーは」で手に入れたラテンのコンピレーション・アルバムを、風呂上がりにくわえ煙草でぼんやりと聞いている。忘れた頃にエアコンが唸りだし生温い風を吹き出している。

来週の今日撮影するプランは全く白紙で、何を撮るべきなのか仕上がりのイメージすら浮かばない。このところ時間に追われる仕事が続きじっくり考えて映像に向き合うことが出来ないでいる。

「仕事が荒れている」気がして仕方がない。勿論仕上がりにはその気配を残さない程度の技術は持ち合わせているから見ている分には分からないが、オレの心の中では言葉に出来ない固まりが沈殿してる。

　*　*　*　*　*　*

豊川稲荷の桜はほぼ満開であった。皇居の桜も綺麗だ。
オレは編集の合間に向かいの虎屋で春限定の羊羹を食べながら一服している。

未だ明日締切の演出プランは微塵も出来ず時間だけが過ぎていく…まずい展開だ。

札幌の村山さんに推薦された本を駅前のピーコックの三階にできた三省堂で見付け心が弾む。しかし落ち着いて読む心境ではなく暫らく鞄に入れたまま持ち歩くことになりそーである。

我ながら職人ぽいカッティングだよなぁ…と反芻しながらも感情が伴ってないことに妙に傷ついてしまう。

「FILM」は実に正直だ。
オレの気分がはっきり映ってしまう。