# 3 /2000.11.25
結局、答えのないままにオレは四谷の駅に取り残された。オレは、その足で、暗いどんよりした気持ちを引きずったままラジオCFのナレーション録りへと向かった。
その仕事は演出としてではなくナレーター“サムソン ムラモト”としての依頼だ。オレはバイトでナレーター稼業もやっている。オレの声は甘くて優しいトロけるよーな声なのだ。もうフラフラのままブースに座らされた渡された原稿を読む。軽いメマイ‥‥。でもオレはプロだ。しっかりせねば‥‥。
『××××!』
「スイマセーン、サムソンさん、もっと明るい感じでお願いしまーす」
『×××△!』
「あーっ、いーっスねー、もう少し優しい感じでぇ」
『△△××△!』
「あのー‥‥」
うるせぃーな!ブツぞ、てめえ、オレは今、暗いんだよッ!さっきガンの告知されたんだよ、しかも治療法は分かんねーって言われてきたんだよ!そんな時に、明るく、優しく読めるか?できねぇーよ!
「あっ‥‥、サムソンさん、いー感じでぇーす。今みたいな感じでもうひとつ」
『はーい!』
『××△△×!』
「オッケェでーす、いただきましたァ‥‥!」
不毛だ‥‥。オレは不毛だ。スタジオを出たオレに秋の明るい午後の陽ざしが眩しい。こんな時に限ってみんなが楽しそーに見えやがる。
で、どーなんだ、オレの映画??ホント撮れんのかよ?
次号に続く、多分。