東北新社SPS部入社。横浜博、名古屋デザイン博などイベント展示映像の制作に関わる。90年よりCM本部に移籍。以降、CMディレクターとして企画・演出。96年より東北新社退社後、フリーランスに。
現在、今秋公開予定映画『MASK DE 41』(マスク・ド・フォーワン)ポスプロ中。
# 4 /2000.12.1
「第1回 後編」からの続き‥‥。
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---事件後2日経ってオレは映画会社に完全理論武装して乗り込んだ。この会社はインディーズとしてスタートしたが、年間かなりの映画を手がけ次々と話題作を作り海外の映画祭で受賞しまくっている新生UWFのよーな新興勢力だ。社長のS氏は、度々マスコミに登場しそのプライドと信念を熱くぶちまき、旧勢力にひんしゅく買いまくるという前田日明ばりにシュートな男である。
そのS氏を会議室で待つ間に、オレはエビアンを口に含む。当然入ってきた社長にグレート・ムタばりに毒霧攻撃をするためだ。昨年、武藤選手をCM撮りした時の直伝の技だ。社長のS氏が会議室が駆け込んできた。グッと腰を落として身構えるオレ。ところがS氏は入るなりオレをギュッと抱きしめ「すまなかった。大丈夫だ。オレのプロデューサー生命を賭けてこの映画はつぶさねぇ!」と吠えた。その奇襲攻撃に、オレは口の中のエビアンをごくりと飲み干す。そうこられるとオレだって抜いた刀も納めるしかない……。
オレは本来、おとなしくて聞きわけのよい人間なのだ。「オイッ!」力強いS氏の怒声を受けておずおずと担当プロデューサー(以下、担P)、F氏が入ってきた。オレは思わず声を失った。担Pは丸坊主になっていたのだ。半泣きで奴はオレの足にすがりつき、スイマセンでした、スイマセンでした、とそのジョリジョリしたアタマをこすりつけてくる。「ど、どーしたんすか?」とS氏を見るオレ。「切った。」とS氏。「いや、切ったって……」。担Pにしたってもう30代も半ば、しかもこれから冬に向かうというのに……。しかし、やはり担Pだ。すかさず上目使いでオレに「似合いますか?」とニヤニヤしながら聞いてくる。なんなんだ、こいつは……。