毎日暑いですね皆さん。仕事ツラくないですか?私はツライです。
たしか1年前にこんな愚痴をこぼしたような気がしますが、6月の猛暑から一転、
妙に涼しい日が続く梅雨モードはともかく、仕事は更にツラく、今や出社拒否寸前どす。そして諸姉諸兄におかれましても、
「生きるっつーことは、やっぱツレエよなあ」と、日に一度は溜め息を吐かれていることと思います。
――というわけで、今回のオススメは疲弊した心身への特効薬ともいえる快作。ナニが凄いって、
イルカの目線そのものでオーストラリアの雄大な海を体感できる、奇跡としか言いようがないカメラワークが鳥肌モノである。
観客は一切濡れることなく、息切れすることもなく、イルカになりきって上級サーフィンの醍醐味を味わえるのだ。
ダイナミックで幻想的な水面下の情景や特筆すべき臨場感、身体に拡がる独特の浮遊感と、
頭の芯はクリアなまま画面に吸い込まれるように陶然としてくる上質の酩酊感等々、この作品が「どんなに気持ち良いか」については、
いくら言葉を尽くしたところで実際の100分の1も理解してはもらえないだろう。
とにかく、見て欲しい。感じて欲しい。5分もしないうちに、
浮世のしがらみなどどうでもよくなること請け合いである。「血が騒ぐ」という表現があるが、
体内の細胞一つひとつが歓喜の声を上げて、
今まで閉じていた無数の触手をわらわらと一斉に光源に向かって開き始めるのが実感できる。と同時に、頭は「理解する」とか
「分析する」といった作業をキッパリ放棄する。母なる海を、ただ感じるために。そして海と空は眼前で一体となる。
煌めく陽射しを纏った、力強くも心地よい水と泡のうねりにうっとりと身体を預けると、
素朴で温かな幸福感にじんわりと包まれてくることがわかるはずだ。
監督・製作は、あの『ビッグ・ウェンズデー』(懐かしいなあ!)で水中撮影をしたジョージ・グリノーである。
もともと本作は仲間内の鑑賞用として、本人が気が向いたときにコツコツと、予算にもスケジュールにも縛られずに(だもんで、
結局10年もかかった)撮りためた夥しいフィルムの集大成とか。つまり、究極の趣味作品なのだ。
趣味であるがゆえに、その拘りはハンパじゃない。昔は重いカメラを担いで、
自らサーフィンしながら撮影するという世紀の荒業で業界を瞠目させた彼だが、本作の製作に際してはボートを使用し、
自分で開発したカメラを何台も使い分けて「イルカの目」を実現させた。このあたりの工夫については、本編の後の「メイキング」に詳しいので、
ぜひ見て欲しい。
この作品は、自然における凄惨な側面には一切触れていない。何となれば、ナニかを啓発したり、
注意を喚起したり、教養を身に付けたりするための映画ではないからだ。「イルカの視線と体感。それがこの映画のすべてである」
(ジョージ・グリノー)という明快なスタンスに、本作の魅力が言い尽くされている。
まさに海の申し子といえるグリノー自身が愉しむため、そして友人を愉しませるために作った作品が、
私たちにもプレゼントされた幸運と幸福を素直に喜び、純粋な娯楽として「波乗り」に興じるというイルカと一体になって、
その命の輝きと躍動感を存分に味わいたい一作である。
(2005.7.14)
主なキャスト / スタッフ
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ドルフィン・グライド E エフマリン(FMARINE)
フリートーク(海岸通り) 特殊な撮影方法により、イルカの目線で、美しい水面下や幻
Tracked on 2005/11/12(土)11:53:26
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