あんにょん由美香
『フィクションのように、ノンフィクションのように』 / 『あんにょん由美香』という作品がとにかく必見の傑作なのだと他人に告げることが、どこかプライベートな経験の告白にも似たためらいを感じさせるのは、林由美香というとらえどころのない広がりをもつ女優を、ごく些細な思い入れから切り取ろうとした松江さんの無謀な試みのしわ寄せなのかもしれません。しかし、そういったあやうさも含めてこの映画を受け止めたとき、やはり見逃せない傑作なのだと大急ぎで... 続きを読む
2009/07/08/02:02 | トラックバック (1) | 「あ」行作品 ,島田慎一 ,特集
アイ・アム・レジェンド
『動く標的、撃ち落とせ!――いま、なぜか、リチャード・マシスン。』 以下の文章は、リチャード・マシスン原作(「吸血鬼」別名「地球最後の男」)、フランシス・ローレンス監督作品『アイ・アム・レジェンド』鑑賞後の、あるアクション/クライム・ムーヴィー・ファン、しかもSFもちょっとかじっている二人――仮に黒岩と大門と呼びます――の雑談の抜粋であります。 大門 クロさん『アイ・アム・レジェンド』どうでしたか?... 続きを読む
2007/12/18/16:14 | トラックバック (7) | 「あ」行作品 ,佐藤洋笑 ,今週の一本
アフタースクール
『切れはあるけどコクのないミステリ』/ 同一シーンを多視点で描くことで予想外のオチに着地させる、という緻密な構成で多くの映画ファンを魅了した「運命じゃない人」(05)の内田けんじ監督の新作は、やはり観客の予想を思いもしない形で裏切る娯楽ミステリに仕上がっている。物語の骨子は恐ろしく単純だ。... 続きを読む
2008/06/05/17:27 | トラックバック (3) | 「あ」行作品 ,仙道勇人 ,今週の一本
フランス映画祭2010レポート/ビガー・ザン・ライフ(人生より大きく)
『ビガー・ザン・ライフ(人生より大きく)』 / 今年で18回目を迎えたフランス映画祭。横浜から六本木に場所を移動し、開催時期も変わりながらも、優れたフランス映画を日本に紹介し続けてきたことに変わりはない。特に昨今の映画の受容の問題として、2000年代後半からいよいよ洋画よりも邦画の興行収入の方が上回るという傾向が顕著になっている。「アート系映画の危機」が叫ばれることが多い状況のなか、アート系映画の配給会社の倒産のニ... 続きを読む
2010/04/02/17:41 | トラックバック (0) | 「あ」行作品 ,「く」行作品 ,「し」行作品 ,夏目深雪 ,映画祭情報
レビュー:『アイリッシュマン』(監督:マーティン・スコセッシ)/ギャングとスコセッシとデ・ニーロの終活/Netflixにて配信中
『ギャングとスコセッシとデ・ニーロの終活』Text By 青雪 吉木 /マーティン・スコセッシの新作がNetflixの製作とは時代も変わったが、アルフォンソ・キュアロンの『ROMA/ローマ』(18)同様、日本では東京国際映画祭での上映で初お目見えした後に、幾つかの映画館でも上映を果た... 続きを読む
2020/10/09/19:37 | トラックバック (0) | 「あ」行作品 ,青雪吉木 ,レビュー
レビュー:『愛のゆくえ(仮)』/ポレポレ東中野にて上映中、大阪、名古屋、京都にて公開決定
『躓きの石としての新たまねぎ』/木村文洋監督の四年ぶりの新作長編『愛のゆくえ(仮)』は、麻原彰晃に代表されるオウム真理教が惹起した一連のテロ事件の被疑者として特別指名手配され、十七年もの長きに渡り逃亡生活を送ったのち昨年末に出頭した平田信と、彼を匿い続けたすえ、自らも相次ぐかたちで出頭した女性信者をモデルにしている。こうしたセ... 続きを読む
2012/12/18/19:13 | トラックバック (0) | 「あ」行作品 ,後河大貴 ,レビュー
レビュー:アバター
『映画の進化に巨星キャメロンあり』 / 構想14年、製作4年――。映画技術の英知を結集して製作された本作は、本年の東京国際映画祭<2009年10月17日~25日>で、完全招待制となる『アバター・スペシャル・プレゼンテーション』と銘打たれた27分間のフッテージ映像としていち早く御披露目され、一般のオーディエンスにとっては長らくベールに包まれていた期待の3D-SF超大作だったが、過日、ついに全世界公開となった。アカデミー賞11部門... 続きを読む
2010/01/04/22:18 | トラックバック (20) | 「あ」行作品 ,鎌田絢也 ,話題作チェック
レビュー:アンチヴァイラル(5月25日公開/デヴィッド・クローネンバーグの息子、ブランドン・クローネンバーグの監督デビュー作)
デヴィッド・クローネンバーグの息子であるブランドン・クローネンバーグの監督デビュー作である。マイケル・マンの娘(アミ・カナーン・マン/「キリング・フィールズ 失踪地帯」、ピーター・ハイアムズの息子(ジョン・ハイアムズ/「ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレー... 続きを読む
2013/05/22/18:09 | トラックバック (0) | 「あ」行作品 ,わたなべりんたろう ,レビュー
哀憑歌~CHI-MANAKO~
『ウサギたちの霊歌』 / 化粧品が開発される過程で、その安全性を確認するために動物実験を行う会社がある(そうでない会社もある)。商品成分の刺激性を調べるために実験用ウサギやモルモットの眼窩に点眼したり、炎症の有無を調べるために皮膚に試験薬を塗ってそのカブレ具合を診たりするわけだ。なんでも... 続きを読む
2008/03/19/07:31 | トラックバック (0) | 「あ」行作品 ,膳場岳人 ,今週の一本
愛の予感
“しるし”はいたるところに / 驚くべき映画である。あまりの潔さに打ちのめされる映画である。このきわだって野心的なフィルムを前に、ひとはいったい何を語れば良いのだろう。14歳の少女が同級生の少女を刺殺した。東京を離れた加害者の母親と被害者の父親は、北海道の旅館で偶然顔を合わせる。そこから二人の「再生」の物語が始まる――といった、映画紹介欄にある粗筋はひとまず忘れてほしい。... 続きを読む
2007/11/14/07:54 | トラックバック (0) | 「あ」行作品 ,膳場岳人 ,特集
愛を読むひと
『愛とは?罪とは?赦しとは?――模範解答のない問いに挑んだ至高の作品』 / (結末に関する記述あり!) この日を待っていた。世界的なベストセラーとなったベルンハルト・シュリンクの著書『朗読者』の映画化『愛を読むひと』が公開される日を。そして見終わった後に心の底からこう感じた。――待っていた甲斐があった!そして、この映画に携わったスタッフ、キャストに「(映画をつくってくれて)ありがとうございました」と心のなかで深々と頭を下げた。... 続きを読む
2009/06/30/20:00 | トラックバック (3) | 「あ」行作品 ,富田優子 ,特集
特集:映画「掌の小説」公開に寄せて:坪川拓史映画の序章
『天然の美とマニエラへの憧憬/坪川拓史映画の序章』 / 2010年、渋谷ユーロスペースにて公開となった『掌の小説』は、川端康成が若き日から四十余年にわたって書き続けたとされる掌編小説集を原作としたオムニバス映画である。ここで取り上げられた掌編には、川端文学の長編小説とはまた一味違う珠玉の詩精神が息づいている。「日本人の心情の本質を描いた、非常に繊細な表現による、叙述の卓越さに対して」という評価を得てノーベル... 続きを読む
2010/04/09/15:46 | トラックバック (1) | 「あ」行作品 ,「う」行作品 ,「て」行作品 ,特集 ,鎌田絢也