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アワーミュージック
http://www.godard.jp/

2005年10月15日(土)シャンテシネにて公開、全国順次ロードショー!


アワーミュージック2 『映画史』(1988-1998)、『愛の世紀』(2001) を経て、ゴダールは本作『アワーミュージック』で着実に、いや飛躍的に前進を遂げている。 73歳の映画作家の肉体に満ち溢れ、 彼をその若々しい創造に駆り立てるエネルギーの源とは何か? それは 「見えないものを映画によって見ようとする」欲求に他ならない。『アワーミュージック』 はまさにゴダール新時代の幕開けを告げる映画であり、 この世界を自分なりのやりかたで捉えてみたいという欲求を持つすべての人々に見られるべき映画である。

 この映画は3つのパートで構成されている。夥しい戦争映像のモンタージュによる約10分間の第1部 「地獄編」、ゴダールがこだわり続けるサラエヴォを舞台に、「本の出会い」 というイベントに招かれた映画監督ゴダール(ゴダール自身が演じている)と、 その講義を聞きに来た女子学生オルガの魂の交感を描く第2部「煉獄(浄罪界)編」、そして第2部で 「殉教」に至ったオルガが、アメリカ兵に守られた小川のせせらぎを歩く第3部「天国編」。

 第2部で、カメラはサラエヴォの活気にあふれた街並を滑るように走る路面電車と、 ビルの壁に残る弾痕を映し出す。ゴダール自身の心にも深く穿たれているであろうその弾痕に、 ユダヤ人の若い女性ジャーナリストが涙する。映画監督ゴダールは訪れた大学の講義の中で、 イスラエルとパレスチナ、ユダヤとイスラムの非対称性を例にとり、「切り返しショット」 という映画の手法を通じてこの世界を支配する対立の構造を捉えなおす試みについて言及する。 そわそわと退屈しはじめた学生たちの中で、ひとりの女子学生(オルガ)はある決心をする。 空港で自ら編集した映像の収まったDVDをゴダールに手渡そうとするオルガ。 そこに収録されていたのは、「地獄編」の映像だったかもしれない。

 自宅に帰って庭いじりをしているゴダールの元に、 オルガの叔父でもある通訳から、 オルガがイスラエルで自爆テロに間違えられて射殺されたという知らせが届く。 それは彼女が選んだこの世界との決着の付け方だった。 彼女が背負っていた大きなリュックの中には、爆薬などとは無縁の、 夥しい書物が入っていたに違いない。

 第3部の「天国編」は、ゴダールが「無私の死」を遂げたオルガのために用意した安息の世界だ。 ビーチバレーに興じる若者たちの手にボールはなく、 若いアメリカの水兵に手首を差し出し通行証のスタンプを押してもらって金網の境界線を越える世界。 そこでは物質はもはや不要で、明るい日差しだけがオルガの背中を照らしている。

 全体に流れるやわらかなトーンは、これまでのゴダール作品にはなかったものだ。 そこにはオルガに代表される若い世代への優しいまなざしが息づいている。映画は観客に 「あなたはどうか」と問いかけながら、私たちがそれぞれの場所で、「私たちの音楽 (アワーミュージック)」を奏でることを待っている。


CAHIERS DU CINEMA 2004年5月号
ジャン=ミシェル・フロドンによるインタビューより


──どうして、このタイトル『Notre Musique』なのですか?

このタイトルは以前から浮かんでいました。そして次第に頭の中で反響しはじめたのです。 階段を下りる足が五線譜を想起させるとは思ってもみませんでした。 ある時アンヌ=マリーがそれを発見したのです。彼女は私よりも優れた「キャメラ・ウーマン」です。 それは、キャメラ(映画)を信じることによって生まれるうれしい驚きのひとつでした。

──「私たちの音楽」とは何でしょう?

それは私たち自身の中にある音楽であり、私たちひとりひとりの在り方なのです。

──でも「私たち」とは誰なのですか?

あえて言うならば、ヨーロッパ人だと言えるかもしれません。でもつねに私たちのまわりには、 ある中心に向かって存在する多くの「私たち」がいます。昔、 私は世界中にいる20万人の友人たちのために映画を作っていました。 今ではきっとその数は減ってしまったでしょうが。


女子学生 オルガ・ブロスキー : ナード・デュー
Olga Brodsky : Nade Dieu

イスラエル人の女性ジャーナリスト ジュデス・ラーナー:サラ・アドラー
Judith Lerner : Sarah Adler

監督 ジャン=リュック・ゴダール:ジャン=リュック・ゴダール(本人)
Jean-Luc Godard : Jean-Luc Godard

通訳 ラモス・ガルシア:ロニー・クラメール
Ramos Garcia : Rony Kramer

リベラシオン紙のジャーナリスト C.マイアール:ジャン=クリストフ・ブヴェ
C. Maillard : Jean-Christophe Bouvet

フランス大使 オリヴィエ・ナヴィル:サイモン・エイン
Olivier Naville : Simon Eine

パレスチナ人詩人 マフムード・ダーウィッシュ:マフムード・ダーウィッシュ(本人)
Mahmoud Darwish : Mahmoud Darwish

スペイン人作家 フアン・ゴイティソーロ:フアン・ゴイティソーロ(本人)
Juan Goytisolo : Juan Goytisolo

フランス人作家 ピエール・ベルグニウ:ピエール・ベルグニウ(本人)
Pierre Bergounioux : Pierre Bergounioux

フランス人作家 ジャン=ポール・キュルニエ:ジャン=ポール・キュルニエ (本人)
Jean-Paul Curnier : Jean-Paul Curnier

エンジニア ジル・ペクー:ジル・ペクー(本人)
Gilles Pecqueux : Gilles Pecqueux

集会の代表 エルマ:エルマ・ドザニック
Elma : Elma Dzanic

インディアン1:ジョルジュ・アギラ
George Aguilar

インディアン2:フェルラン・ブラス
Ferlyn Brass

女性インディアン:ルティツィア・グティエレス
Luticia Guitierrez


◇ 実名で登場する作家・芸術家たち ◇

マフムード・ダーウィッシュ Mahmoud Darwish
追放されたパレスチナ人として生きながら、イスラエル人の市民権を守り続けるアラブ詩人。 パレスチナの離散や抵抗を詠った作品は、世界中のアラブ語圏で読まれている。代表作は「翼のない鳥」、 「パレスチナからの恋人」、「どうして馬をひとりぼっちで放しておいたのか」など。

フアン・ゴイティソーロ Juan Goytisolo
戦後のスペイン文学を代表する作家であり、イスラム文化やアラブ世界への理解の深さで知られる。また、 サラエヴォなどの戦地に赴き、自由や人権の抑圧に対して積極的な発言をする「行動する作家」 と呼ばれている。ゴダールは『フォーエバー・モーツアルト』で彼の著作「サラエヴォ・ノート」 の一節を引用した。

ピエール・ベルグニウ Pierre Bergounioux
1949年フランスのコレーズ生まれ。パリ近郊でフランス語を教えながら、1984年、最初の小説 「Catherine」を出版。 以降ホメールやフォークナーなどの作家や芸術家の評論を含む約20冊の本を出版する。また、 彫刻家としても知られている。

ジャン=ポール・キュルニエ Jean-Paul Curnier
1951年フランスのアルル生まれ。美術やメディア、文化政策に関する研究書を多く著し、また、 小説や戯曲も手がける。ユネスコやフランス文化庁のアドバイザーを務め、最近はエックス・ マルセイユの大学で教鞭をとっている。

ジル・ペクー Gilles Pecqueux
フランス人建築家。1995年にモスタル橋再建プロジェクトに参加を依頼される。 橋の再建を成功させるためにフランス政府にモスタルの技術学校への援助を求め、 若い世代に橋の修復に必要な昔ながらの石割の技術を伝え、破壊前の美しい姿を取り戻すことに成功した。


監督・脚本 : ジャン=リュック・ゴダール Jean-Luc Godard
製作 : アラン・サルド Alain Sarde
     ルート・ヴァルトブルゲール Ruth Waldburger
撮影 : ジュリアン・ハーシュ Julien Hirsch
録音 : フランソワ・ミュジー Francois Musy
     ピエール・アンドレ Pierre Andre
     ガブリエル・ハフナー Gabriel Hafner
美術 : アンヌ=マリー・ミエヴィル Anne-Marie Mieville

2004年/フランス=スイス/カラー/スタンダード(1:1.37)/DTS/ 80分
提供:アミューズソフトエンタテインメント、ギャガ・コミュニケーションズ
配給:プレノンアッシュ
〒107-0062 東京都港区南青山3-10-17 OPERA2F
Tel:03-5411-0880 Fax:03-5411-0833
http://www.godard.jp/

(c)2004 AVVENTURA FILMS - PERIPHERIA - FRANCE 3 CINEMA - VEGA FILMS
2005年10月15日(土)シャンテシネにて公開、全国順次ロードショー!

 

2005/09/22/15:33 | トラックバック (10)
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