(2001 / スペイン / ギレルモ・デル・トロ)
辛くて苦いガキンチョ映画

百恵 紳之助

 チャン・ツィー狙いで池袋をフラフラと歩いていたのだが、これが想像を越える混雑具合で「チェッ、じゃあ見るもんねーじゃん」 とまったく観る気のなかったこの映画を観たのは単にタイトルで一番マシそうだったからという消極的理由なのだが、 筆者のうしろの席に座っていた年の頃14歳くらいの女子中学生とおぼしき二人組みが映画終了後「なんか久々にキちゃった~。まじヤバイ」 と涙ぐんでおり筆者もまったく同感だった。これだから映画は予備知識ゼロで観るに限る。

 いや、 久々にタイトルにダマされたというか相撲を観に行ったらアーチェリーだったくらい間違ってしまったと思うお客さんも多かったのではないかと思うくらい、 「そ~ゆ~映画だったの!?」と思ってしまうのだが、 すかさず気持ちを切り替えて鑑賞できた人は間違いなく前述の女子中学生と同じ感想を持つことだろう。

 この映画は大雑把に言えば「トイレの花子さん」+「少年時代」と言ったところなのだが、「少年時代」 と言うとちょいっと語弊があるがとにかく少年たちの話としてとても良かった。

 怖そうな先生のいる身も知らない砂漠のド真ん中にある孤児院に置かれ、与えられたベッドは幽霊ベッド。しかも変な声まで聞こえてくる。 そんじょそこらのガキンチョだったら即ノイローゼのこの状況の中で、イジメにまであってしまう主人公のカルロス少年だが、 気の弱そうに見えるこの主人公は何気に力強く、イジメのリーダーにも簡単には屈しない。肝試しを命じられても、リーダーも道連れにする。 そんなカルロス少年が徐々にみんなに認めらて仲間になってゆく過程がかなり丁寧に作られており、男子の心を微妙にくすぐる。 男子に限らず女子だってこの時期、転校は言うまでもなく、所属グループをチャンジすることだってヤクザが足を洗うくらい困難なことだろう。 カルロス少年は先生の追及に口を割らなかったり、 罪をかぶったりするのだがそのあたりがあざとくなく自然に描けていてドンドン感情移入できる。

 後半はそんな少年たちがにっくき大人に復讐する話になっていくのだが、その復讐かげんもハンパじゃない。 ホントにガキを怒らせたらここまでやられるですよ。まるでバッタの足とかチギッてる感じで刺しまくる。 殺された友達の仇をうつという構図もノリやすくてオッケー。 みんなで閉じ込めらたところで武器を作っていくところなどワクワクしてしまうのである。

 考えてみれば内戦下という悲惨な状況ではあるが、誤解を恐れずに言えば映画の中の戦争という状況に筆者はワクワクするし、 (要は戦争映画大好き)そんな状況の中、子供にとってはある種密閉された、 ド真ン中に大きな不発弾が突き刺さっているというファンタジックな空間の中で、 復讐すべき大人がいてそして幽霊まで出てくるというこれ以上ないようなワクワク感満点の状況の中で子供たちが生き生きと動いているのだから面白くて当り前である。 内戦下という状況に振り回されてはいるが、決してその状況が子供たちをどれだけ不幸にしたかなんて映画に仕上がってないところが良い。

 欲を言えば子供たちのセックスに対する興味をもう少し描いてほしかった。そういう場面もあるにはあるのだが、 せっかくその空間の中に若い女が一人だけいるのだし、もうちょっと覗きまくるかなんかして欲しかった。 と言うかその女優さんがとってもキレイだったのでもう少し見たかったのだが、まあこれは個人的趣味だ。

 あと、ミンチ―先生のような怖そうな義足のおばちゃん先生がセックスしまくる場面が妙にエロくて良い。 この場面もぜひとも何らかの形で子供たちに知って欲しかった・・・。が、これはさらに個人的趣味だ。

 全般的になかなか辛口なガキンチョ青春映画に仕上がっており思わぬ拾い物をした感じで気分良く映画館を後にしたのだが、 ホラー映画を期待していくと完全に裏切られるからその手の映画を観たい人は行かないほうがいいだろう。

(2004.8.29)

2005/04/30/19:23 | トラックバック (0)
百恵紳之助
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