2006年3月11日(土)渋谷ユーロスペースにて春休みロードショー
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■■■■ INTRODUCTION ■■■■ | |
香港発 100%香港製造大ヒットアニメーション映画『マクダル』とは? 混沌の時代における愛と希望を描いた、ちょっと教育的な要素を含んだ、ブライアン・ツェー(物語)とアリス・マク(絵)原作による絵本『マクマグ成年人童話』がオリジナル。最初はできの良い子ブタ、マクマグを主人公に始まったお話だったが、母子家庭のかなりボーッとしたいとこの子ブタ、マクダルの登場とともに人気が急上昇した。さまざまなバリエーションでシリーズ化された絵本は、現在160タイトルを超える。 そのテレビアニメ化『春田花花幼稚園 マクダルとマクマグ』シリーズ(総監督トー・ユエン、製作/脚本ブライアン・ツェー、美術アリス・マク)が香港のお茶の間で放送されるや、子供たちはもちろん、大人たちをも巻き込む社会現象を巻き起こした。ほのぼのとしたタッチとリアルさとシュールさとナンセンスなギャグが絶妙なバランスで入り混じった独特の世界観が受けるとともに、主人公のマクダルは、マクドナルドや携帯電話、銀行や赤十字のイメージキャラクターになるなど、今や国民的なアイドルになり、キャラクターグッズは香港のいたるところに並んでいる。 テレビシリーズを元に、トー、ブライアン、アリス他同じチームで作られた映画版第1作『My Life as Mcdull マクダルの話(仮題)』('01)は、香港では宮崎駿『千と千尋の神隠し』と同日にロードショー公開され、宮崎アニメをしのぐ大ヒットを記録した。その後各国の映画祭に招待され、いくつものアニメーション映画賞を受賞した本作は、ついにアニメーション映画のカンヌ映画祭と呼ばれるアヌシー国際アニメーション映画祭の長編部門でグランプリを獲得(その年の短編部門のグランプリが日本の山村浩二『頭山』)。香港の子ブタは、見る見るうちに世界の子ブタとして頂点に立ってしまった。 『My Life as Mcdull マクダルの話』の大成功を受け、やはり同じチームで初めて絵本の原作の無いオリジナルストーリーを映画化したのが『マクダル パイナップルパン王子』である。今まで語られる事の無かった、マクダルの父(つまりミセス・マクの夫)=パイナップルパン王子の話を大胆な構成で描いたこの映画は、「ウォン・カーウァイ映画より難解でありながら、チャウ・シンチー映画より爆笑させる」と大人の観客たちを驚嘆させた。そして2005年1月、並み居る強敵を押しのけ、香港映画史上アニメーションで初めて、香港三大映画賞のひとつ《香港電影評論学会大賞》でグランプリを受賞するという快挙を達成してしまったのだ。香港映画史に画期的な1ページが刻まれた瞬間だった。 |
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■■■■ STORY ■■■■ | |
マクダルの住む街では、明るい未来のための都市再開発が進み、古い建物がどんどん壊され、マクダルの通う春田花花幼稚園も取り壊しの対象になっていた。
幼いパイナップルパン王子は、偶然、宮殿から飛び出して旅に出ることになってしまう。彼は何のとりえも無い王子だった。旅の途中、迷子になった王子は、そのまま平凡かつ謙虚な男性として成長する。大人になった王子はコックとなり、若き日のミセス・マク=玉蓮と恋をする。 そんな父親の話を聞いたマクダルは・・・。 |
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■■■■ Review ■■■■ | |
野心作にしてとんでもない傑作『マクダル パイナップルパン王子』 文/ミルクマン斉藤 とにかく可愛い。それは間違いない。二歳になったばかりの私の娘も、「ぶたさん、かーわいいねぇー」なんて喜んでるくらいなんだから。 でもマクダルの可愛さは、あえて言うなら「戦略」だ。どの年代が見ても愛らしさを覚えるキャラクター、当然キャラ・ビジネスとしても大成功、でも内容はというと完全に大人向き。……実はこの十年来、同種のアニメーション的戦略はアメリカや日本にけっこう先例がある。まず万人受けするキャラクターで支持を得て、それを隠れ蓑に(あるいは中身とのギャップを武器に)作者のやりたい放題やるって寸法だ。何物にも囚われぬ子供の目でオトナ社会の矛盾を嗤い、そのいっぽう、子供時代の無垢な天真爛漫を懐かしむというかたちのもの。 しかしマクダルときたら方向性がいささか異なる。端的にいって、シニカル、おおまじめ。現代社会への風刺はあっても、いたずらに面白がって茶化すでもなく、目くじら立ててアンチテーゼを唱えるでもない。ほとんど諦観ともいえる憂鬱な感情があちこちに垣間見えて、多分に内省的・自嘲的ですらあるのだ……ブタにでも託さないと、リアルな真情なぞとても吐露できないとでもいうふうに。やはりこれは'60年代生まれならではの、過去の政治的熱狂に対しても未来の希望的展望に対しても醒めきってしまった世代の感覚だろう。つまり「マクダル」とは、脚本:ブライアン・ツェー(謝立文)、監督:トー・ユエン(袁建滔)、画:アリス・マク(麥家碧)の観念的な自画像、あるいはその世代の見解からなる香港史なのだ。 TVシリーズ、そして1作目の長編映画を経て製作された『マクダル パイナップルパン王子』は、そんな彼らなりのやりたい放題を存分にやってのけた野心作であり、ちょっと類例のない傑作である。戦略だのマーケティングだのといった下世話な次元はもはや越えてしまっていて、ファンのほうが「こんな無茶やって大丈夫なの?」と心配しちまうくらいだ。ま、未だマクダルの可愛ささえ普及していない日本で、いきなりコレを劇場公開してしまうという暴挙にもビックリするのだが(笑)……そもそも本作の主人公って、マクダルじゃないんだよね! こんなタイトルを聞かされりゃ、きっと誰もが「マクダル」=「パイナップルパン王子」と思うに違いない。だがしかーし、「パイナップルパン王子」とはマクダルの"不在の父"マクビンなのである! さらに、これを言ってしまっちゃおしまいのような気もするけれど、マクビンは王子でもなんでもない。ハリー・ポッターに影響を受けて(どこが!)マクダルのお母さんが勝手につくった、おとぎ話の中のマクビン像なのである。そこには自分たちを捨てて去ってしまった夫への恨みつらみ、ともすると現実から逃避しがちな「男」という存在への皮肉、母子家庭で育った息子マクダルへの言いわけetc.といったものも幾ぶん含まれているだろう。 そもそも一介の小市民に過ぎないマクビンの出自を、ヴォルテール「カンディード」風の貴種流離譚になぞらえることからして毒がある。だが日常に埋没していくことのぼんやりした恐怖に耐えられず、現実から夢の中へと逃避していく"王子"の姿は、経済成長期を生きることに疲れ果てた「父の世代」一般の姿へとやがて重なっていくのだ。たとえばフルーツ・チャン(陳果)が『花火降る夏』('98)で描いたような、中国返還後の香港に居場所を見失った世代の哀歌とみてもいい。 それが象徴的に、なんとも残酷に描かれるのが「タイムマシン」のシークェンスだ。過去に戻ろうとはしたものの、着いた時間は……。ああ、辛い(涙)。「哀歌」というだけあって特筆すべきは音楽であろう。マクビンの彷徨の背後にずーっと流れるのはマーラーの交響曲第1番「巨人」。その第3楽章、いみじくも「葬送行進曲」と呼ばれる音楽がこれほど切々と聴こえた例はない。実は原曲の構成はそのままに、細やかに計算されたアレンジが成されており、ギターやクラリネットといった音色がマーラーとは不可分のユダヤ的要素をいや増してコレまた意味深なのだ(断言するが、スティーブ・ホー(何崇志)は絶対企んでいる)。この陰鬱さが、直後の園長先生の訓示「もう忘れろ、もうやらなくていい、もう十分だ、もう考えるな、過去のことだ忘れろ、仕方ないんだ、もういろいろやらなくていい」の呪いのようなリフレインへと繋がっていく展開ったら見事というしかないだろう。 ただ本作が、ひたすらにネガティヴな映画かというとさにあらず。それどころか、おそろしいくらいにタフな、新世代の心意気をビシビシ感じさせるところこそが何より素晴らしいのであるっ!!!! 映画の最後でマクダル=作者はこう宣言する。「パパは"過去"にいた。ママは"未来"にいた。僕だけが"現在"(<いま>とルビ)にいる」……この言葉に僕は、イギリスにも中国にも拘泥せず、尻尾を振るつもりもない香港新世代の矜持を感じて粛然としてしまう。クレジットに「本動画100%香港製造」と大書するのは、製作環境についてだけの自負じゃないのだ。 しかもこれは香港人むけに限定されたメッセージではない。貧乏ゆすりでとりあえず今を誤魔化しながらも、いずれはそれさえも自分らしさの表現へと昇華していこうというポジティヴで創造的で、しかも柔らかなパワー。これに感涙しないヤツは"いま"を生きる資格がない!……とさえ思う私であるのだ。 |
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■■■■ CAST/STAFF ■■■■ | |
2004年度香港電影評論学会大賞グランプリ受賞作品 [スタッフ] [声の出演] 2004年/香港/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビーSRD/広東語(日本語字幕)/78分 2006年3月11日(土) 渋谷ユーロスペースにて春休みロードショー
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主なキャスト / スタッフ
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マクダル パイナップルパン王子 E 日っ歩~美味しいもの、映画、子育て...の日々~
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Tracked on 2006/03/25(土)13:28:37
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