~特別企画~

2011年度マイ・ベストムービー【1/2】

佐野亨 鈴木並木 デューイ松田 夏目深雪 若木康輔


監督失格 Blu-ray(特典DVD付2枚組)出演: 林由美香 
監督: 平野勝之佐野 亨

今年もあまり映画を観ていない。それでも素晴らしい作品にめぐり会うことはできた。
ブンミおじさんの森』『ファンタスティック Mr.FOX』『イリュージョニスト』『引き裂かれた女』『ブルーバレンタイン』『ピラニア3D』『名前のない男』『マイ・バック・ページ』など。
なかでも、誰かと一緒にスクリーンを眺めることの素晴らしさをあらためて実感させてくれたこの2作品を2011年のツートップとしたい。

愛の勝利を ムッソリーニを愛した女 [DVD] 監督: マルコ・ベロッキオ 出演: ジョヴァンナ・メッゾジョルノ鈴木 並木

  • 『親密さ(short version)』(濱口竜介監督
  • 愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』(マルコ・ベロッキオ監督
  • 『ふゆの獣』(内田伸輝監督
  • ステイ・フレンズ』(ウィル・グラック監督
  • 『銀鉛画報会』(大西健児&馬渕徹監督
  • 『ボクシング・ジム』(フレデリック・ワイズマン監督
  • *順位なし。並びは見た日付順。

こうした1年のまとめの投票とは、自分の美学と政治的配慮と大喜利と、この3つの要素が適当な割合(時と場合によって異なる)で配合されているものだと思っています。そんなわけで、一応新作として扱ってもよさそうな映画の中から、とりあえず6本選んでみましたが、年間ベストというよりは、2011年もやっぱりぐらぐらしまくっていた自分の映画観をひとまず仮止めする6本のピン、と呼んだほうがいいかもしれません。無理やり共通点を見出してキーワードを付すならば、「反(or脱)ウェルメイド」、とでもなるでしょうか。あるいは、「なにもそこまでしなくても」。以下簡単にコメントを。

『親密さ(short version)』 2011年、ようやく濱口監督の長篇を見ることに成功(これと『PASSION』)。と書くと、大げさな印象を与えるかもしれませんが、作品の持つ馬鹿力と、上映機会の少なさとの反比例ぶりは、現代日本で1、2を争うのではないでしょうか。ショート・ヴァージョンといいながら2時間を超える本作は、濱口が書いた脚本を別人の演出で舞台で上演し、それを複数のカメラで撮影したものを素材にして映画へと構成したという、こうして説明をしている時点ですでにややこしい成り立ち。それでいて、いわゆる普通の劇映画をも上回る厳密な画面構成と怪物的スケールの日常とがごく当たり前のように実現してしまっているのだから、おそれおののくしかありません。このヴァージョンは全長版に取り込まれるはずで、とするとトータルでは4時間か5時間になると思われます。一刻も早く、幅広く見られるような形で公開されることを望みます。ついでにINTROでのインタヴューも希望。

『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』 生気がうせたような青白い色彩なのに、どこを切っても真っ赤な血がどくどくと噴出してくる映画。あまりの美しさに、耐え切れず何度か爆笑してしまった。ジャングルの記録映画に興奮して猿のように跳ね回る子供たち、スクリーンからの政治的メッセージに呼応して勢いよく起立する男たち、聖堂を流用した?病院の天井に投影される映画、引用された各種の(歴史的には正当でないものも含む)記録映像などなど、人間と映画との熱烈な交流の描写も忘れがたい。蛇足ながら、自分はこんなに血液が濃い民族とはとてもつきあえないな、と思った。

『ふゆの獣』 登場人物はほぼ、男女4人のみ。話題はずっと、ぐちぐちゃにこんがらがった彼らの恋愛関係。広がりも深みもあったもんじゃないが、対象に極限まで接近し、首を突っ込み、うんざりするほどひたすら観察を続けることで一点突破。許容範囲をはるかに超えるロウ・ファイな音響と映像に、口をぽかーんと開けたまま見ていたら、修羅場がいつしかひょいっと裏返って笑いへと転化。ラスト、夕陽の色のデジタルなにじみが、なぜかゴッホに見えてきて、泣けた。今後の内田監督には、いい意味で、逆に、まったく期待していません。誰も、ニール・ヤングに新しいなにかを求めたりはしないでしょ。それとおんなじことです。

ステイ・フレンズ [Blu-ray] 監督: ウィル・グラック 出演: ジャスティン・ティンバーレイク, ミラ・クニス『ステイ・フレンズ』 たとえば、脚本はいつ書き終わったことになるのか、という問題。作者(たち)の中でとりあえず納得がゆく場所に到達した時点でなのか、あるいは〆切が来たらそこで強制終了なのか。この作品の脚本はグラック監督、キース・メリーマン、デヴィッド・A・ニューマンの共同名義になっていて、具体的な創作の過程はわからないものの、思い浮かぶのは、3人がお互いの担当部分に容赦なくツッコミを入れあう姿。つまり、「ここ、まだスキマがあるよね。もうひとネタ入れられないの?」「君の書いたこのシーンこそ、ただしゃべってるだけじゃん。工夫が足りなくないか?」といった具合に(想像です)。物理的に可能な限り、できるだけ大量のネタを投入しようとする異様なまでの意志が生んだ、ウェルメイドの度が過ぎて、気楽に楽しむことを許さない怪作。映画というよりもむしろ、欧米のヒマな学生がチャレンジしたりする、「電話ボックスにどれだけ人が入るか」のゲームに近いと思いました。ジャンルの爛熟とはこういうものなのかもしれません。

『銀鉛画報会』 山形国際ドキュメンタリー映画祭での上映にあたっては、「終焉を迎えつつある8ミリフィルムによる8ミリフィルムについてのジャムセッション」とだけ告知されていて、それだけではどんな映画か見当もつきませんが、総勢10人以上(村上賢司、藤原章、しまだゆきやす、中川究矢など)によって提供された8ミリ素材を、大西と馬渕が自在に(勝手に?)取捨選択、つぎはぎしてまとめたもの。どこが誰のパートなのかはぼんやりとしか明示されず、しかも上映されるごとに毎回微妙にヴァージョンが異なると思われる本作は、固定された作者やヴァージョンの概念に揺さぶりをかけてきます。もっと簡単に言えば、映画はやわらかい生き物! 穴倉で焚き火を囲んでおもしろネタを披露しあう原始人たちに、簡素なサンプラーを与えて作らせたヒップホップのミックス・テープみたいな、ざっくりとした味わいの1本。こうした成り立ちの映画について、「監督」として大西と馬渕の名を挙げるのが適切かどうかは、保留にしておきます。

『ボクシング・ジム』 テキサス州オースティンのボクシング・ジムが、老若男女の有象無象がざっくばらんに集まってくるきわめてアメリカ的な場として描かれていることにまずは驚かされる。肉体/映像のリズム感はしばしばダンスに近接。語られるだけで画面には登場しない人物たちの扱いは、噂話が神話へと蒸留されていく過程を目の当たりにする思い。90分という尺もソリッドに、蝶のように舞い、蜂のように刺す、R&B(=リズム&ボクシング)映画。

さて。渋谷でのワイズマンの特集上映の期間中、ツイッターで、ワイズマンが日本で撮るとしたら何を撮ってほしいか、とかいったつぶやきが見られたけれど、外国映画を見るたびに「日本(映画)ではどうしてこれができないのだろうか」「これを日本(語)でやるとしたらどうなるか」と考えてしまう身としては、なんだか違和感があった。それよりもわたしは、日本の映画人たちがワイズマンのやり方を盗んで撮った、『パチンコ』『機動隊』『新興宗教』なんかが見てみたい、と夢想する。

佐野亨 鈴木並木 デューイ松田 夏目深雪 若木康輔
2012/01/17/22:58 | BBS | トラックバック (0)
佐野亨 ,鈴木並木 ,年度別ベスト
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