村本 天志

長い間、愛用していた筆箱が見つからない。
無くす訳がないのに、どうしても見つからない…。
以来、どうにもうまく描けない。
その中にはお気に入りの文具が入っていた。
新しく筆箱を買ってみたんだが、
新しく文具を買ってみたんだが、しっくりこない。
何を描いても気に入らない。
大してうまい絵でもないし、
ましてやコンテなんて発表するわけじゃない。
ただの設計図に過ぎない。
なのに、もう何日も描いては破り…。
シャーペンの芯を変えた。鉛筆も試した。
ボールペンもマジックも試した。
以前使ってたのも買い直し試した。だけど、うまく描けない。
このまま見つからないと、
もう一生コンテなど描けないような気持ちになる。
筆箱…筆箱…。苦楽を共にした愛しい筆記用具たち…。
ついでに愛用のストップウォッチも壊れてしまった。
筆箱…筆箱…頼むから見つかってください。
僕を一人にしないでください。
あなたなしには、僕はひとコマもコンテなど描けはしない…。
土曜日の深夜、僕の机の上には紙屑の山。
丸めた紙は僕を軽蔑するように増え続ける。
筆箱…筆箱…いったいどこにあるのだろう？
いったい、いつ僕はコンテを描けるのだろう？