百恵 紳之助

　「あー、友達欲しい･･･」なんて30越してかなりの本気感を漂わせて呟いてしまう映画だった･･･。 「おい、俺は友達だぜ」とここを読んで思ってくれた人がいればすごく嬉しい。嬉しいけど、きっとお前もこの映画を見れば「あ～、 俺も友達欲しい･･･」と呟くに違いない。ホントここまでダイレクトに友達欲しいと思わせてくれる映画はなかった。あまりに痛い。俺は。

　生きていく上で何か問題にブチ当った時に、自分と同じくらいその痛みを分かち合ってくれて、 尚且つ自分の時間を割いてという意識なくその問題にぶつかってきてくれる他人で考えられるのはまず親。いや親でもそうしてくれない、 できない、する気もない親はいくらでもいるだろうけど。この映画の登場人物の中にもいるし。でも彼女たちは親以外に三人もそんな人間がいる。 生きていく上でこんなに力強いことはないだろう。あまりに羨ましい。

　四人の主人公の女の子たちは生まれる前からずっといっしょ。なぜなら母親たちが同じ妊婦の体操教室に通っていたから。で、 16歳の夏に初めてバラバラになったと言うのだからそれまでの15年間は夏休みもほとんどいっしょに遊んでいたのだろう。 ほとんどっつーか全部。「･･･気持ちわり！」なんて思うでしょ普通。 まあでもその15年間は猛スピードで描かれるわけだからして全然気持ち悪くなりようがない。そんで迎えた16歳の夏。 彼女たちはジイちゃんバアちゃんのとこに行ったり、離婚して出てったパパのとこに行ったり、サッカー部の合宿に行ったり、 残って映画作ろうとしたりして、初めてバラバラになると。で、バラバラになる前に彼女たちは一本のジーンズを買う。 これが体型のまったく違う四人なのになぜか四人にピッタンコというミラクルジーンズ。 そのジーンズを一週間ごとに各人に回すという約束をしてそれぞれの地に赴くわけです。 そしてその地で彼女たちは今まで自分の抱えていた問題に直面してみんなたった一人で立ち向かう。 勇気をくれるはずのジーンズもあんま役立たないとか次の人に手紙を書いたりするわけですが、 やっぱ見ているこっちとしてはそのジーンズがあるだけでどれだけ勇気付けられるか！とか思ってしまうのです。
　俺にもジーンズに代わる何かはないかなんて思いながら見ていると、上に書いたように「いや、まずこーゆー友達がいない･･･」と暗くなり、 いやその前に俺は彼女たちのような「一夏の経験」すらしていないと焦り、いや待てそういうポイントすらなかったか･･･。 それに彼女たちのように何気に重いものを抱えたりもしていなかったし･･･。

　四人のうちシンデレラストーリーを与えられたコ以外は何気に抱えているものが重かったりする。 イケメン漁りが好きな超健康サッカー美女の行動には母親の自殺が影を落としていたり、離婚したためにめったに会えない父親を、 でもどうしても父親として見たかったり、 ゴーストワールド的ななんとなくヒネた娘達には一番しっくりきそうなコは実は自分の殻を破って世間と接したいと思っていたり。 抱えているものが重いというか、その問題とみんな真剣に格闘しているから彼女たちが素直に気持ちを吐露する場面で胸をうたれるし、 やはりあのジーンズは魔法のジーンズだったんだと思わせる。四人以外に一人だけそのジーンズをはく重要な登場人物がいるが、 俺にもはかせてくれと思わずにはいられない。

　とりあえず自分が友達だと思ってる数人と今からでもこのジーンズごっこをしてみるかと思ったが、多分送って来ないだろう。 小包出すのって面倒臭いし、それに「え、本気だったの？」とか言われるのもこの映画を観たあとでは本気で怖い･･･。ああ、友達、欲しい･･･。

(2005.10.17)