アイドルは消費され、モードは繰り返される。 アイドルたち |
■■■■ INTRODUCTION ■■■■ |
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■■■■ STORY ■■■■ |
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■■■■ REVIEW ■■■■ |
たまげた。度肝を抜かれたとはまさにこのことだ。世に「カルト」 と呼ばれる映画は数あれども、本作ほどそう呼ばれるのに似つかわしい作品はないのではないだろうか。この映画については、 ショウビジネスの虚飾と欺瞞を暴いた先見性や60年代の若者風俗、とりわけファッション・モードの再発見、 或いは本作初公開時に燃え盛っていた五月革命をもたらした当時の学生達の反体制意識や反骨精神の発露など、 オカタイことはいくらでも言うことはできるかもしれない。だが、 ファッションやら何やらにそれほど造詣が深いとは言い難い筆者に言わせてもらえば、そんなことはどうでもいい! 本作に登場する三人のアイドル「狂乱ジジ」 「短剣のチャーリー」「魔術師シモン」(このニックネームからして既に現代的な「アイドル」 観を逸脱しまくってる)がその身を包む原色バキバキ・キメキメの超ポップなファッションを見よ!オシャレ?イカしてる?否、 どう見てもイカれてる! それに輪を掛けてぶっ飛んでいるのが、 この三人の歌とパフォーマンスである。元々、監督のマルク’O自身がカフェ・ テアトル形式(カフェを舞台に見立てた即興劇)で行った舞台を基にしているとはいえ、 三人が身の上やら個人的な心情をバックミュージックなど殆どお構いなしにひたすら叫び、がなりまくる姿は、 歌というよりもポエトリー・リーディングに近い。しかも、 その"歌"に合わせて披露されるダンスがまたなんと珍妙奇天烈なことか! 殆ど一人トランス状態でオーディエンスの追随を許さない異次元的ステージングは驚愕必至だ。特に、 現代的な感覚から完璧に逸脱しまくっているのが、紅一点のピュル・オジェによるノリノリのパフォーマンスだ。過激で奇抜…… と言うか、そのニックネームの通り半狂乱のように髪を振り乱し、踊りまくる姿に悶絶すること請け合いである。 とにかく作品を構成するあらゆる要素がかくも常軌を逸していながら、 どこまでも真剣に本気で製作されている本作の如き作品は、 恐らくフランスはもとより世界中を探してももう二度とお目にかかることはあるまい―― そんな気にさせてしまう文字通り空前絶後な本作を、敬愛を込めて敢えてこう呼ばせてもらいたい。 最高級のフランス製おバカ映画である、と。本作の余りにも衝撃的に過ぎる幕切れを見逃すなっ! |
(Text by 仙道 勇人) |
■■■■ CAST/ STAFF ■■■■ |
ピュル・オジェ/
狂乱ジジ 監督・脚本:マルク’O 1968年/フランス/カラー/1:1'66ヴィスタ/モノラル/
105分 |