ジョニー・トーの映画を一本も見たことがないくせに、この映画のレビューを書くなと怒られそうです。
自分の周囲にはこの監督の作品が大好きだという人間が非常に多いですが、この「柔道龍虎房」 という映画でジョニー・トー監督と出会った自分はちょっと不幸だったのかも知れません。しかも「姿三四郎」だか、「姿三四郎」 を作った黒澤明だかのどちらかにオマージュを捧げた作品なのですが、姿三四郎は見たけど、 ほとんど覚えておらず退屈だったという印象しかありません。 したがって柔道は日本選手権レベルであれば会場に見に行くくらいはするという以外では、 この映画を見る資格もなかったんじゃないかと思ったりしてしまいました。いえ、それすらもここに描かれている柔道を見ると、 資格としては不適当だったかもしれませんが…。まあでもプライドで活躍中の吉田や瀧本が良い映画だったと言っているようですから関係ないか… 。
かつては柔道で鳴らした選手だったが、 今は落ちぶれてバーのマスターにおさまりながらバンドでギターを弾いている主人公。 そんな主人公のもとに歌を歌わせてくれと現れる歌手志望の女、 そして柔道のツワモノたちに決闘を挑みまくっているような柔道バカの男も勝負を挑んでくる。 そんな二人との触れ合いを中心に立ち直会った主人公が、ラストでヘンテコリンな関節技を使うエラい強い奴に勝負を挑むというお話。
出会いが不幸だったということは、つまらなかったのかと言われるとそうでもなく、 ベタな話をこれでもかってくらいにケレン味たっぷりに描いており、たまにはさまれるトボケたギャグもいい味出して、 そういうのが嫌いじゃないという人にはそこそこ楽しめるかと思います。
この三人を訪ねてくる連中がバーで偶然に居合わせて、三人と話す場面など、
混乱しそうになりながらもカッコ良いと思いました。
主人公の師匠のセガレで、「俺が姿三四郎で、お前が檜垣」が口癖の奴も妙に面白い。コーフンするとすぐに「やればできるさ~、
できなけりゃ~」と流暢な日本語で歌い出す(なんかテレビ版姿三四郎の歌らしいです)。
乱闘バックに奴がこの歌を歌い出す場面なんかおかしくてしょうがない。で、そこに佇んでいる凄腕柔道家のレイ。
凄腕と言っても技は自分で言うように一つしかない。自分の足を軸にして相手の肘を極めるその間接技は、ほとんどプロレス。と言うか、
この映画の中ではまともな柔道は描かれておりません。まあ、そんなことに腹を立てる人なんかハナから相手にしていないのでしょうが…
にしてもちょっと迫力不足な感は否めませんでした。ただ、相手の腕を利用して、その相手の首を締める柔道バカの技と、
その柔道バカが主人公と初対決する際に偶然の産物かのように決った裏十字とクルックヘッドシザースを足したような技は良かったですが。
いえきっとそんなとこは見所ではないのでしょうが…。
まあ、とにかくこれからジョニー・トーを見ようという人にはあまり向いていない作品なのでしょう。 おそらくこれまでジョニー・トーの作品を見つづけていれば、この作品も違った鑑賞の仕方があるのでしょうが、一本の映画としては、 キワモノ系の映画が好きな人はちょっと見てみて下さいとしか言えないのでありますが…。
(2006.5.15)
主なキャスト / スタッフ
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