恋愛小説と言えばの江國香織原作、こんな地味なツクリなのに話題作だわんの話題作。今や、 若い女性の教祖的存在でもある江國氏だが、すいまへん、ほとんど読んだコトないです、このヒトの作品。だって恋愛小説なんだもん。 一番興味のない分野なんだもん。小説のみならず、恋愛映画も基本的に興味ないです。つか、わたくしとしては、 世の人々はなんでそんなにも(バーチャルにせよ)サカリがつきっぱなしなのか、わからん。
本作のテイストおよび鑑賞後の感慨は、まさしく世評のとおり。皆様が言い尽くしてくださっているので、 特段付け加えるコトもございません。子どもがそのままでかくなったような間宮兄弟。兄はビールメーカーの技術者で、 下戸の弟は小学校の校務員。実に堅実な職種である。生活も堅実そのものであり、二人は日々仲良く野球中継を観戦し、銭湯に出掛け、 億劫がりもせず実家へも帰省する。反抗期もなく、自身のありように疑問を抱くこともなく、30歳を過ぎても、 いまだに嬉々として母親の誕生祝を盛大に挙行しちゃったりもする。こんな国民ばかりだったら、 さぞかし政府はラクだろうなあと思ってしまうほど、無害な良い子たちだ。あ。厚生労働省だけはシブイ顔をするかも。 ただでさえ少子化まっしぐらなのに……。
彼らは一応「恋愛」はするのだが、そんな大それた願いがかなうワケがない。つか、 既に去勢された彼らにイロコイは無理だし必要ないでしょう。とても、植物的。それも実生ではなく、せいぜいが挿し木。つまり、 クローンでしか増えそうもないように見える。女性との「おつきあい」を試みる彼らだが、それも理屈ぬきでそうしたい、ではなく、 そろそろそうすべきだから検討せねばって程度の動機付けしかないようだ。そりじゃ、無理。余計なコト考えなくても、兄弟二人、 こんなに愉しく暮らせているなら、ずっとこうして生きていけばいいじゃん。ねえ。
この、見事に二人だけで自己完結しちゃっている世界を好ましく思うか、 あまりに幼稚で閉塞してるだろと思うかは、個々の好みだろう。筆者自身は、 野望を抱かず毎日の暮らしを感謝と共に享受できる実直な人々が好きなので、結構、好もしく思うです。山本周五郎みてえ。すいません、 ぜんぜん違いますね。もちろん、この「好もしさ」は異性に対するソレではない。皆さんが仰るように、彼らは「いい人なんだけどねえ」 の典型であり、逆立ちしても異性にモテることはありえまい。でも、友達になったらいいだろうな。そしてそれは、 あながち悪いことではないと思うのだけれど。
そんなことを思うのは、不機嫌がデフォである人々が増えたような気がしてならないからかもしれない。 トゲトゲしている。ちょっとしたことですぐキレる。これと言った原因はないのに、鬱屈した感情を持て余している。 それが社会のせいか家庭のせいか食い物のせいかはわからないが、 他者に対して理不尽に非寛容な人間のほうがずっと幼稚であり閉塞しまくってることは言うまでもない。 生きてることが愉しいなんてほとんど思えない筆者ではあるが、それでもヒトに八つ当たりする権利などないことは百も承知だ。 ツライのは自分だけじゃない。だから、痩せ我慢するのだ。ところがこの兄弟は実に軽やかに生きている。痩せ我慢ではなく、ホントに毎日の 「発見」や「儀式」が嬉しくてしかたないのだ。これこそ究極のファンタジーだろう。
だもんで、どうせファンタジーなら余計な女っ気などどこかに置いといて、もっと彼らの「ありえねえ」 世界を徹底して淡々と(しかししつこく)描きとおしてほしかったのは、単なる個人的趣味です。ハイ。すいませんねえ、 だから恋愛仕様に興味がないんだってば。
一番笑えたのが、本作の予告編が『フーリガン』だったこと。 命がけの暴力に淫してないと生きてる気がしないという『フ~』の暴力的本能ジャジャ漏れの対極にある本作。 国連あたりでこの二作品を連続して上映してほしいもんです。彼らはどのような感慨を抱くでしょうか。究極の戦意喪失映画として、 胸を張って輸出したい一作です。
(2006.5.23)
主なキャスト / スタッフ
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