西山洋市Presents!
役に立つ山中貞雄
傑作『丹下左膳餘話 百萬両の壺』でメルヘンとしての映画の限界点に到達し、『河内山宗俊』ではメルヘンからの離脱を試み、『人情紙風船』ではついにメルヘンから断絶した山中貞雄の戦いは、悪夢からの覚醒のような不安で不安定な目覚めの朝でフリーズしたままだ。だが、その不安と不安定にこそ日本映画の可能性が内臓されている。
29歳で死んでしまった山中貞雄は、生き残ることができた三本の映画で、いま生きているすべての者に、日本映画の観客そして作り手としての覚醒を促している。
料金
一般/1,200円 シニア・学生/1,000円
会員/800円 水曜日サービスデー/1,000円均一
http://www.laputa-jp.com/
☆ トークイベント
各作品の上映初日(5月30日、6月6日、6月13日、6月20日、いずれも土曜)に西山洋市のトークがあります。
●各回定員入れ替え制 ●午前10時15分より当日の全回分の整理番号付き入場券を発売。定員48名になり次第、締め切り。
●上映開始後10分を過ぎての入場は不可。
●作品により画像、音声が必ずしも良好でない場合があります。
2009年5月30日(土)~6月26日(金)まで、
連日21:00よりレイトショー上映
丹下左膳餘話 百萬両の壺 ( 1935年[S10年26歳]/日活/白黒/92分 )
■原作:林不忘/脚色:三村伸太郎/撮影:安本淳/音楽:西梧郎■出演:大河内傳次郎、喜代三、宗春太郎、沢村国太郎、花井蘭子、深水藤子、高勢実乗、鳥羽陽之助
山中貞雄は小さい映画を好む。百万両の隠し場所の地図が塗りこめられた壷の探索競争という表面的にはスケールの大きそうな話も、江戸裏町の町内を往来する人と物の行き違いとすれ違いだけで面白い映画に出来る。大袈裟な舞台も仕掛けもいらない。その時、江戸の町内には不思議な遠心力が発生し、小さくて複雑怪奇な宇宙になる。そこには人間業を超えた行いをする怪人物も棲んでいる。いまどきのロード・ムービーもストリート・ムービーも目ではない。しかも、これは、物語の王道であるみなしごの成長譚にもなっている。怪物・丹下左膳に守られた孤児が一時も離さず抱えた壷が、いかにして子供の成長を促したか。
河内山宗俊 ( 1936年[S11年27歳]/日活/白黒/81分※16mm )
■原作:山中貞雄/脚色:三村伸太郎/撮影:町井春美/音楽:西梧郎■出演:河原崎長十郎、中村翫右衛門、市川扇升、山岸しづ江、市川莚司(加東大介)、原節子
これもまた江戸裏町の狭い町内を人と物がぐるぐる回っているうちに遠心力でドラマに加速度がつき、不良少年のちょっとした非行が、侍とのいざこざ、心中事件、やくざとの揉め事、少女の身売り、大名屋敷での大博打、親分襲撃、大立ち回りと、とめどなく膨張してゆく小さな宇宙を作り出す。主役は痛快な悪党の河内山と好漢の金子市だが、一方で不良少年が大人にならざるを得ない過酷な通過儀礼の物語を描いている。粋がって大人ぶるが実はモラトリアムな少年広太郎を命がけで成長させんとする大人の男たちは何を願ったのだろうか。
人情紙風船 ( 1937年[S12年28歳]/PCL(東宝)/白黒/86分 )
■原作:三村伸太郎(河竹黙阿弥『髪結新三』を翻案)/撮影:三村明/音楽:太田忠■出演:河原崎長十郎、中村翫右衛門、山岸しづ江、霧立のぼる、坂東調右衛門、市川笑太郎
山中貞雄の遺作となったこの映画では、もはや子供や少年の成長譚は描かれない。描かれるのは中途半端な大人になってしまった二人の男の迷走である。一人は本職の髪結いをサボって自堕落な生活を続ける遊び人の新三。もう一人は浪人の身で妻と貧乏長屋に暮らさざるを得ない侍の海野。身分も育ちも何もかも違う二人がたまたま同じ長屋で隣り合わせに住まっているところから、新三と地回りの親分とのなんだかんだの確執と海野の絶望的な就職活動の惨めな結果が、これまた江戸下町の町内でシンクロして暗黒の小宇宙が出現するのである。
戦国群盗傳 ( 1959年[S34年]/東宝/カラー/115分 )
■監督:杉江敏男/原作:三好十郎(シラー『群盗』を翻案)/脚本:山中貞雄/潤色:黒澤明/撮影:鈴木斌/音楽:團伊玖磨■出演:三船敏郎、鶴田浩二、司葉子、上原美佐、平田昭彦、志村喬、千秋実、河津清三郎
山中貞雄が滝沢英輔監督作品として書いた脚本を黒澤明が潤色し、杉江敏男が監督したリメイク作品。黒澤の手直しは一部に限られ、しかも的確。正統娯楽映画としてのツボを押さえていて納得のいく面白さになっている。いまからちょうど50年前(山中の死後21年目で生誕50年)に改めて山中の可能性を再発見しようとした映画であり、その一つの具体的な答えがここにある。中でも甲斐の六郎役の三船の快演は見もの。まるでもともと三船のために書かれた役としか思えないほどだ。敵役の平田昭彦や河津清三郎らのダークな魅力も見ものだ。
料金
一般/1,200円 シニア・学生/1,000円 会員/800円
水曜日サービスデー/1,000円均一
●各回定員入れ替え制 ●上映開始後10分を過ぎての入場は不可。
●午前10時15分より当日の全回分の整理番号付き入場券を発売。
●定員48名になり次第、締め切り。
●作品により画像、音声が必ずしも良好でない場合があります。
http://www.laputa-jp.com/
2009年5月30日(土)~6月26日(金)まで、
連日21:00よりレイトショー上映
- (著)やまさき 十三,幸野 武史
- 発売日:2001-09
- おすすめ度:
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