佐藤かよ(女優)/『鬼灯さん家のアネキ』

映画『鬼灯さん家のアネキ』インタビュー特集PART2
今泉力哉(監督) × 佐藤かよ(女優)対談

公式サイト

2014年9月6日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

(取材:深谷直子)

『鬼灯さん家のアネキ』ポスター――ああいう作品と比べると『鬼灯さん家のアネキ』はエロくても健康的ですよね。

今泉 そうですね、いつものは健康的じゃないかもしれない。恋愛に関して温度が低いのばっかりなので。基本的に恋愛映画って「好き」っていうことはもう疑いないじゃないですか。それがうまく行く、行かないとかを描くのが普通の恋愛映画で、まあ今回のはそういうところもありますけど、自分の映画ではまず「好き」っていうことが何かを疑っていくみたいな、そこから入るので、温度が低いですよね。

佐藤 へえ~。

今泉 でも今回のはちゃんと二人がワッとぶつかってますけどね。ケンカしたりだとか。

佐藤 私がこの映画が他の映画とかとは違うと思ったのは、「好き」っていう感情が別にピークじゃなくて、そこから先どうなるのか、それは「付き合う、付き合わない」とか、「一緒にいる、いない」とかそういうどうするかじゃなくて、人間それぞれがどういう感情になっていくかみたいなところがたくさん描かれていたところで、それが私はいちばん好きなところですね。あと全然関係ないところに恋愛をぶっ込んできて「あの話どうなっちゃったの?」みたいな映画がよくあるじゃないですか。そういうの私「ん~?」となっちゃうので。

今泉 (笑)。ありますあります、恋愛持ってきていきなりそれだけになっちゃうみたいなの。で、盛り上がったらあと放置みたいなね。

佐藤 「事件解決どうなっちゃったの?」みたいな(笑)。そういうのがあったりするんですけど、この映画ではそれぞれの人間関係のバックボーンが深く書いてあるのが私はすごく好きでした。感情的になるのってこういうことなのかなあと。

今泉 そうですね。あとはみんないい人ですよね。不器用だけど、不器用なのはすごく重要なことだと思うし、今佐藤さんが言っていたみたいに、「好き」の先の、例えば「自分が、自分が」じゃなくて一歩引いて、みたいなシーンがそれぞれめっちゃ多いから、そのへんですよね、きっと。恋愛映画ってただ好きとかだけを描いているものが多すぎて、別にそれが面白いのもあるんですけど、それよりも自分が興味がある部分はまわりにある感情だとか、それが他の人を影響していくこととかそういうもので。今まで作っている映画も、始まっちゃっている恋愛で、二股している状況がもうあったりして、そこまでではなくそこからを描きたいと思ってやっているんですよね。だから佐藤さんが俺の今までの作品を観たことがないのに、この作品で「好きの先の部分を描いているのが面白い」と言ってくれたことはすごく嬉しいですよね。

佐藤 なんとなくですけどね。でも面白いです。最初のうちはみんな本音を言うことはあんまりなくて、本当に思っていることは言わないけど、言いやすい他人のことは言うシーンが多い気がして。特に麻衣ちゃんは。

今泉 3人の関係だけじゃないかもしれないですけど、本当に好きだったり気になってる相手には本音でしゃべれなかったり、例えば面白い話があってするんだけど、相手によって面白くなくなっちゃったりしますよね。そうじゃない男女関係なく仲のいい距離感、水野にとっては吾朗のほうが話しやすかったりするその距離感ってやっぱり大事なのかなと思ってて。それは原作にあった水野と吾朗の距離でもあるんですけど、好きという感情じゃないと別に男女でもいろんなことが本音で話せたり、その差は大事なものなんじゃないかなと思って意識していますね。

『鬼灯さん家のアネキ』場面6佐藤 この映画は入りはリアルじゃないけど観ているうちに親近感が湧いたりとか世界に引き込まれるものがあったので、そこにびっくりしました。恋愛恋愛してないのが私は好きなので。こんなこと言ったらあれですけど、好きな人のために電車を走って追っかけたりだとか、あり得ないじゃないですか。

今泉 (笑)。見たことないですよね。いるとは思うんですけど。

佐藤 あとは「俺はお前のことを世界で一番愛してる」とか「俺の女になれ」とか、そういう非日常的な台詞をリアルに言う人がいたら、その人はきっと二股三股してるぐらいの女慣れしてる男の人だなと私は思っちゃうんですよ。そういうもので自分の恋愛ハードルが上がるのが嫌なので、好きだけど好きって言えないから感情的になって、「なんで分からないの? なんで私こんなことをしなきゃいけないの?」みたいなほうが私にとってはリアルなんですよ。友達を見ててもそう思うし。だから非日常的なところから入るけど実はすごく日常的だったっていうのがこの映画を観た感想で、そこが見どころだと思います。多分原作を読んでちょっとしたスケベ心で観る人も、気付いたら違うことに気持ちが動かされているんじゃないかなと思います。

――おお、これは作戦ですかね、原作ファンで観に来た人を今泉ワールドに誘い込むという(笑)。

今泉 「変な感動したわ~」とか(笑)。

――きっと原作が好きで来る人も俳優さんたちのファンで来る人もいると思うんですが、もっと大きいものを持ち帰らせてくれる作品だと思いました。いい体験ができましたね。

佐藤 はい、監督のおかげです!

今泉 またやれるといいですね。

佐藤 ぜひ。でもその前にその濡れ場がどんな感じか確認しとかないとと思って。

――(一同爆笑)。

今泉 え、前野さんの? うわ~、そこかあ……。いや、でも他の映画では全然やってないんで、エロは。

佐藤 はい、それだけじゃなくて今泉監督の作品をいろいろ観たいと思いました。

今泉 ありがとうございます。

――どうもありがとうございました。

( 2014年8月21日 飯田橋・角川書店にて 取材:深谷直子 )

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PART1:佐藤かよ(女優)単独インタビュー |  PART3:今泉力哉監督単独インタビュー

鬼灯さん家のアネキ 2014年/日本/カラー/118分
出演:谷桃子 前野朋哉 佐藤かよ 川村ゆきえ 古崎瞳 岡山天音 葉山レイコ 水澤紳吾/モト冬樹
原作:五十嵐藍(株式会社KADOKAWA 角川書店刊) 監督・編集:今泉力哉 脚本:片岡翔 今泉力哉
音楽:曽我淳一(トルネード竜巻) 主題歌:浜崎貴司「家族」(スピードスターレコーズ)
製作プロダクション:角川大映スタジオ 制作プロダクション:ダブ 製作:KADOKAWA ポニーキャニオン
©2014『鬼灯さん家のアネキ』製作委員会
公式サイト

2014年9月6日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

2014/09/04/21:13 | トラックバック (0)
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