シネコンにはあまり御縁がないため、どーいった機能や設備が標準モードなのか、
まるっきり不案内な身でのご案内で恐縮ですが、京王線沿線の皆様、南大沢駅前「TOHOシネマズ南大沢」のプレミア・
スクリーンはおススメです。
ナニが凄いって、チケット売り場のお兄ちゃんが「今日は少々混んでおりますので…」と言いながら好きな席を選ばせてくれた(そう、全席指定!
)割に、結局最後まで全57席の3分の1程度は空いていた…ということではなく、その名に恥じない「プレミア」な居住性が、
大層素晴らしゅうございます。
赤とダークグレーを基調にした小規模の場内は至って清潔、座席はどんなデブ…もとい、大柄な方でも不都合がないゆとりのサイズ&
無段階リクライニング、足元ものーびのび、おまけに席と席の間には飲み物や荷物を置くのに最適な小洒落たミニ・テーブル。これでシネパトス
(…別に恨みはありませんが)と同じ1800円ってのは、銀座と多摩の貨幣価値の差異――ではねーです、もちろん。
そしてまた、本編前のCMでさんざ「夫婦で映画」だの「二人きりになれるくらやみがあります」だの言い募り、その挙句
「つまらない映画だったと文句を言うヒトより、どんな作品でも楽しめるヒトの方が幸福では?」と、
あらかじめ客に五寸釘を打ち込む攻めの姿勢も、天晴れとしか言い様がありません。
さて、問題の本編はと申しますと……この字数稼ぎの長ぁい前フリから、書き手の逡巡(五寸釘が…)
と失意の大きさを推し測っていただけたのではと存じます。
3ヶ月ぶりのロードショーなのに、ホント、引きが弱えな、私。家で大人しく「さわやか自然百景」でも見てりゃ良かったなあ――
上高地ビジターセンターで見た、国交省や環境庁制作ビデオ(しかもタダ!)の方がナンボかマシだったかもなあああ――。
いや、そりゃ映像は綺麗でしたよ。迫力も充分。制作7年、撮影時間7000時間ですって。そいつはすげぇや。スタッフのご苦労が偲ばれます。
でも、それだけ。ホントに、それだけ。
テレビ放映済動物系ドキュメンタリーを50本再編集したら、こんなん出来るだろうなあという、悲しいほど平板なカタログ作品。
既視感に満ち満ちた展開のどこが「神々しいほど斬新」(ジェームズ・キャメロン)なんでしょう。
座礁の危険を冒して満潮時にアシカの仔を狩るシャチ、氷河の間の空気孔に顔を出すアザラシを捕まえそこねる北極グマ、
魚の群を華麗な連携プレーで追い詰めて捕食するイルカたち、面妖極まりない深海生物のSF以上にSF的な様相――
確かにダイナミックな臨場感とカメラワークの美しさは特筆ものに違いない。が、テレビに勝るのは、まさにその部分だけ。
夥しい数の海の住人たちの生態の「一端」をあえて総花的に詰め込むことで見えてくるものが何もない。深い感慨を喚起するものもなければ、
豊穣な殺戮に圧倒されることもない。人類の卑小さを実感させられることもなければ、大自然の脅威とそれゆえの魔力に魅入られることもない。
その結果、最初の「ほほお~」を過ぎると、あっという間に飽きてしまう。
本作はドキュメンタリーというより、漫然と流し続けるのが相応しい環境映画と呼ぶべきなのでしょう。だから、
美しく臨場感に満ちた画面にも拘わらず、何の情動も生み出さず、「この青い海をヒトが汚し続けている」
というラストのメッセージも滑りっぱなし。これほど、観たあと何も残らない映画も稀少と言うべきか。
プレミアなシートで眺めた、ただただ青い海。どうせなら睡魔の誘惑に負けて、
心ゆくまでリクライニングのお具合を堪能した方が正解だったと思う今日この頃です。
主なキャスト / スタッフ
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